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» 2006年12月01日 20時33分 UPDATE

mobidec 2006:“まさにガラパゴス”日本の特殊なモバイル市場におけるMVNOの重要性とは? (1/2)

独特の発展を遂げた日本のモバイル市場で、MVNOに期待される役割とその課題とは? mobidec 2006において、MVNOに関するパネルディスカッションが開催された。

[平賀洋一,ITmedia]
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 11月30日に行われた「mobidec 2006」において、「我国におけるMVNOビジネスの課題と今後への期待」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストには、日本通信の常務取締役CFO 福田尚久氏、インデックスの経営戦略局長 技術局長 寺田眞治氏、固定と携帯を問わない、新しいネットワークスーサービスの提供支援を目指すMovabilityの代表取締役社長 兼 CEOの三木雄信氏らが登壇した。モデレータ−は、mobidecを主催するモバイル・コンテンツ・フォーラム 事務局 参与の木村潤氏が務めた。

フォードとファイアストンの関係に見る「MVNO」の必要性

photo インデックス 経営戦略局長 技術局長 寺田眞治氏

 携帯電話キャリアなど、自前の通信網をもつ事業者(MNO)から回線の一部を借り受け、ネットワークサービスを行うMVNO。日本では日本通信がウィルコムからPHS網を借り受け、世界初となるMVNOのデータ通信サービスを開始している。しかし、よりエリアが広く、高速なデータ通信が可能な3G網への接続が実現していない点が問題になっている。

 PC・携帯向けのネットコンテンツ事業を中心に、玩具メーカーや放送コンテンツ制作会社など幅広いジャンルの企業を傘下に収めるインデックスの寺田氏は、MVNOの必要性を次のように説明した。

 「“携帯電話といえばキャリア”という時代ではなくなってきた。イー・モバイルなどの新規参入があり、WiMAXやIEEE802.20といった携帯電話に近い通信サービスが立ち上がりつつある。ワンセグなど携帯向けの放送も提供され、MediaFLOも登場した。携帯からSNSやブログといったCGM、検索エンジンなどを利用する機会も増え、電子マネーや生体認証も追加される。携帯電話がメディアとメディア、メディアとデータを結ぶという、これまでにない広範囲な役割を持つようになってきた。これまで、携帯電話の領域を広げる動きは規模の問題もありMNOが進めてきたが、今後は特定のサービスだけを提供する、ニッチなサービスを専門的な業者が行うというビジネスが求められる。そのためにはMVNOが欠かせない。また、全国レベルでFMC(Fixed Mobile Convergence)を行おうと思うと、現状では携帯3キャリアのグループでしか実現できない。既存のISPが全国エリアでFMCサービスをしようと考えたら、特定のキャリアの傘下に入るか、MVNOという手段を使うしかない。インターネットという自由なビジネスの世界をこれ以上縮小しないためにも、MVNOがこれまで以上に求められるだろう」(寺田氏)

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photo 日本通信 常務取締役CFO 福田尚久氏

 いち早くMVNOサービスを開始し、MVNO推進の旗振り役ともいえる日本通信の福田氏は、自動車産業の発展とその経緯からみたMVNOの必要性を説いた。

 1929年当時、自動車メーカーのフォードは自社のT型フォードで使うタイヤを生産するために、ブラジルにゴム農園を自社で持っていた。何か産業を興したら、自身ですべてを生み出す必要がある垂直統合の時期だったからだ。続いて、義理の息子のハーベイ・ファイアストンがタイヤ専門のメーカーを立ち上げ、ファイアストン社になり自動車とタイヤを切り分けて生産する水平分業の時期へ、そしてブリヂストンに買収されて水平統合という道筋をたどったと解説した。

 「これらは自動車とタイヤの関係ですが、垂直統合から水平分業になり水平統合へと移っていく動きは、すべての産業で見られるものです。しかし、日本のモバイル市場は水平分業から水平統合へと推移する規模と成熟度にもかかわらず、そうなっていない。規制業種ゆえに特定の事業者がインフラもサービスも端末の仕様もコントロールし、いまだに垂直統合の形態になっている。ここで市場に参加するプレーヤーを増やして競争原理を働かせないと、日本のモバイルビジネスに未来はない」(福田氏)

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 しかし福田氏は、なんでも競争原理を働かせれば良いわけではないという。ラジオやテレビは、放送というインフラを利用するハードウェアでスイッチを入れれば番組が楽しめる。これらはハードウェアとコンテンツ、通信を組み合わせたソリューションで製品に競争力を持たせており、もうインフラについて競争する必要はないと話す。

 「アップルコンピューターに在籍していたとき、ビデオ編集ソフトを同梱したiMacを企画した。また、iPodにコンテンツを購入できるiTMS、それらを同期できるiTunesを組みあわせて1つのソリューションにした。AppleStoreも、製品ジャンルでなく“音楽を楽しみたい”とか“写真を楽しみたい”といったニーズごとにコーナーを作るようにした。

 PCの世界ではできたが、モバイル事業に身を置く者としてハードウェアとコンテンツと通信が一体になった製品を提供しようしたとき、インフラである通信を自前で持つのが良いかというとそれは違う。周波数には限りがあり、通信網を引くには設備投資が必要になる。1つの国で3つの会社が3Gネットワークを構築しているのは、世界的に見て異常事態。事業者はまだ増えるようだが、社会的基盤に参入するプレーヤーは最適な数でないといけない」(福田氏)

 福田氏は、日本ほどくまなく無線通信網が整備された国は少ないとし、今後はインフラそのものではなく、ユーザーの細かいニーズをくみ取ったサービスで競争するべきと訴えた。また、電子書籍や金融など、自社のサービスに通信サービスを加えたい企業からの提案がいくつかあると話した。

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