“小さくて防水”はこうして実現された――SO902iWP+、防水の秘密開発陣に聞く「SO902iWP+」(防水機構編): (2/2 ページ)

» 2006年06月29日 19時07分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]
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二色成形で薄いボディを実現

 上に述べたように、防水の基本は「パーツに防水テープを貼る」ことだ。しかしダイヤルキーやサイドキーなどは、両面テープを貼って防水しようとすると、どうしても分厚くなる。また、厚くテープを貼ると、押し込みにくくなるなど操作性が損なわれる恐れがある。

 コンセプト編でも触れているように、SO902iWP+は当初のモックアップよりも、製品では二回りほど小さく仕上げることに成功した。特に意識したのが“厚み”。分厚くならないよう、ぎりぎりのところまで厚みを絞り、21ミリに抑えている。

 ボディの厚みを増やさず、しかもキーの操作性を損なわないためにはどうすればいいか。そこで選んだのは、携帯のボディそのもので防水し、内部に水が入り込まないようにするというアプローチだった。「二色成形」という方法を使い、そのもので防水できるボディを作ったのだ。

 二色成形(ダブルモールド)とは、2種類の素材、または2色の樹脂を組み合わせて、1つの金型から一体の製品を作る成型法を指す。SO902iWP+では、固い樹脂と、柔らかいラバー系の樹脂であるエラストマーという2種類の素材を組み合わせて一体のボディを成形している。「固い樹脂は、落としたりしたときに強度を保つため。そして柔らかい樹脂は、防水用の膜としての役割を果たしています」(西村氏)。柔らかい素材はキー部分にも使ってあるため、キーを押しても特に固く感じることはない。これによって、強度を保ちながらキーの操作性を損なわず、しかも防水できるボディが実現できた。

二色成形素材を利用したキースイッチのイメージ図

「防水だから重いキー」にはしたくなかった

 本体サイズが小さいこともあり、SO902iWP+のキースイッチはかなり小さい。しかし高さがある上、クリック感やフィードバックも適切で、サイズの割には押しやすいキーに仕上がっている。ベースモデルであるSO902iよりも、むしろ押しやすいと感じたほどだ。

 「防水処理をすると、どうしてもキーは重くなりがちなのですが、クリックの加重を何度も調整して、できるだけ重くならないようにしました。“防水だから重い”というのは嫌だったので……個人的な目標としては“premini IIより押しやすく”を目指しました」(今崎氏)

photophoto 平べったく、背の高いキーを採用している。なお余談だが、アクティブホワイトとシティダークとで、文字キーの光り方が異なる(ホワイトは文字が白抜きになっている)

 今崎氏は「スピーカーの調整も大変だった」と振り返る。SO902iWP+は、お風呂で水を流しながら音楽が聴けるくらいの音量で音を鳴らすことができるが、その音の大きさを確保するのに苦労したという。「中の空洞が音の響き方に影響するので、空洞を作らないといけないのです。しかし、外を大きくせずにいかに中を大きくするか、そのバランスがとても難しかった。ソニーが出している防水ラジオは、防水レベルとしては“防滴”なので、“防水かつ音を響かせる”というノウハウを社内から借りられなくて、大変でした」(今崎氏)

 なお、SO902iWP+は30分水に浸けても動作する防水仕様(IPX7等級、JIS保護等級7相当)だが、イヤフォンを付けた場合はこのレベルの防水性能を保証できない(5月19日の記事参照)。また、これは“真水”での場合であり、海水や石けん水などに浸けた場合の防水性能は保証していないので、海辺や風呂場などで使ったあとは真水で洗うようにしたい。「石けんやシャンプー、リンスといった界面活性剤が入っているものには浸さないようにしてください。でも『海で使ってはダメ』というのではなく、そういうところでも使えること、利用シーンが増えることを楽しんでほしいと思っています。もしシャンプーや海水が付いてしまったら、すぐに洗面器などで洗ってください」(西村氏)

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