「便利なもの」にはへきえきしている──松永真×SH702iDシリーズ・702iDクリエイターインタビュー(1/2 ページ)

» 2006年01月26日 21時56分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 「言葉になりにくいことをやってきた」。グラフィックデザイナーの松永真氏は、「SH702iD」の開発に携わった日々を振り返りつつそう話す。

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 「とるにたらないことの累積だったように思う」「とりたてて言うことはない」。――そんな風に謙そんして言う松永氏だが、もちろん製品へのこだわりがないわけではない。松永氏が作りたかった携帯とは何なのか、「シリーズ・702iDクリエイターインタビュー」(関連記事その1その2)最終回はSH702iDにスポットをあてる。

携帯は「スペック」じゃない

 松永氏は、携帯はいまや「最大の生活必需品であるかのようにあらゆる人にまとわりつくものになった」と話す。機能が満載で、サービスも百花繚乱。いたれり尽くせりになる携帯。だが、松永氏はそんな携帯をどこか冷めた目で見ていたと話す。

 「これでもか、これでもかとカメラの精度を上げたりする。人間でいうと、『身長はどうだ、体重はどうだ』ということばかり言っている。しかし私は、便利なものにへきえきしている」。スタート地点として、機能にこだわらない携帯を開発しようという思いがあるようだ。

 高機能でない携帯、というと、とたんに“簡単ケータイ”“初心者向け”という位置づけになるのも、気に入らなかったと松永氏は続ける。

 「私は携帯を頻繁に使うわけではない。携帯を持つときは、外出時などに限られている。しかし高齢だから、電話をかけるだけだからといって文字が見えやすいだけでいいわけではない。私も60歳を超えているが、美意識がある。デザイナーだ」

 同氏が目指したのは、何か静かであるが、存在感がある、完結で美しいもの。シズル感のあるたたずまいを持ち、自分の分身として許せるものほしかったのだという。

「紳士がパイプを愛でるように……」

 松永氏は個人的な好みとして、石ころが好きなのだと話す。「私は海外でひろった石を飾っておいたりしている。それは石なのだが、触っているだけで嬉しい」。これと同じような感覚を、ユーザーが携帯に持ってもらえればと考えているようだ。

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