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» 2006年08月04日 22時44分 UPDATE

PSPやW-ZERO3で展示物の解説が読める──国立科学博物館の実験

専用PDAを使った音声ガイドサービスなどを提供している国立科学博物館で、展示物の解説をHTMLファイルで提供し、PSPで表示させる実験を行っている。

[江戸川,ITmedia]

 東京・上野の国立科学博物館で、PSP(プレイステーション・ポータブル)を使った展示解説コンテンツの提供実験が行われている。これは、同館のWebサイトからコンテンツをダウンロードし、メモリースティックDuoにあらかじめ転送しておいて、博物館で参照しようというもの。普段使い慣れたPSPを同館に持参し、その場で解説と見比べることで、展示物への理解を深めようという趣旨だ。

Photo 実験と連動した展示コーナー。このほかにも、関連する展示が同一フロアに若干ある

事前学習にも役立つダウンロード型実験

Photo 国立科学博物館の有田寛之氏

 国立科学博物館では、2004年11月の新館オープン時より、専用PDAを使った有料の音声ガイドサービスを行っている(2004年11月2日の記事参照)。これは来館者が展示物への理解を深めるためのツールとして開発されたもので、PDAの持つ赤外線通信機能を使って展示物の解説を行う。

 同館ではこうした取り組みを始めとして、これまでにも携帯端末を使ったガイドの研究を進めてきた。だが、博物館が最新のハードを導入し続けるのは難しい。そこで、ハード部分は来館者それぞれの環境に任せ、コンテンツの提供に特化することにした。今回の展示でそれが具現化したといえる。

 上野公園で行われた東京ユビキタス計画(2005年10月27日の記事参照)など、この手の実験では、ネットワーク経由でサーバからリアルタイムにコンテンツ配信をすることが多いように思われるが、同館では端末にすべてのコンテンツをあらかじめ入れておく方法を選択している。これは館内に無線LANが設置されていないという事情もあるが、それよりも多くのメリットに着目した結果だという。実験を担当する国立科学博物館の有田寛之氏に話を聞いた。

 「コンテンツを事前にダウンロードする方法を採ったのは、これならばどの博物館でも導入できるからです。全国にいろいろな規模の博物館がありますが、新たな投資もいりませんし、HTMLなのでコンテンツを作るのも容易です。また博物館だけではなくて、例えば動物園と協力してコンテンツを揃えることもできます」(有田氏)

 コンテンツをWebサイトで提供すれば、利用者は来館前の事前学習や復習にも役立てることができ、博物館側もアーカイブとして残しやすい。博物館の売店で販売しているガイドブックもメディア化して、フラッシュメモリーで提供するなど、可能性が広がっていく。

携帯電話ではなく、PSPを選んだ理由

 多くの利用者を見込むのなら、端末として携帯電話を選ぶのが得策ではないのだろうか。そこには来館者の年齢層が問題として浮かんでくる。

 「去年は携帯電話とQRコードを利用して実験を行ったのですが、あまりうまくいきませんでした。子ども達が自分の携帯電話を持っていない、親の携帯電話だからあまり使えない、自分の携帯電話であってもインターネット接続の契約をしていないなど、子どもが携帯電話を自由に使える環境になかったことが理由です」(有田氏)

 館内では筆者の持っていたFOMA端末もたびたび圏外になった。携帯電話があっても安定したインターネット環境を利用するのは難しそうだ。今回のように、子ども達に自分のゲーム機をオフラインで使わせるという手は有効に思える。しかし、PSPではなく「ニンテンドーDS」、あるいは両方に対応するという選択肢はなかったのだろうか。

 有田氏は「端末にPSPを使おうと思ったのは、まずWebブラウザが標準搭載されているからです。そして、ニンテンドーDSよりも高価なので、持っている人の年齢層が高めで、対象が中学生から高校生くらいになるだろうと考えました。ニンテンドーDSだとおそらく小学生が多いのではないでしょうか」と分析する。

 今回の実験は、ニュース展示「カズハゴンドウのマスストランディング」の開催に合わせたもので、展示内容がやや難しいという一面がある。ちょうど学校の夏休み中ということで、来館者には小学生の親子連れが多いのだが、ほかの展示物と比較すると興味を持たせにくいのは事実だ。では、中学生や高校生はどのような反応を見せているのだろう。

 「実は、中学生や高校生は、博物館を“利用しない”年代なのです。小学生なら親に連れられて来ますし、大学生なら自分の興味に応じて利用しますが、この年代が自発的に来ることはあまりありません。これは日本だけではなくて、海外でも同じ傾向のようです」(有田氏)

 つまり、PSPを使った実験によって中学生や高校生の興味を引き、来館へつなげることができれば──という期待があるようだ。しかしモニターの申し込み状況や実際の来館状況から、やはり彼らの姿を見ることは難しそうだ。ではこの実験では十分な結果が得られないのだろうか。

 「小学生の実験参加も大歓迎です。解説が難しいことは分かりますが、どの程度の難しいと感じているのかをアンケート(※注1)で知りたいのです。これまでのアンケート結果から、小学生でも端末操作についての説明が要らないということなどが分かっています。自分のPSPを持っていない人にも、モニターとして事前に申し込んでもらえば貸し出しができますので、ぜひ利用してみてください」(有田氏)

 小学校高学年であれば、夏休みの自由研究の題材としてこのニュース展示を取り上げるのもいいだろう。難解な解説は保護者が読んで、分かりやすい言葉で伝えてあげれば済む。あるいは、事前学習をしておいて、館内で子どもにいいところを見せるという使い方もあるかもしれない。

 コンテンツはHTML形式で提供されているので、W-ZERO3やPDAなどでも表示できる。衝動的に買ってしまって日の目を見なかったPDAも、ここで“子どもの勉強に役立つ”ことを家族にアピールする機会を得られそうだ。

※注1 展示中のアンケート調査期間
1回目:8月1日(火)〜6日(日)
2回目:8月21日(月)〜27日(日)

Photo 展示物を前に、PSPで解説を読む。カーソルは十字キーでも移動できるので、小さな子どもでも操作は簡単だ
Photo 同じ内容の解説をW-ZERO3で読む。HTMLファイルなので、PSPでなくても表示できる。PSP向けに最適化されており、文字情報は画像としてGIFファイル化されているので、PSPに比べると表示は小さめ

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