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» 2006年03月21日 11時48分 UPDATE

CSRが目指す「ケーブルのいらない世界」

英Cambridge Silicon Radio(CSR)は、UWBの技術を用いてBluetoothを高速化する次世代チップの開発を発表した。来年後半の接続性テストを目標に開発を進めている。

[園部修,ITmedia]

 英Cambridge Silicon Radio(CSR)は、Wi-FiやBluetoothといった無線機能をシングルチップで提供しているベンダだ。Bluetoothチップに関しては、出荷数量では市場シェアの50%以上を占め、製品への採用件数ベースで見るとシェアは市場の約60%にも上る最大手でもある。同社のBluetoothチップは、2005年に開発されたGSM携帯電話の51%、Bluetoothヘッドセットの84%に採用されているといい、ユーザーが意識することはないが、実は非常に身近な存在だ。

 そのCSRが2月23日、UWB(Ultra Wide Band/超広帯域無線)の技術を利用したBluetoothチップを開発すると発表した。これにより、現在Bluetooth 2.0+EDRで実現している最大3Mbps程度の通信速度が、将来的には最大200Mbps程度まで引き上げられるという。CSRの日本法人シーエスアールのジェネラルマネジャー、富永創樹氏にこの“Ultra Wide Bluetooth”について話を聞いた。

Photo シーエスアールの富永創樹ジェネラルマネジャー

WiMedia AllianceのMB-OFDMを利用したBluetoothを開発

 UWBの技術を用いてBluetoothのデータ転送速度を高速化する計画は、2005年5月にBluetooth SIGから発表されている(2005年5月27日の記事参照)。CSRもこの決定にのっとり、Bluetooth SIGの策定する仕様に基づいた製品開発を行っていくという。

 UWBの規格については、現在も米Intelや米Texas Instrumentsなどを主体とする「WiMedia Alliance」(WiMedia-MBOA)と、米Motorola、米Freescaleを中心とする「DS-UWB」の2つの規格が対立しており、一本化されていないという現実があるが、CSRはWiMedia Allianceの無線規格「MB-OFDM」ベースのUWBを採用したBluetooth製品を開発する。

高速なBluetoothで実現するケーブルレスな連携

 BluetoothとUWBの技術を統合することのメリットは、「今まで普及している製品と互換性を確保しつつ高速化できる点にある」と富永氏は話す。Ultra Wide Bluetoothでは、既存のBluetoothプロファイルがすべて利用可能なので、現在携帯電話向けに多数発売されている、ハンズフリー通話用のヘッドセットや音楽再生用のイヤフォンなどのBluetooth機器ももちろんそのまま使える。さらにUltra Wide Bluetooth対応機器間では高速なデータ転送が可能になる。

 Ultra Wide Bluetoothによってデータ転送速度が向上すれば、現在ケーブルを接続して転送しているさまざまなデータがワイヤレスでやりとりできるようになる。最大200Mbpsという帯域があれば、HDMIを無線に置き換えることも可能だという。「HDVのハイビジョン映像でも送ることができるし、動画データのような大きなファイルも機器間で簡単に転送できるようになる。」(富永氏)

 また、携帯で撮影した写真をプリンタで印刷しようと思った場合、大きなサイズの画像はメモリカードを抜き差しして印刷作業を行う必要があるし、赤外線やBluetoothではQVGA(240×320ピクセル)程度の画像しか送れない。しかし、Ultra Wide Bluetoothがあれば、2メガピクセルカメラのUXGA(1600×1200ピクセル)サイズや3メガピクセルカメラのQXGA(2048×1536ピクセル)サイズのデータでも、手軽にプリンタに転送して印刷できるようになる。

 DVDレコーダーで録画した動画を携帯やポータブルプレーヤーに転送して外出先で視聴したり、その携帯やポータブルプレーヤーと車のナビゲーションシステムと連携させて、車載のAVシステムで音楽や動画を楽しんだりといった利用方法も身近になると考えられる。

2007年後半ころのチップ投入を目指す

 CSRではすでに製品を開発中で、「仕様の策定が順調に進めば、2007年後半くらいには、接続性のテストができるレベルにまで持って行けるのではないか」(富永氏)ということだった。Ultra Wide Bluetoothが実際の製品に搭載されるのは、さらにその後のことになるため、まだ少し先の話になるが、消費電力が低いというBluetoothの特徴を受け継いだ高速な無線通信が実現されるのであれば期待したいところだ。

 現状はチップの開発を表明した段階なので、詳細な仕様や、気になる消費電力などについては明確な回答を得ることはできなかった。しかし富永氏は「従来より低消費電力化を進める方向で開発している。データ転送速度が10倍になった場合、同じ量のデータは10分の1の時間で送信できる。送信時にかかる消費電力は高くなっても、それが10倍になることはないので、トータルの消費電力は下げることができる」と話す。

 ワイヤレスUSB高速無線LAN(IEEE802.11)といった類似の規格とのすみ分けなど、普及に向けては課題もある。しかし、PCにも搭載製品が増えてきたほか、海外では携帯電話へのBluetoothの搭載が進んでおり、日本でもキャリアの方針次第で状況が好転する可能性もある。日本ではまだ普及しているとまでは言い難いBluetoothだが、「市場をリードする戦略顧客とのパートナーシップを強化し、普及促進策をいろいろ打っていきたい」と意欲を見せた。

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