Qualcomm、W-CDMAで「シェア50%目指す」

» 2004年11月02日 14時35分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 CDMA2000向けのチップベンダーとして知られるQualcommだが、今後はW-CDMA市場にも積極的に打って出る。ドコモ向けにW-CDMAチップを提供するのも、その一環だ(10月7日の記事参照)

 これまで、CDMA2000対W-CDMAという対立軸で語られることが多い中、CDMA2000陣営の筆頭として優位性をアピールしてきたQualcommだが、伸びつつあるW-CDMA分野でも存在感を増していきそうだ。

 「フレーバーは違っても、CDMAはすべてサポートする」とクアルコム ジャパンUMTSビジネス開発担当部長の安達賢氏。2007年以降、世界で1億1000万のW-CDMA加入者を見込んでおり、「W-CDMA(UMTS)端末向けチップの50%のシェアが目標」だと意気込む。

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21社が採用、三洋「V801SA」に搭載

 同社は2001年10月に、初のW-CDMAチップセット「MSM5200」のサンプル出荷を開始(2001年10月9日の記事参照)。2002年にはCPUコアなどを変更し、GSM/GPRSネットワークにも対応した「MSM6200」を投入し(11月2日の記事参照)、各社の端末への採用が始まっている。

 「2004年第2四半期までに21の端末メーカーが採用。第3四半期には数社増える」と安達氏。三洋電機がボーダフォン向けの3G端末「V801SA」に搭載しているほか、国内メーカーでは東芝、三菱、海外ではSiemens、Samsung、LGなどが商用/トライアル用端末に採用した。

 W-CDMAチップセットは、NECのほかEricsson Mobile Platform(EMP)のほか大手端末メーカーも開発しており、NEC製チップはFOMA端末をはじめ海外端末でも採用されている。EMP製チップは、ボーダフォン向けのシャープ「V801SH」に採用されていることが明かされている。

 CDMA(1X)市場では、ほぼ寡占状態にあるQualcomm製チップだが、ライバルの多いW-CDMAでの優位点はどこにあるのか。安達氏は、1)ネットワーク接続互換性 2)BREWによるアプリケーション開発のしやすさ 3)GSMへの対応 を挙げた。

ネットワークとの接続試験済み

 安達氏は、まず各オペレータのネットワークとの互換性試験が済んでいることをメリットとして挙げる。これにより、各端末メーカーは接続試験行程を短縮でき、端末の投入スピードを上げられるという。

 「(W-CDMAの)端末メーカーが一番苦労するところは、オペレータによって仕様が異なる点だ。3GPPの仕様全部をサポートしているオペレータはいない。準拠といっても、パラメータなどが違い、同一仕様で運用されているわけではない」(安達氏)

 世界で初めてW-CDMAサービスを開始したドコモとも接続試験済み(10月7日の記事参照)。スタート当時の仕様は現行の3GPP標準仕様と異なっていたため互換性に問題のあったFOMAネットワークだが、ドコモは5月から最新仕様にアップグレードが済んでいる。

BREW API上でアプリ構築

 QualcommチップはアプリケーションプラットフォームとしてBREWを標準搭載しているため、ドコモ向けチップ提供発表の際には、「ドコモがBREW採用か」という報道も見かけた(10月7日の記事参照)

 実際、Qualcomm製W-CDMAチップ採用の際は、BREWアプリケーションとしてメールやWebクライアントなどを動かすことになる。ただし、BREWアプリケーションの配信は行わない。「あくまでBREW APIを利用して、コスト効率のいい端末作りをする」(安達氏)のが目的だ。

 高機能化が進む携帯電話では、端末開発コストの半分近くをアプリケーション開発が占めるようになっている。さらに、タイムリーに製品を投入するためにもアプリケーション開発は重要だ(2月10日の記事参照)

 そのため各端末メーカーは、Symbian OSやLinux OSといった共通のアプリケーションプラットフォームを採用することで、アプリ開発コストの削減を狙っている。W-CDMA端末におけるBREWの役割は、これらのOSに近い。

BREWプラットフォームの位置づけ。JavaVMなどもBREWプラットフォーム上で動作させる計画。ユーザーから見た場合、BREWであることは分からない。あくまで開発者向けのプラットフォームだBREW上で動作するブラウザやメールクライアント、JavaVMなどは、FOMAのブラウザを提供するACCESSが開発済み

W-CDMAチップ、GSM対応は必須に

 そしてW-CDMAだけでなくGSM/GPRSにも対応していることが強みだ。国内のドコモやボーダフォンはW-CDMAへ一気に移行を進めているが、海外ではGSMから徐々にW-CDMAに移行していく計画でありデュアルモードが必須となる。

 国内のW-CDMAチップメーカーでも、海外に向けてチップを供給する際にはGSM機能を組み込む必要がある。ルネサステクノロジーやテキサス・インスツルメンツ(TI)は、ドコモと共にGSMにも対応したW-CDMAチップを開発中だ。

 「我々は最初からデュアルモード。ルネサスやTIよりも先に投入できる」と安達氏は話した。

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