携帯でなぜ顔を認識できるのか?〜OKAO Vision開発者に聞いてきました

» 2005年03月03日 03時02分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 オムロンが開発している顔認識技術の総称が「OKAO Vision」だ。携帯電話の組み込みアプリケーションとして発表されたのは既報の通り(2月28日の記事参照)。しかし顔認識技術といえば、豊富なマシンパワーが必要というのが定説。携帯の非力な処理能力で、本当に顔を認識できるのだろうか。また、別人のようにばっちりお化粧していてもきちんと認識してくれるのか?

厚化粧でもメガネでも、誤認率は1%

 OKAO Visionを実装したデモ用の携帯電話は、東京・有明で行われているSECURITY SHOWのオムロンブースに展示されており、来場者は自由に試すことができる。

 高い壁の影になっていて暗く、しかも色つきの光が斜めから差すという悪条件。しかし実際にOKAO Visionを試してみると、説明員の顔は認識するが、ほかの来場者の顔では認識しない。何度か試し、また他の人が試す様子も見たが、見ていた限りでは認識ミスはゼロだった。自分撮りしてワンテンポ待つと認証結果が表示され、処理速度も悪くない。

W21CAに顔を写したところ。登録済みの説明員の顔を写すと「Hello! 野田さん」と表示されるが、他の人の顔だと「ご本人以外はご利用できません」というメッセージが表示される

 携帯電話に実装されている生体認証システムといえば指紋認証が代表例だ。しかし「コストが高く、しかもハードウェアを実装する面積の問題から、生体認証システムを携帯に載せるのは非常に厳しかったのです」とオムロンセンシング研究所の川出雅人氏。OKAO Visionなら、顔を写すのに携帯カメラを利用するため、新たに認証用のハードウェアを実装する必要がなく、場所を取らない。

 OKAO Visionは組込アプリケーションで、BREW、Symbian、組込用Linux、ITRONの4つのプラットフォームで動作する。携帯に利用されているOSはほとんどカバーしているといえる。組込用アプリということで、ソフトのサイズも非常に小さく収められているという。

80カ所の点で認識

 本人かどうかを確認するためには、顔の目、口、鼻の一部の輪郭を約80カ所記録している。記録しているポイントは、明るさと方向、輪郭の角度だ。「眉と肌とのコントラストなど、明るさは見ていますが、色は見ていません。だから、人種を問わず使えるんです」と川出氏。点で記録しているので、演算量も少なくて済み、携帯電話の処理能力でも十分に処理ができるのだという。

 「十分明るさが足りている状況下であれば、認識率は99%近く。他人を本人と間違えて認識する確率も、本人を他人と間違えて認証が通らない確率も、1%程度」と胸を張る。化粧や変装でどれくらい認識率が変わるのか聞いてみると、サングラスでは認識率が落ちるが、目の形が分かれば、メガネをかけたり外したりしても大丈夫だという。同じ理由で、マスクをかけているときも認識率は下がる。顔の輪郭を利用しない理由は、顔を写した角度によって、輪郭が大きく変わるためだ。

 すでに開発は終了しており、現在携帯電話のメーカーやキャリアに交渉中の段階。OKAO Visionを搭載した携帯が登場するのも遠い話ではなさそうだ。「どのように実装するかはその会社次第」としつつも「メールやアドレス帳を表示しないようにするなど、現在パスワードを使っていることなら、顔認証に置き換えられるはず」とする。

 指紋認証というと仰々しいし、いちいちパスワードを入れるのも面倒なもの。個人情報の固まりともいえる携帯電話だけに、さりげなく、しかも強固な本人認証システムを求める人には耳寄りな技術といえそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年