「800MHz帯(の新規事業者割当は)は検討に値しない、というコメントが総務省からあったが、これを完全撤回して頂きたい。(周波数は)国民の共有資産であり、ここを聖域化するのは大きな制限」
11月4日に行われた携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会で(11月4日の記事参照)、ソフトバンクBBの孫正義社長は改めて800MHz帯への熱意を見せた。
同社は、携帯事業新規参入に当たり、ドコモとKDDIが使う800MHz帯と、新規割当分の1.7GHz帯のマルチバンドを要望。800MHz帯を基本、1.7GHz帯を補助としたインフラを想定している。「免許後、すぐに設備投資を始め、2年で音声のサービスを全国レベルで行う」と孫氏。
800MHz帯について総務省や既存キャリアは、“あくまで上り下りの周波数の調整であって新規を割り当てるための再編ではない”というスタンスだが、ソフトバンクBBは行政訴訟まで起こすなど(10月13日の記事参照)、あくまで800MHz帯にこだわる。その理由はなにか。
電波は空中を伝わって途中で弱くなっていく。この伝搬損失は、距離が離れるほど、また周波数が高いほど大きくなる。
周波数 | 伝搬損失(dB) | セル半径(Km) | 最大局数差 |
---|---|---|---|
800MHz | 0 | 2.0 | 1 |
1.5GHz | 7.1 | 1.2 | 2.8 |
1.7GHz | 8.5 | 1.1 | 3.3 |
2GHz | 10.5 | 1.0 | 4.0 |
2.5GHz | 12.9 | 0.8 | 6.25 |
結果、高い周波数になるほど、1つの基地局でカバーできるエリアが狭くなり、同じ面積をカバーするには必要な基地局数が増える。ソフトバンクは、800MHzと2GHzを比べて基地局数は約1.6倍になるとしており、投資費用は、1.2〜1.4倍に増大するとしている。「800MHz帯はほかよりも利用効率がいい」(孫氏)というわけだ。
1.7GHz帯に名乗りを上げているイー・アクセスも、「もし800MHz帯がオープンになれば、当然名乗りを挙げる」(千本倖生社長)と話すなど、使いやすい周波数であることは間違いない。
実際に1.5GHz帯で2Gを展開したボーダフォンも、「800MHz帯のほうがコスト効率がいい」(ボーダフォンの五十嵐氏善夫経営企画本部長)と話す。
ただし、たくさんの基地局が設置されている都市部では、遠くまで届くという800MHzのメリットは少ない。最初から1つの基地局がカバーするエリアが狭いからだ。「都市部ではあまり関係ない」(KDDIの小野寺正社長)。
ドコモは800MHz/2GHzのデュアルモード対応FOMAを予定しているが(10月6日の記事参照)、800MHzのFOMA基地局を地方にのみ設置しているのは、こんな理由による。
また、800MHzをドコモとKDDIに再び利用されることも、ソフトバンクBBは恐れているようだ。「3G展開で最も効率がいい800MHzを上位2社に(再び)割り当てれば、ますます寡占化が進む可能性が高い。上位2社が国民の資産を不当に使い続けることになる。特にドコモは、(独占企業である)電電公社時代に800MH帯を割り当てられている」(孫氏)
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