インタビュー
» 2007年03月30日 22時00分 UPDATE

開発陣に聞く「EM・ONE」:“むちゃなお願い”から生まれた「EM・ONE」――その開発経緯とは? (1/2)

イー・モバイルのシャープ製端末「EM・ONE」。なぜ、第1弾端末がPDAタイプなのか。また、大画面液晶、ワンセグ、デュアルスライド機構はどんな経緯で搭載されたのか。開発陣に聞いた。

[小山安博(聞き手:平賀洋一),ITmedia]
photo イー・モバイルの第1弾端末が、シャープ製の「EM・ONE」だ。

 3月31日から携帯電話事業を開始するイー・モバイルの目玉製品として登場するのが、Windows Mobile搭載端末「EM・ONE」だ。4.1インチの大画面液晶に独特のスライドギミックを備え、PC接続した場合も含めて月額5980円で使い放題という定額制の料金プランも魅力。大きな期待が寄せられている。

 EM・ONEはPDAタイプの通信端末で、日本のスマートフォン市場を活性化させたウィルコムの「W-ZERO3」シリーズと同じシャープ製だ。イー・モバイルは、2008年3月まではデータ通信サービスしか提供しないため、EM・ONEは通話機能を持っていない。カード型やUSB接続型のデータ通信用端末だけでなく、PDAタイプの製品を投入したのはどんな意図があったのだろうか。

 イー・モバイル 商品開発本部 移動機統括部 部長の松坂貴弘氏と、同 移動機開発部 主任の福山毅氏、シャープ 情報通信事業本部 通信融合端末事業部 主事の丸山晋由氏の3人に話を聞いた。

photo 左から、イー・モバイル 商品開発本部 移動機統括部 部長 松坂貴弘氏(左)。同 移動機開発部 主任 福山毅氏(中央)。シャープ 情報通信事業本部 通信融合端末事業部 主事 丸山晋由氏(右)

イー・モバイルのビジネスコンセプトを体現する「EM・ONE」

photo 松坂氏は、「『EM・ONE』によってイー・モバイルというキャリアの特徴を強く押し出したかったと」話す

 松坂氏は、イー・モバイルが新規参入するに当たって、コンシューマーへの認知度を高める必要があり「キャリアとしての特徴を出さなければならなかった」と話す。イー・モバイルの親会社は、ADSLのブロードバンド回線をホールセールするイー・アクセスだ。NTTドコモやKDDIなど既存キャリアは、音声からデータ通信へシフトした経緯があるが、イー・モバイルはその逆。PC向けのブロードバンドサービスからモバイルブロードバンドへこぎ出し、データ通信から音声(電話)へサービスを拡大する。こうしたコンセプトを明確にする端末を、第1弾として企画したという。

 松坂氏は「当初は音声しか頭になかった」と明かす。しかし、イー・モバイルの音声サービスの提供が2008年からとなり、データ通信サービスのみで開業する運びになった。「“ブロードバンド”という原点に立ち返り、音声にこだわらずに、開業時期(2007年3月末)に出せるベストな端末を出そう」と考えた結果、上記のようなコンセプトを進めることになった。

 EM・ONEのプラットフォームにWindows Mobileを選んだ理由は、OSとしてのWindows自体が広く普及しており、コンセプトを検討していた当時はWindows Mobile搭載端末があまり市場になかったため、「新しい感じがする」(松坂氏)というものだった。

 Windows Mobile端末といえば、ウィルコムのシャープ製W-ZERO3シリーズが真っ先に思い浮かぶ。同じメーカーということもあるが、W-ZERO3はEM・ONEの開発に影響を与えたのだろうか? 松坂氏は「W-ZERO3のことは(当時)知りませんでした」と話す。

 イー・モバイルは2005年11月に総務省から事業者免許を取得(2005年9月の記事参照)。免許取得のための事業計画は同年の夏ごろから策定を進め、携帯電話メーカー各社に新規参入のあいさつ回りを進めていた。「シャープに話をしに行こうとしたら、『W-ZERO3』が発表された」(松坂氏)のだそうだ(W-ZERO3の発表は2005年10月)。

 そのシャープが、イー・モバイルとの話し合いの中で後にEM・ONEになる端末企画を提案。メーカー側からの提案であれば、シャープ側には発表直後のW-ZERO3が念頭にあったのだろうか? シャープの丸山氏は、W-ZERO3の影響を否定する。

 「開発チームはキャリア別に厳密に分けられており、ウィルコム担当チームとは別に検討した結果です」(丸山氏)。丸山氏本人もW-ZERO3の存在を知ったのは、メーカーの発表後だったと振り返る。その中でWindows Mobileを採用したのは、イー・モバイルが提供する下り最大3.6Mbpsという高速通信を生かすため、どのような端末を開発すべきか検証した結果だという。

 「端末の企画も別ですが、開発についてもやはり別行動です。シャープとして端末開発の要素技術は共有されていますが、製品にかかわる部分はチームごとに独立している。EM・ONEの開発も同様で、先行のW-ZERO3とは別にゼロから開発しました」(丸山氏)。W-ZERO3に使われている技術のうち、基本的な部分はEM・ONEも使われているが、W-ZERO3の影響や関連性は非常に薄い。というわけだ。

 EM・ONEにQWERTYキーボードを搭載することは2006年の3〜4月ごろに決まり、Webブラウジングを快適に行うタッチパネルやポインタの採用も固まっていた。大まかな全体像は2006年5月ぐらいには決定し、2006年7月には仕様が完成していたという。

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