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» 2005年12月27日 19時12分 UPDATE

“顔のメタデータ化”──N-Visionに聞く携帯顔認証の次

「SH902i」には、ICカードやPIM情報を保護する手段として、顔認証機能を備えている。その意外な使い方を、技術の開発元であるN-Visionに聞いた。

[後藤祥子,ITmedia]

 携帯電話へのICチップ機能の搭載が加速していることから、これまで以上に携帯電話のセキュリティの重要性が問われるようになってきた。富士通が指紋認証を、パナソニック モバイルコミュニケーションズが顔認証を搭載するなど、携帯に生体認証の仕組みを取り入れるメーカーも増えている。

 シャープも最新端末の「SH902i」(「SH902i」記事一覧参照)で、顔認証の仕組みを搭載した。採用したのはN-Vision(ニブンビジョン)の顔認証ソフトウェア「face Recognition SDK」(2005年12月9日の記事参照)。同社の顔認証技術は、ボーダフォンの2.5G向けサービス「ムービー変装」に採用された実績はあるが(5月14日の記事参照)、セキュリティ用途での採用は初となる。

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あまり大きくはうたっていないが、実はスムーズに使える形で顔認証を実装しているSH902i。顔認証の登録や設定は「メニュー」→「設定」→「セキュリティ」→「顔認証設定」から行える

 N-Visionの宮田拓弥社長に、同社の顔認証の特徴とこの技術が携帯にもたらす可能性について聞いた。

シャープの実装は、お手本のようなスムーズさ

 「セキュリティ解除の際には、自動的に認証画面が起動。カメラが捉えた画面の中から自動的に顔を探し出し、あらかじめ登録した顔と特徴点が合えばセキュリティが解除される。顔を枠の中に合わせたりシャッターを押す必要がなく、“顔をかざす感覚”でスムーズに利用できる」

 宮田氏は、敷居が高いととられがちな顔認証をスムーズに使える形で実装したシャープの手腕に驚いたと話す。「顔認証のお手本のような形で実装してくれた」。こうしたスムーズな使い勝手を実現できたためかSH902iでは、ICカードロックだけでなく特定のメールフォルダやアドレス帳、トルカなどのフォルダにも顔認証によるセキュリティをかけられるようになっている。

 こうした実装が可能になった背景には、OMAP2の採用といったプロセッサ性能の向上や、ソフト自体の誤認識率の低さなどが挙げられると宮田氏は説明する。「N-Visionの顔認証ソフトはカメラが捉えた映像を端からサーチし、顔がどこにあるかを見つけて特徴点と照合する。我々のソフトは誤検出率が低く(画面内の)どこに顔があっても見つけられるところが強み。顔を枠の中に当てはめなくても認証できるだけの誤検出率の低さと(端末の)スピードの向上で実現した」(宮田氏)。

 ただ利用の敷居が低くなったとはいえ、顔認証には課題も残されている。「暗い場所や逆光などの環境下、髪の毛やサングラスなどによる器官部の遮蔽、経年変化は苦手」。前回の登録から3カ月経過したら再度登録を促すなど運用面でのカバーも必要になってくるだろうとしている。

 また、さらに認証精度を上げるために“肌認証”に取り組んでいると宮田氏。顔の特徴点に加え、肌のきめやシミ、シワ、ほくろなども認証の要素にするというものだ。「カメラが500万画素クラスになれば、肌の細かいところも映るので、より細かい情報も特徴点として取り込めるようになる。これで認証精度を上げることもできる」(宮田氏)

顔のメタデータ化で広がる可能性

 同社では携帯に実装した顔認識アプリを、ほかの機能に活かすための提案も行っている。その1つが、撮った写真に人の顔情報のメタデータを付加するアプリだ(7月14日の記事参照)

 「2人で一緒に写真を撮ると、顔情報に基づいた2人の名前がメタデータとして写真に付加される。例えばモブログでアップロードすると、アップされたことを写真に写っている人にメール送信するなど、写真自体にメタデータをタグ付けするような仕組みを検討している」。これが進化すれば、端末内にある写真の中から任意の人が写っている写真を検索でき、ブログやSNSへの振り分けも素早く行えるという。

 「顔認証は入れたいが、でもそれだけではなかなかウリにならないという状況もある。カメラ機能を特徴する端末であれば、顔認証をカメラを便利にするための機能としても使ってもらおうというアプローチ」

 宮田氏は今後の展開について、携帯への顔認証アプリの搭載を起点に、画像に関わるバリューチェーンすべてにアプローチしたいと話す。

 「写真に写っている顔を自動判別して逆光などを補正するプリンタや、撮影画面内にある人の顔を検知してフォーカスを自動で合わせるカメラなどの製品が既に出てきている。カメラやプリンタに限らず、顔の画像や映像を扱うデバイスでこの技術は利用できると考えている。また、テレビ局が持っている映像やHDDレコーダー内の映像、デジカメの写真などが全部メタデータ化されれば、整理や検索、保存、編集がしやすくなるので、幅広い分野のニーズに技術的にお応えできるのではないかと思い始めている」

顔認証で犯罪者を検挙──ロス市警のデバイスで

 米国では、N-Visionの顔認証技術を使った犯罪者取り締まり用デバイスが開発され、運用されているという。N-Visionがロス市警向けに開発したPDA型のカメラ付きデバイスで、職務質問の際に顔をチェックすると前科があるかどうかを調べられるものだ。  「無線LAN経由で犯罪者の顔認証データが、常に最新のものにアップデートされる。不審者の顔を写すと、データベースにアクセスして最新情報との照合を行い、合致するものがあると過去の犯罪歴が分かる」(宮田氏)  ただ顔を認証するための特徴点情報が膨大にアーカイブされるようになると、デバイスをかざすだけで個人を特定できるようなマイノリティレポート的な世界になりかねないと宮田氏。これは静脈も指紋も同様で、簡単には変えられない生体認証の情報は慎重に扱う必要があるとした。

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