インタビュー
» 2008年09月18日 00時00分 UPDATE

拡大する専門検索、ソーシャルブックマークとの融合、海外進出──新体制で飛躍を目指すエフルート (1/2)

ケータイのランキングサイトから検索ポータルへと姿を変えてきたエフルートが、新たなステージへ突入しようとしている。創業者の佐藤崇氏が代表取締役会長に、副社長だった尾下順治氏が代表取締役社長兼CEOに就任したエフルートに、今後の展望を聞いた。

[石野純也(EYE's factory),ITmedia]

 創業者の佐藤崇氏が、2003年3月にスタートしたケータイ向けランキング情報サイトのオープンから5年半。今やケータイサイトのポータルとして、コンテンツ配信から専門検索を備えた検索エンジンまで、幅広い事業を展開するエフルートが、新たなステージへ突入しようとしている。

 8月26日には、創業者の佐藤崇氏が代表取締役会長に、そして副社長だった尾下順治氏が代表取締役社長兼CEOに就任することを発表し、新体制がスタートした。エフルートはどのようなサービスを目指しているのか。また、新体制にはどのような意図があるのか。佐藤氏、尾下氏それぞれに、エフルートの今後を聞いた。

Photo 左が創業者であり、代表取締役会長に就任した佐藤崇氏、右が代表取締役社長兼CEOに就任した尾下順治氏

サービス開発を担う佐藤氏とマネジメントの尾下氏

ITmedia(聞き手:石野純也) 創業者の佐藤氏が代表取締役会長になり、新たに尾下氏が代表取締役社長兼CEOに就任されました。体制を変更した狙いを聞かせてください。

尾下順治氏 佐藤がこの会社を作って丸5年経ちますが、最初の2年ぐらいはほとんどスタッフはいませんでした。会社を大きくしていこうとか、株式公開を目指そうとか、そういった明確な目標もありませんでした。それに対して、私が半ば強引に「IPOでしょう」という目標を掲げ、必要な体制や人員を整えてきて、今に至ります。

 最初は2人で役割分担を決めていたわけではありませんが、得意な分野はそれぞれ違います。佐藤はどちらかといえばサービス開発、私は管理系だったり人材採用だったりファイナンスだったりといった仕事をするようになりました。

 今、まさに上場を準備している最中ですが、そうなると経営の役割は非常に多岐に渡ります。サービスに対する将来のビジョンやロードマップを描き、それを運営していくことはベンチャーの経営者にとっては必要不可欠です。一方で、証券会社と話をし、どういう組織を作り、どういう人を採らないといけないのか、どういうファイナンスをしていくのか、というのもまた経営です。

 これを両方セットでやらなければいけないといわれているのが日本のベンチャーですが、実際は難しい。そうなると当然チームを組んでやっていくことになります。佐藤には引き続き佐藤らしく、ある程度自由に、縛られることなく、サービスを開発してほしいと考えました。佐藤が一生懸命コンプライアンスがどうだ、ガバナンスがどうだ、J-SOX法対応がどうだと考えてしまうのはエフルートの本質ではありません。そこで、対外的にも分かりやすい役割分担が必要だと思いました。

ITmedia 会社の規模が大きくなるのにともない、サービス開発以外の仕事が多くなり、そちらに佐藤氏が追われてしまうようになっていたということでしょうか?

佐藤崇氏 そこまで意識していたわけではありませんが、会社の規模や事業が大きくなると、以前のように朝令暮改で、自分の感覚を突き詰めて進めることはできません。経営のトップとして、立場や責任が出てきたともいえます。本来私はサービスの開発やユーザー数の拡大という役割を担っていくべきで、そういう点を投資家などにも期待されています。まだ現段階では大丈夫ですが、私がいろいろと考え込んでしまうと、周囲の停滞感を生んでしまいかねません。上場した後だと簡単に役職の変更などはできませんし、体制の変更はいいタイミングだったのかなと思います。

“タイムマシン経営”での海外展開も検討

Photo 代表取締役社長兼CEOの尾下順治氏。会長になった佐藤氏が海外に渡り、その国に合わせたモバイルサービスの開発をしていく可能性を示唆した

尾下氏 立場を変えたことによって、大きく役割を変えることもできるようになりました。例えば海外展開をする際にも、すごくいい形が組めるのではないでしょうか。

ITmedia 海外ではどのような展開を考えているのでしょうか。

尾下氏 実は先日まで、本格的なリサーチ目的で1カ月ほど海外に行っていました。そこで感じたのは、ガラパゴスといわれている日本とはやっぱり全然違うものの、海外でも携帯電話の本質的な部分は変わらないということです。GSM圏はSIMロックフリーで端末も多様です。中国だとどこが作ってるから分からないノキア端末やiPhoneがあったりしますから(笑)。一方ですごくヘビーにケータイを使っているのは、やはり若年層だったり、ITリテラシーがそんなに高くない層です。インターネットというのをあまり意識することなく、カジュアルにネットサービスの恩恵を受けていて、それに対する依存も高まっています。

ITmedia 海外では、どのようなサービスが考えられますか。

尾下氏 日本のモバイルサービスは着うたフルなどの音楽が圧倒的に強いですが、中国だと音楽が売れないのは常識だといわれていました。しかし、一方でリングバックトーン(呼び出し音の変更機能)がすごく流行っていたり、ゲームも有料で使っていたり、SMSベースのゲームや小説を有料で買っています。これは日本とすごく似ていると感じました。日本ではお金で買うという文化が上手く定着しただけで、そこをもってガラパゴスというのは違うと思います。

 この状況なら、日本で今考えていることが、海外でも数年遅れで展開される可能性があると実感しました。中国でもモバイルの広告価値はすごく高まっていますが、サービスはまだまだ洗練されていません。昔ソフトバンクの孫(正義)さんがやった“タイムマシン経営”(米国で成功したビジネスモデルを、投資や提携を通して、あるいは独自に日本に導入する経営)と同じことを、自らの手でできるのではないかと考えたわけです。

 佐藤ほど、モバイル業界に昔からいて、どういうサービスが栄えて、どういうプレーヤーがいて、どういうユーザーがいたかということを分かっている人間はそういません。やはりサービスには、現地に行って、ユーザーが何を求めているかをマーケティングし、仮説を立ててサービスを開発し、プロモーションをするというトータルプロデュースが求められます。リアルタイムな意思決定が必要なわけです。それができる人間が、うちの会社には1人だけいます。佐藤が自由に“日本を離れていい”となったら、強いのではないでしょうか。

ITmedia 海外といっても、さまざまな国や地域が存在します。具体的に狙っているエリアはありますか。

尾下氏 やはりマーケットが大きいところで取り組んでいきたいので、アジアか北米を考えています。両極端ですけどね。ケータイがモバイルコンピューティングの延長で考えられている北米に対して、完全に電話の代わりで固定インフラがないところで流行っているのがアジアです。どちらも我々にとってエキサイティングな環境だと思います。

ITmedia 具体的なサービスは、何か考えていますか?

佐藤氏 タイムマシン経営というのは私も同感で、検索エンジンに捉われることなく、色々なサービスをやっていきたいですね。我々は、検索エンジンだけをやってきたわけではありません。マーケティング志向で、たくさんのユーザーに使っていただけるものを作っていきたいという思いがあり、たまたまボトルネックになっていた検索エンジンに取り組んでいたのです。中国では、“それが検索エンジンなのか”ということも含めて検討していきたいですね。

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