「今年の目玉はマルチキャスト」〜進化するEV-DO(1/2 ページ)

» 2004年02月13日 23時36分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 KDDIが昨年12月にスタートした定額制パケット通信サービス「1X WIN」(2003年10月の記事参照)。その通信方式は「CDMA 1x EV-DO」と呼ばれる。インターネット型のパケット通信に特化することで、最大2.4Mbpsの速度でありながら定額制も可能とするなど高い柔軟性を持った通信方式だ(2003年1月の記事参照)。

 1X WINのスタートによりEV-DO導入は一段落。しかしEV-DOの技術進化が止まったわけではない。クアルコムジャパンでEV-DOを担当する前田修作ビジネス開発担当部長は、「今年の目玉はマルチキャスト」だと話す。

同じデータを一斉送信〜EV-DOのマルチキャスト

 EV-DOマルチキャストとは、EV-DOブロードキャストと言われることもあるように、1対1の通信ではなく1対多の通信のこと。EV-DOでは、基地局からエリア内の複数のユーザーに、同じデータを一斉に送信することを指す。

 最大のメリットは、利用する周波数幅が極めて少なくて済むことだ。通信で送れる情報量は、利用できる周波数幅とS/N比(ノイズに対する信号の強さ)によって決まる。1対1の通信が前提の携帯電話の場合、周波数や時間をユーザーごとに分けたり、ユーザーごとに異なる符号を付けて混ぜて送信したりしている。周波数という資源を、ユーザーの数でシェアしていたわけだ。

 これがマルチキャストならば、受信するユーザーが何人でも利用する周波数幅は変わらない。言ってみれば、テレビやラジオの放送のようなものだ。

 この技術の導入によって、どんなことが可能になるのか。すぐに考えつくのが、テレビ放送のように携帯の基地局から動画を配信する──といった使い方だ。しかし前田氏は「テスト中だが、スピードはおそらく300Kbps以下」だと言う。リアルタイム動画配信に使うには微妙なスピードであり、マルチキャストの本命はここではない。

 技術面は後述するが、EV-DOマルチキャストは、通常のEV-DOとダイナミックに組み合わせられる。そのため、状況に応じて最適な通信方式を使うことができる。

 例えば、「1つの基地局の下にユーザーが3人までだったらEV-DOで送信し、それ以上多かったらマルチキャストを使う」(前田氏)といったことも可能になる。

 ここで、KDDIがサービスしている蓄積型動画コンテンツ「EZチャンネル」の真意も推測できる。というのも、これこそマルチキャストに最適なサービスだからだ。

 マルチキャストは全員に同じデータを一斉送信するため、ビデオ・オン・デマンド的な使い方には向かない。かといって、流しっぱなしの動画放送も今ひとつだ。ところが蓄積型ならば、マルチキャストのメリットを生かせる。将来、多くのユーザーが同じチャンネルの視聴を希望したら、トラフィックの空いている深夜に、EV-DOの一部をマルチキャストに割り当てて、一斉送信すればいいからだ。

TDMを活用〜“全員が受信できるスロット”がマルチキャスト

 前田氏は「(マルチキャストは)QoSなどに比べると非常に簡単」だと話す。その理由は、EV-DOの下り方向通信が、TDM(Time Division Multipling:時分割多重)化されているからだ。

 いわゆるCDMAとは違い、EV-DOは時間で区切ったスロットを各ユーザーに割り当てて通信する(TDM)。このとき、どのスロットを誰にどのくらい割り当てるかを調整して、全員のスループットの合計を向上させている。この割り当ての調整がEV-DOのポイントの1つで、「スケジューリング」と呼ばれている。

 このタイムスロットのうちのいくつかを、「全員が受信できるよう、開放」(前田氏)したのがマルチキャストだ。当然、受信に失敗した場合でも再送アルゴリズムは働かないので、再送が起きないよう、最も電波状態が悪いユーザーに合わせて、ノイズに強い変調を使う。それが、300Kbps程度と速度が遅くなってしまう理由だ。

 もともとあるスケジューリングの仕組みを使ってマルチキャストを実現するため、「スロットの一部だけマルチキャストにしてもいいし、時間で切ってもいい」(前田氏)といった柔軟性が生まれる。また「フィジカルレイヤー(物理層)の変更なしで導入できる」(前田氏)ことにもつながっている。

【次ページ:マルチキャストはRev.Aで標準化】

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