「W-CDMAが普及するとみんなハッピーになる……はウソ」短期集中連載・夏野さんに聞いてみよう(最終回)(1/2 ページ)

» 2005年10月12日 14時58分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 短期集中連載「夏野さんに聞いてみよう」、最終回はNTTドコモ執行役員の夏野剛氏が携帯業界の「次にヒットするサービス」の候補群をどう評価しているかを検証する。

 本連載は10月5日に開催された「NICT情報通信ビジネスセミナー2005」での、ドコモのプロダクト&サービス本部のマルチメディアサービス部長、夏野剛氏の講演内容を紹介するもの。同講演で夏野氏は、多岐にわたる内容を歯に衣着せぬ物言いで話した。

→夏野さんに聞いてみよう・「パラダイムシフトを見破るのなんて、簡単だ」

→夏野さんに聞いてみよう・「ドコモは本当にマーケティングが下手」

→夏野さんに聞いてみよう・「新規参入が値下げ競争にくるかぎりは、脅威じゃない」

「スピードが速い遅いは大した問題じゃない」

 夏野氏は戦略畑の人間らしく、技術偏重の姿勢をとことん問題視する。携帯電話の通信速度にしても「速い遅いは、直接的にはどうでもいい」とまで言い切る。「そりゃあ速いほうがいい感じはする。“感じ”は、だが……。それで実際に何がいいのか?」

 夏野氏は、900iシリーズをヒットに導いたのはドラゴンクエストやファイナルファンタジーといったゲームアプリの力によるところが大だったと分析する(10月6日の記事参照)。これを例にとって、ネットワーク技術として何ができるかと、アプリケーションとして何を利用できるかは切り分けて考えるべきだと説く。このあたりは、技術屋集団として移動体通信の高速化を追及するドコモに、警鐘を鳴らしていると見ることもできる。

 「W-CDMAが普及すると、ハッピーになるのだ……と言う。実際は(必ずしも)そうはならない」

 夏野氏は、「技術として可能だから」というだけの理由でサービスを提供することを極端に嫌う。例えば同氏は現状、携帯での映像配信サービスに疑問符を付ける。「通信のスピードが速いから、映像をやる。これはテレコム屋がみな考えていることだ。しかし、ユーザーは携帯の画面で2時間の映画なんて見ない」

 夏野氏は、タレントの明石家さんまさんが好きなのだと笑いながら、先日携帯の液晶画面でさんまさんが出演するテレビ番組を視聴してみたと話す。その結果は「見ているうちに、気持ち悪くなってしまった」。映像のようなリッチコンテンツ配信の可能性を模索する事業者には、まず自分の奥さんにそのようなサービスを見たいと思うかどうか聞いてみるといいと諭す。「きっとこう言われる。『バカなことはやめなさい』、と」

 会場では、ドコモが先日開始したiチャネルについて「位置情報と連動させたコンテンツを配信すると面白いのではないか」という質問も飛んだ。だが夏野氏は、この意見にもこう反論する。

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