スタバ長時間滞在、なぜ「一律ルール」設けない? “スマホでゲーム、PCで仕事も…広報見解は

» 2026年06月12日 05時32分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 スターバックスコーヒー店舗における長時間の滞在が、座席の占有やマナーという観点から話題になっている。PCやスマートフォンを用いて長時間作業に没頭する利用客に対し、ネット上で多くの疑問の声が上がっているからだ。この件について、すでにネット上の話題は第一報として記事化した。そこからさらに踏み込み、場所を提供する企業側の見解を読み解く。

starbucks スターバックスコーヒー スタバ 長居 スマホ 仕事 Web会議 スターバックスコーヒーのロゴ

 第一報でも紹介した通り、SNSではこの件についてさまざまな意見が飛び交っている。「ファストフード店やカフェでPCを開いて長時間占拠している人が多いが、その作業は家では駄目なのか」との素朴な疑問は多くの共感を集めた。他にも「おしゃれな空間でPCを操作している自分に酔っているだけではないか」「スマートフォンでゲームやLINEをしている」「スマホでニュースやInstagramを見ている」など、作業をしている姿に冷ややかな視線を送る人もいる。

 また、セキュリティ意識を問う声も目立つ。「スマートフォンを置きっぱなしにして長居をしている」「プライバシーフィルターを装着せずに仕事をしているが、会社として情報漏えいのリスクは問題ないのだろうか」といった指摘だ。実際、顧客の個人情報や社外秘のデータが周囲から丸見えになっているケースも多数報告されており、カフェという公共の場で機密情報を扱うことを心配する声も増えている。

 こうしたSNS上のさまざまな意見を踏まえ、本紙(ITmedia Mobile)は運営元であるスターバックスコーヒージャパンへ取材を行った。「サードプレイス」というコンセプトを掲げる企業として、現在の利用状況をどう捉え、どんな空間作りを目指しているのか? 広報回答から、スターバックスコーヒージャパンが利用客に何を伝えたいのかを探っていく。

サードプレイスとは? 利用者が自分らしく過ごせる場所の意味

 まず、店内で勉強や仕事をすることについての基本的なスタンスを尋ねた。スターバックスコーヒージャパン広報部は「ご自宅でも職場でもないサードプレイスとして、どなたにも自分らしく過ごしていただける空間づくりを大切にしている」と回答した。これは同社が日本上陸以来提唱してきた考え方であり、店舗が家庭や職場に次ぐ、心安らぐ第3の場所であることを意味している。

 続けて広報部は「勉強、お仕事、ご友人やご家族との会話、一人でのんびりする時間など、さまざまな目的でご利用いただけることは、私たちが目指す場所の在り方だと捉えている」と説明した。SNS上では長時間の勉強や仕事利用に対して批判的な声もあるが、企業としてはそれらの行為を否定しているわけではなく、いろいろな過ごし方の1つとして受け入れていることがうかがえる。

starbucks スターバックスコーヒー スタバ 長居 スマホ 仕事 Web会議 スターバックスコーヒージャパン広報部は「ご自宅でも職場でもないサードプレイスとして、どなたにも自分らしく過ごしていただける空間づくりを大切にしている」としている。正しくこれがサードプレイスの考え方といえる(出典:「おかえり」「ただいま」が聞こえてくる居心地の良い場所。サードプレイスの価値とは)

店舗の利用スタイルについて一律のルールで縛らない理由

 SNS上の意見の中には、時間制限を設けるなど明確なルール作りを求める声もあった。これに対して広報部は「ご利用のスタイルについて一律にルールを設けることは現時点では考えていない」と明言した。トラブルを防ぐために一律で禁止や制限をするという方法は、今のところ取らないようだ。

 その理由について広報部は「お客さまの過ごし方は多様であり、それぞれの用途を尊重したいと考えているためだ」と述べる。店舗を訪れる客の目的は一人一人異なる。一律のルールで縛ることは、サードプレイスが提供すべき多様性と自由を奪うことになりかねないという、企業の理念が感じられる回答だった。

starbucks スターバックスコーヒー スタバ 長居 スマホ 仕事 Web会議 店舗での滞在時間に関するSNSでの意見に対し広報部はお客さまの多様な過ごし方や用途を尊重するため現時点で一律の時間制限やルールを設ける予定はないと明言している(出典:よくあるご質問・お問い合わせ先)

長時間の席の占拠をただ見過ごしているわけではない

 一方で、ルールがないからといって、長時間の席の占拠をただ見過ごしているわけではない。「混雑状況など店内の環境によっては、全てのお客さまに快適にお過ごしいただくために、バリスタや店舗責任者が状況に応じた対応を取ることがある」と広報部は打ち明ける。店舗の状況を日々見守る現場のスタッフが、その都度適切な判断をしていることがうかがえる。

 現場での声掛けなどの対応について広報部は「こうした判断は、特定のご利用スタイルを排除する意図からではなく、その場にいる全てのお客さまの体験を守るためのものだ」と補足した。PC作業や勉強をしている客を追い出すのが目的ではなく、席を待っている客も含めた全員が、快適に店舗を利用できるようにするための配慮といえる。

空間をみんなで「シェア」する意識が問われる

 最後に広報部は「引き続き、バリスタ一人一人が現場の実情に寄り添いながら、温かみのある対応を心掛けていく」とした。マニュアルで画一的に管理するのではなく、人と人とのつながりを大切にし、店舗ごとに柔軟な対応を行う姿勢は、同社が目指す空間作りのベースになっている。

 今回の取材を通じて見えてきたのは、企業側が利用客を信頼し、自由と多様性を大切にしているということだ。サードプレイスは、誰かに強制されて作られるものではなく、店舗スタッフと利用客の双方が作り上げていく空間だ。ルールで縛られない自由があるからこそ、そこを利用する私たちにもそれなりの意識が必要になる。

 SNS上で相次いだ不満の声は、長居そのものへの批判というよりも、混雑時に席を譲らない、周囲への配慮に欠けるといった、公共の場での振る舞いに対する疑問からきているのだろう。言うまでもないことだが、カフェは自分の部屋ではなく、いろいろな人が集まる共有の場所であり、自分の作業に集中しつつも、周囲の状況に気を配る余裕を持つことが利用する側には常に求められる。

 特にスターバックスコーヒーは、一人一人が自分らしく過ごせる居場所であると同時に、利用客同士が空間をシェアできる場所でもある。企業が提供する寛容なスタンスに甘えるのではなく、互いに心地よく過ごせるための気遣いを忘れないようにしたい――。それこそが、現在議論が交わされている長時間滞在問題に対する、解決の糸口になるのではないだろうか。

おことわり

ネット上の意見は、文脈の変わらない範囲で体裁を整えています。


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