インタビュー
» 2007年12月26日 15時45分 UPDATE

開発陣に聞く「N905i」:“ブランドがない” だからこそこだわったワンセグとカメラ――「N905i」開発の裏側 (1/2)

ドコモの2007年冬モデルは、家電系の端末メーカーが、カメラやテレビのブランドを冠した端末を多数ラインアップした。しかしNECは、強力な家電系ブランドを持たない分「実力で勝負した」という。開発陣に520万画素カメラやワンセグの実力、使いやすい回転2軸ボディへのこだわりを聞いた。

[房野麻子(聞き手:平賀洋一),ITmedia]

 今年のトレンドの1つともいえるのが、カメラやテレビのブランド名を冠した端末が続々と登場したことだ。ドコモの2007年冬モデルもCyber-shotやAQUOS、VIERAといったブランドケータイが発表され、注目を集めている。

 こうした中、ブランドの助けを借りることなく、販売数を伸ばしているのがNECの「N905i」だ。905iシリーズで最高の520万画素カメラと、同社として初めて搭載するワンセグ、ケータイとしての使い勝手を重視した回転2軸ボディを採用したこの端末の魅力はどこにあるのか。N905iの開発を手がけたNEC モバイルターミナル事業本部 商品企画部の黒田正洋氏と、板本真一氏に聞いた。

ケータイ初、顔検出AFと手ブレ&被写体ブレに対応

photophoto NEC モバイルターミナル事業本部 商品企画部の黒田正洋氏(左)と板本真一氏(右)

 N905iの機能で、最も特徴的なのがFOMA最高の画素数を誇る520万画素のCMOSカメラだ。手ブレ補正と被写体ブレ補正の“ダブル補正”に対応し、被写体の顔の位置を認識する“顔検出AF”も搭載。端末の発表時点で、ダブル補正と顔検出AFに対応する世界で唯一の携帯電話という点も注目を集めた。

 N905iの顔検出機能は最大3人まで対応。デジタルカメラの顔検出機能には最大10人の顔を検出できるものもあるが、ケータイカメラとしての手軽さや、ファインダーとなるディスプレイのサイズ、採用したCMOSの性能を考え「3人くらいが適当と判断した」(黒田氏)という。あくまで、スナップ写真を手軽に撮るための機能という位置付けだ。

 手ブレ補正と被写体ブレ補正の“ダブル補正”について黒田氏は「異なる2つの機能をただ組み合わせたものではない」と説明する。N905iの手ブレ補正はN904iと同じ6軸補正であり、さらなる進化を考える中で生まれたのが被写体ブレ補正だ。

 「N905iの被写体ブレ補正は、動いているものと止まっているものを画像の中で分離し、それぞれ補正を行って合成するという仕組みです。複数の画像から1枚のベストな画像を作るという原理はこれまでの手ブレ補正と同じで、カメラの感度を上げたり、シャッタースピードを上げるという方法ではありません」(黒田氏)

 N905iのダブルブレ補正は、手ブレ補正技術がさらに進化し、被写体が動いた場合にも対応できるようになったものと言える。例えば“N”端末で“動いている犬”を撮影する場合、1回シャッターを切るとカメラは複数枚の写真を撮影する。「N902i」以降のN端末に搭載された手ブレ補正技術は、この段階で複数の画像からブレた量を検出。“犬の耳”や“鼻”の位置を比べて、ブレがあれば補正を加える。N905iでは、そこからさらに画像を解析し、“床は場所が変わっていないから動いていない”、それに対して“犬は動いている”など、被写体ごとの動きもチェックする。そしてブレの少ない画像を組み合わせ、ベストな画像を生成する。手ブレと被写体ブレの補正は分かれておらず、一連処理で行う仕組みだ。

 「従来の手ブレ補正は、単に画像を重ね合わせる補正が中心でした。夜景などはきれいに写りますが、被写体に動いているものがあると影が出てしまうことがありました。N905iでは被写体ブレに対応したので、動いているものもきれいに見えるようになります」(黒田氏)

 顔検出AFとダブルブレ補正は、どんなときでも簡単に、きれいに撮れるように、という狙いで搭載した機能。デジタル一眼レフのように本格なカメラであれば、スキルのある人が自分なりに工夫して使うことができる。しかし、ケータイカメラを使う人のカメラに関する知識やスキルのレベルはさまざま。撮影スタイルも、端末を縦に持ったり横にしたり、自分撮りをしたりと多様化している。

