Mr.イーサネットが予測するZigBeeの未来は?

» 2004年10月15日 18時30分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ボブ・メトカーフ氏が再び世間を騒がせている。現在ベンチャーキャピタリスト、テクノロジスト、有識者として活躍するMr.イーサネットが、大胆な予測を打ち出している。今度の主役は2.4GHz帯を使う無線技術「ZigBee」(IEEE 802.15.4)、データ転送よりも主に監視・制御向けの技術だ。

 先週スペインのバルセロナで開催されたNetEventsで、1973年にイーサネットを発明したメトカーフ氏が講演を行った。今日、マイクロプロセッサは自動車から洗濯機、産業プロセスに至るあらゆるもので使われており、出荷量は年間およそ80億個に及ぶと同氏は語り、「これらをネットワーク化するのがZigBeeだ」とした。

 これが実現すれば、ZigBeeは世界で最もユビキタスな技術の1つになる。ただメトカーフ氏の予測ではしばしばあることだが、同氏とまったく正反対の見解を示し、ZigBeeは失敗以外の何ものでもないと主張する向きもある。

 5年のバッテリー駆動時間、チップが1個5ドルというコストの安さは、ZigBeeのユビキタス化を約束するものだ。例えば、メトカーフ氏によれば、携帯電話でZigBeeを採用し、ホームオートメーションやセキュリティなどの制御デバイスとして機能させるという話もあるという。なお同氏がZigBeeの開発元Emberのパートナーであることを、ここに記しておくべきだろう。

 ZigBeeチップの出荷量は、今年の50万個から、来年は500万〜5000万個に増えると同氏は断言した。「これはインターネットの極めてローエンドの部分に当たる。ZigBee対応のデバイスで大量のデータがやり取りされることだろう。これからミドルウェアが登場する――チャンスは大きい」とメトカーフ氏。ネットワーク化されたプロセッサの価値は非常に高く、今日マイクロプロセッサを使用していない企業をも引き付けるため、ZigBeeが持つ魅力によって、この技術は今後予想を超える成長を見せるかもしれないと同氏は考えている。

 ZigBeeの用途として、照明スイッチと電球に安価でごく小さな無線チップを組み込んだ照明の制御などを同氏は予測している。照明スイッチを無線で制御できるようになれば、電気配線が無用になる(以前もこんな構想が出た気がするが)。ただ、「例えば、消費者が9つの電球の管理をZigBee制御デバイスにプログラムするにはどうしたらいいかといった、UIをめぐる小さな問題の数々」が障害になるという。

「ZigBeeは成功しない」

 一方、ZigBeeの将来は明るくないと見る向きもある。先週にはWest Technology Research Solutions(WTRS)が、ZigBeeは、Wi-FiやWiMAXなどの標準ベースの仕様では回避されてきた分裂の危機に瀕していると悲観的な見解を示し、この技術は失敗に終わると警告した(10月7日の記事参照)

「いや、成功する」

 もっと楽観的な意見もある。ABI Researchは分裂するという見方に反論、次のように語っている。「ZigBee規格はまだ完成しておらず、それまではいかなる製品も『ZigBee対応』と名乗ることはできない。それでも一部のベンダーは、最終的な規格がどんなものになるかを予測し、それに基づいた製品を投入して、この市場で足掛かりを掴もうとしている」

 ABIのアナリスト、クリス・ロペス氏は、報告書「ZigBee and 802.15.4 Wireless Network Markets」の中で次のように述べている。「少数の企業が完全にプロプライエタリでやや劣ったソリューションを提案している一方で、まだ標準化されていないこの規格をベースにした製品を提供している企業のほとんどは、ZigBeeの標準化を進めているZigBee Allianceのメンバーである。この規格の開発に携わっている当事者だからこそ、彼らはこの規格がどういうものになるかを知っており、予測される最終的なプロトコルの形にできる限り準じようと努力している」。

