インタビュー
» 2007年07月23日 16時26分 UPDATE

開発陣に聞く「WX320T」:譲れなかった“Carrots”への想い──東芝が6年ぶりのPHS「WX320T」で目指したこと (1/3)

ウィルコム向け端末として、約6年ぶりに投入するPHS音声端末が「WX320T」。いまだにファンの多い東芝のPHS音声端末ブランド“Carrots”の復活にもなるこの端末に、どのような意図を込めたのか。東芝のWX320T開発チームに聞いた。

[坪山博貴,ITmedia]
photo 東芝 6年ぶりのPHS端末「WX320T」。カラーはブラックとホワイトの2色を用意する

 2007年現在、東芝は主にauとソフトバンクモバイルに端末を納入するメーカーとして知られるが、PHS端末もDDIポケット(現ウィルコム)向けにその開業時から端末を提供していた。

 “Carrots”の名が与えられた歴代のPHS音声端末は、使い勝手のよさからファンも多かった。しかしIDOとDDIセルラーが合併し、auとDDIポケットが同じKDDI資本になったことから、一時的にDDIポケットはPHSによるデータ通信事業に力を注ぐ体制になった。結果、Carrotsの血統は2001年発売の「Beat Carrots」を最後に途絶えていた。

 その“Carrots”が2007年、約6年ぶりに復活した。それが「WX320T」だ。

 “Carrots”の名は、ウィルコムのW-SIM端末「nico.」や「9(nine)」のように、正式な製品名としては用いられない。しかし、カタログや製品紹介サイトのさりげない「Carrots」の文字、そして端末(ブラックカラー)に用いるオレンジ色──つまりニンジンの色。これは間違いなく「Carrots」の復活なのだ。

 この復活“Carrots”ことWX320Tを、どんな経緯で、どんな意図をもって開発したのか。東芝のWX320T開発チームに話を聞いた。

photo 東芝 モバイルコミニュケーション社 モバイル国内営業統括部の田中元氏、モバイルコミニュケーションデベロップメントセンター モバイル機器設計第一部の佐藤勇一氏、旧Carrotsシリーズの開発にも携わっていた、同モバイル機器設計第一部の新井政明氏

コンセプトは「ニーズに応える最大公約数の音声端末」

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 WX320Tは、ウィルコムの音声端末で多機能な部類に入るハイスペック音声端末だ。しかし、機能をそつなく備えるがゆえに、強烈な個性を持たない印象を受けるかもしれない。最近のハイスペックな携帯の新機種を見ているとなおさらだ。本機はどんなコンセプトで開発されたものなのだろうか。

 「まず最初に、ウィルコムの音声端末に何が求められているかを調査しました。デザインや使いやすさに加えて、いまどきの端末に求められる機能としてブラウザやドキュメントビューワのニーズが高いことが分かりました。ウィルコムには“音声定額”という強力な武器もありますから、“音声通話のしやすさ”というニーズも特に高かったですね。こういったことを検討した結果、基本コンセプトに徹底した“フレンドリー”を据えることにしました」(田中氏)

 東芝として6年ぶりに投入するPHSの新機種。ほぼ、1からだったという設計においてまず重要視したのは今のユーザーのニーズをどう反映できるかという点だった。

 「PHSは約6年ぶりですが、東芝は使いやすさを重視した“フレンドリー携帯”をいくつも開発してきました。このノウハウを軸にして、ではウィルコム端末には何が求められており、特にどこにこだわればいいのかを徹底して議論しました。その3点が、デザインと赤外線通信、そして押しやすいキーです」(田中氏)

 赤外線通信はウィルコムからの要望も強く、“携帯ともデータ交換を手軽に行えるようにしたい”、“携帯からの乗り換え、ないし機種追加でアドレス帳などを簡単に引越したい”という明白なニーズが存在した。押しやすいキーは、使いやすさに直結するもの。東芝には、auの「W45T」や「A5523T」などに採用した、操作のしやすさに定評のあるダイヤルキー作成のノウハウがあった。

photophoto フレームレス化することでキー1つ1つを大きくした「でかキー」。キー間に隙間がないかわりにキーの中央部がドーム形状に盛り上がっており、押しやすい。キーが大きい分、キーの文字も大きく視認性がよい

 “ユーザーフレンドリー”の実現は、すでに社内に携帯の開発で培った、よい素材がそろっていた。今のウィルコムの音声端末としてこだわらなければいけないもの──言い変えれば、現状のウィルコムの音声端末に欠けていたものを東芝のノウハウで解決しようという考えだ。

 「求められる必要十分な機能は何か。それは、QVGA表示対応の2.4インチディスプレイやメガピクセルカメラ、そしてフルブラウザにドキュメントビューワといったところですかね。ウィルコムユーザーが機種変更したい、あるいはこれからウィルコム端末を利用したいユーザーのさまざまなニーズに対して、最大公約数的に機能をすくい上げて形にしました」(田中氏)

 一見、没個性にすら見えてしまいそうなWX320Tだが、確かに最近の携帯へ当たり前に搭載される機能はまんべんなく備えている。対して、従来のウィルコムの音声端末は個性的な製品も多い半面、携帯と比べると何らかの基本機能で劣る機種が多かったことも否めない。今、ウィルコムユーザーに求められる機能をしっかり備えること、それがコンセプトに掲げた「フレンドリー」の基本になっている。

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