必要な情報を3クリック以内で提供──エム・シー・エヌのリアルタイム携帯統合検索

» 2007年10月10日 21時09分 公開
[園部修,ITmedia]

 米MCN(Mobile Contents Networks)は10月10日、日本法人エム・シー・エヌの設立とともに本社機能を日本に移し、日本を中心としたアジア市場での需要増加に迅速に対応する体制を確立することを発表した。この発表に合わせ、会見した代表取締役社長兼CEOのマーク・ブックマン氏は、同社の開発したリアルタイム統合検索(Federated Search)技術「MobileSearch.net」が、これからのモバイル検索市場で大きな力を発揮することをアピールした。

携帯ユーザーは3回以上クリックしない

Photo エム・シー・エヌ代表取締役社長兼CEOのマーク・ブックマン氏

 ブックマン氏はエム・シー・エヌを設立し、携帯電話向けの検索エンジンを開発する必要性を感じた理由として、PCとは異なる携帯電話ユーザーならではの特性を挙げた。それは“3回以上クリックすることはほとんどない”という特性だ。

 「PCのインターネットでは、ユーザーは10回から15回程度のクリックが必要でも情報を探し続けるが、モバイルの場合は2から3クリック以上かかるとほとんどのユーザーは逃げてしまう。急いで何かの情報を探していることも多いため、3クリック以上必要だと“時間がかかる”“使えない”と判断する傾向がある」(ブックマン氏)

 つまり、携帯電話向けの検索は、3クリック以内でアクセスできるくらいの手軽さで提供できなくてはならないというわけだ。

 また、PCの世界で一般的な検索エンジンは、オープンなインターネットを前提に作られている場合がほとんど。つまり、公開されている情報を収集してインデックス化し、最適化することでユーザーが求めている情報を提供する。しかし、携帯のインターネットはクローズドなデータベース内に蓄積されている情報も多いという問題がある。コンテンツプロバイダがキャリアの公式サイトとして運営しているサイトは、有料会員登録したユーザーしかアクセスできないものもあり、そうしたサイトの情報を収集するのは、オープン型インターネットを前提にした検索エンジンには容易ではない。

 そこでエム・シー・エヌが考えたのが、コンテンツ配信会社および携帯電話事業者との提携を通して、クローズドなデータベースの情報も検索結果に反映させられるようにすることだ。

 「コンテンツプロバイダは自社のデータベースにかなりの投資をしている。機種別の動作確認情報やターゲットとする利用者などのメタデータを時間をかけて充実させてきた。そのデータが利用できれば、ユーザーの検索クエリーに対して明確な結果を出せる」(ブックマン氏)

1画面目の5つの検索結果がユーザーの満足度を左右する

 オープン型の検索エンジンでは取得できない、携帯電話向けインターネットならではの情報が集められる検索エンジンに加えて、検索結果の表示方法についても、エム・シー・エヌでは研究しており、携帯電話ならではの傾向があることを紹介した。それが「1ページ目の最初の5つの検索結果が重要」だということだ。

 携帯電話で検索をするユーザーは、6個目以降のリンクを見ることはほとんどないという。さらに2ページ目の検索結果を見るユーザーとなると、せいぜい10%程度。つまり1ページ目の5番目くらいの検索結果の中に、ユーザーが求めている情報がないと、その検索エンジンはユーザーに便利なものとして認識してもらえない。逆に、その5つの中にユーザーが求める情報があり、そこに最短ルートで到達できるしくみがあれば、CTR(クリック率/表示された回数のうちリンクがクリックされた回数)が高くなり、広告などもクリックされやすくなる。

 こうした考察から生まれたのがエム・シー・エヌのリアルタイム統合検索(Federated Search)技術であり、携帯電話に合わせた情報のレイアウトや画面表示だとブックマン氏は話した。

カギとなるのは「クエリー・ブローカー」

 リアルタイム統合検索のカギとなる部分は、同社が「クエリーブローカー」と呼ぶエンジンだ。クエリーブローカーは、コンテンツパートナーやコンテンツプロバイダが提供しているコンテンツから勝手サイト、有料コンテンツ、広告ネットワークなども検索しながら検索結果を集める。集めた結果は、ランキング情報などを基にして、検索キーワードに対してあまり意味のなさそうなものを削除し、精度を高めて表示する。

 エム・シー・エヌはB2Bでのビジネス展開を考えており、このクエリーブローカーは、ASP方式などでパートナーサイトなどに提供する。ちなみに、同社のエンジンを採用したアプリケーションはすでにドコモのサービスなどで提供されている。三菱電機製のFOMA端末「D903i」「D904i」などに搭載されている「FM Radio Music Search」や、「iMenu Premium Music Search」などがそうだ。そのほかの導入事例も、近日中にいくつか発表できるとした。

PhotoPhotoPhoto エム・シー・エヌが考える携帯検索のバリューチェーン(左)。モバイル検索の目標は、エンドユーザーに簡単にアクセスできる必要な情報を提供するのと同時に、コンテンツ配信会社や携帯電話事業者に対してもメリットを提供する。同社のMobileSearch.netの中核を成すのが独自の「クエリーブローカー」(中央)。MobileSearch.netを導入することで、iメニューからのコンテンツ検索が非常に容易になった(右)

「エム・シー・エヌは日本の携帯検索の問題点に気づいた」

Photo エム・シー・エヌ取締役の高藤丈也氏

 エム・シー・エヌ取締役で、モバイルマーケティングソリューション協議会理事長の高藤丈也氏は「弊社は日本の携帯検索の問題点に気づいた。有料コンテンツなどはコンテンツプロバイダの閉ざされたデータベースの中にあるため、オープンなPC型の検索技術は意味をなさない」と話し、同社の優位性を強調。2011年までに、現在の3倍の規模になると予想されるモバイル広告市場で、エム・シー・エヌの検索エンジンと検索連動型広告を活用してビジネスを展開していく考えを示した。

PhotoPhotoPhoto 電通総研の予測では、モバイル広告市場は20011年に1284億円と2006年の3倍に成長するとされている(左)。エム・シー・エヌの強みは既存の携帯検索が抱える問題点を解決した“真の携帯に特化した検索技術”だと高藤氏(中央)。同社は検索連動型広告で収益を上げるビジネスモデルを採用しており、拡大する市場とユーザーに使いやすい検索エンジンによって収益を拡大するとした

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