 ZigBee Allianceのボブ・ヒーリー会長は最近、加盟企業あての電子メールでこの問題を取り上げ、現在提供している製品を「ZigBee−compliant」(ZigBee対応)ではなく「ZigBee-ready」(ZigBee対応準備を整えた)と表現するよう呼びかけた。ABIのロぺス氏は、現在出回っている「ZigBee-ready」製品を購入した消費者が、ZigBee規格が批准された後に取り残されるという状況に陥る可能性はゼロだと言い切っている。

 ロペス氏は最後に、“スマートマネー”――ポール・アレン氏がEmberに数百万ドル投資したことは最も知られている――がZigBee市場に流入していると指摘する。この事実もABIの結論を支持する1票だと同氏は言い添えた。

メトカーフ氏の予測

 メトカーフ氏の予測に戻ろう。同氏はこれまでの自身の予測を振り返り、ひいき目にみても、当たったり当たらなかったりであったことを認めた。NetEventsでの同氏のコメントをいくつか紹介しよう。

 「私がその長所に関心を持たなかったら、Cisco (Systems)は存在していなかっただろう。そもそもルータを最初に投入したのは(私が創設した)3Comだ」。

 「Ciscoは自分自身に向けてではなく、顧客に主眼を置いた正しい文化を持っている。このことは、同社の独占状態が今後も続くことを予兆させる」

 「1990年代に、Microsoftが破滅すると予測したが、おそらくそれまでにはかなり長い時間がかかるということなのだろう」

 さらにさかのぼれば、同氏はこのほかにも数々の予測を行っている。

インターネット

 最も有名なところで、同氏は1995年12月のコラムでインターネットが1996年に崩壊すると予言、外れた場合は“自分の発言を飲み込む”と宣言した。この予測が外れると、メトカーフ氏は約束通り、当時のコラムのコピーを水に溶かしたものを飲み込んだ。

ワイヤレス

 1997年のInfoWorldのインタビューで、同氏は次のように語った。「(ワイヤレスに)関しては非常に悲観的に捉えている。われわれが皆、あらゆるものをワイヤレスにしたいと渇望していることが大きな問題なのだ。われわれはそれを欲するあまり、ワイヤレスにまつわるあらゆる話を闇雲に信じ込もうとしている……ワイヤレス技術を販売する側はそれぞれ誠実に取り組んでいるが、その効果を誇大に宣伝するきらいがある」

 またこのインタビューの中では、ワイヤレスに関するメトカーフ氏の最近の見解の先駆けとなる発言がなされている。到達範囲を拡大しようとした「無線の父」マルコーニの試みとは対照的な、今日の携帯技術を予測する発言だ。「単純な事実として、ワイヤレスはイーサの1つのコピーを使用する。コピーはたった1つしかなく、皆がそれを使わなければならず、いずれは使い果たしてしまうだろう。一方、個々の光ファイバーはそれぞれがイーサのコピーである。別のコピーを走らせれば、まったく新しい帯域を持つことになる。イーサは複製できる。今日セルラー化を進めるワイヤレス関連企業は、イーサの再利用を追求しており、そこには将来性がある」

予測にスパイスを

 予測が当たる、当たらないにかかわらず、メトカーフ氏は自身の予測について、「私の仕事は考えるための“食材”を提供することであり、食物はスパイスが効いているほどうまいものだ。つまり、人々の関心を引く、刺激的な食材を提供し、議論を活性化していくことこそ、私がやるべきことだ」と話している。

Linux対Windows

 最後にメトカーフ氏はLinux対Windowsについて次のように話した。「LinuxがWindowsに勝てないのはなぜか? 理由は2つある。オープンソース運動が掲げているイデオロギーは、理想主義のたわごとだ。それにLinuxは30年前に開発された技術だ。オープンソース運動は共産主義を連想させる。フリーソフトウェア財団の創設者、リチャード・ストールマン氏の“マルクス主義”は利益追求と多国籍企業の悪を声高に訴えている。リーナス・トーバルズ氏の“レーニン主義”は世界制覇を笑い飛ばしている。そう、Linuxに共産主義はあまりにも厳しく、トーバルズ氏にとってレーニンは過酷すぎるのだ」

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