 「520万画素CMOSや顔検出AF、ダブル補正機能などは携帯電話のカメラとしてはかなりハイスペックなものですが、簡単で身近な機能として使ってほしいですね。ケータイで写真を撮ることが当たり前になる中、N905iならいつでもどこでも、手軽にコンパクトデジタルカメラで撮るような写真が撮れます」(黒田氏)

 なお、ドコモの2007年冬モデルでは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「Cyber-shotケータイ SO905iCS」も顔検出AFを備える。2社とも独自に開発を行ってきため、同じ技術を使うわけではないが、「顔」を見つけてピントと露出を合わせるという効果は同じだ。

「プレビュー」はきれい、「保存」はサクサク

 N905iでカメラ機能を使ってみると、プレビュー時の画像が鮮やかになったことに気がつくだろう。「液晶の違いで多少のばらつきはあるかもしれない」(板本氏)とのことだが、N904iと比べてもくっきりと鮮やかに見えるよう、ディスプレイや画像処理エンジンを改善した。

photophoto 比べてみると、N904i(右)のプレビューはフィルタが1枚入っているような表示。N905i(左)の方が色鮮やかだ

 また、撮像素子の画素数が増えたにも関わらず、撮影した画像をメモリに保存する時間がかなり短くなっている。それはN904iとN905iで、同じ画像サイズで撮影して保存するまでを比較してみると違いは歴然だ。仮にシャッターを切るタイミングがN904iより遅くても、N905iのプレビューが表示される方が速い。また、同時に保存をし始めても、N905iの方が速く終了するという印象だ。

「N904iで3Mの画像を撮ったときと、N905iで5Mの画像を撮ったときの処理スピードがだいたい同じです」(板本氏)。

動作も全体的にスピーディになっており、スペックだけではなく、使い勝手もよくなったと開発陣は胸を張る。

 「ハードウェアが1世代新しいものになっていることもあり、カメラの操作感はかなりよくなっています。特に画質を補正する時間が圧倒的に速くなりました。それと、カメラ起動も若干速くなっています。顔検出AFを入れているので、顔を探してピントを合わせる動作でやや時間がかかりますが、N905iの方がさくさく使っていただけると思います」(板本氏)

プリントしても美しく

 N905iでは、静止画の画質補正技術もバージョンアップした。独自の画像処理技術「PictMagic」は、これまで肌色をきれいに見せるといった補正を行っていたが、今回の“バージョンIV”では顔や風景、夜景など、シーンを自動的に分類して判別し、最適な補正を行うように進化した。

 同じ画面に赤と緑があっても、両方とも色かぶりせず色鮮やかに再現され、動物の毛並みなど細かい部分も判別できる。画質の改善は、カメラモジュール自体の性能アップとも合わせて実現した。

 「これまでは“現実に忠実に”ということでやってきましたが、それでは他社さんのカメラの方がきれいに見えるという評価でした。スペックだけではなくて、見え方も検討し直し、液晶ディスプレイで見ても、プリントしてもきれいに見えるような色味に仕上げています」(黒田氏)

 これまで、NEC端末のカメラ機能は同時期に登場した他社の端末と比べてスペック的には劣っていないものの、画質が劣るという評価があった。今回のカメラ機能の見直しには、過去の評価を挽回したいという気持ちがあったという。

 「技術担当者にも、決して負けていないという自負があります。どうしたら“きれい”と思っていただけるかを考えて、映像の色味やディスプレイに表示させたときの見え方を検討しました。NECにはカメラブランドがありませんので、その分、世に出して恥ずかしくないよう力を入れています」(黒田氏)

VGA/30fpsの動画撮影に対応

 「現在、ネットメディアを起点として、情報を自分からどんどん発信してコミュニケーションスタイルが増えています。静止画だけではなく、動画もブログに載せる人が増えてきました。そのためN905iは、動画機能にも力を入れました」(黒田氏)

 N905iはVGA/30fpsのH.264動画を撮影できる。高画質モードでVGA/30fpsの動画撮影をすると5秒で約2Mバイトものサイズになるため、外部メモリ(最大2GバイトまでのmicroSDに対応)の利用が必須となる。また、動画撮影時の手ブレ補正は基本的に4軸となり、VGAで撮影する場合のみ2軸の手ブレ補正を行う。

 N905iの動画品質は、第2日テレの番組連動サイト「オキナワ オトコ 逃げた blog」で確かめることができる。このブログに掲載されている動画はN905iで撮った素材を使っている。縮小されているためVGAサイズではないが、N905iの動画をブログで使った1例として参考になるだろう。

 「自画自賛ですが、実際にN905iで撮った動画を見て、おお、結構きれいだなと、びっくりすることもありました(笑)」(黒田氏)

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