もう一度Wi-Fiに振り向いてほしい――「au Wi-Fi SPOT」の環境改善を進めるKDDI(1/2 ページ)

» 2012年11月02日 23時13分 公開
[園部修,ITmedia]

 3Gのパケット通信だけでなく、Wi-Fiでのデータ通信が可能なスマートフォンの普及に合わせて、携帯電話事業者各社は自社の契約者向けに提供する公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスを拡充してきた。Wi-Fiアクセスポイントは、ユーザーはより高速に通信できるため、短時間でストレスなく容量の大きなデータのやり取りができ、通信事業者は限りある3Gネットワークのトラフィックをオフロードできるという、どちらにもメリットがあるインフラだからだ。

 現在では、公式発表されている数字でソフトバンクモバイルが32万、KDDIが20万、NTTドコモが7万超(各社で重複あり)を展開しており、都市部ではコンビニエンスストアや飲食店、駅、大規模商業施設の屋内など、さまざまな場所でWi-Fiが利用できる。こうしたエリアは3Gの電波が入りにくい場所での利便性改善につながっているケースもあり、今後もスポット数の増加は続いていく。

 一方で、爆発的に増えたWi-Fiアクセスポイントは、スマートフォンユーザーにストレスももたらした。スマートフォンではWi-Fiの自動接続をオンにしておくと、適宜Wi-Fiスポットに入ったタイミングで3GからWi-Fiに接続を切り替えてくれるが、場所によってはWi-Fiの電波が弱かったり、Wi-Fiスポットにたくさんの人が接続していたりする。そうすると、通信が不安定になり、あるいは通信できなくなって、「Wi-Fiにつながることで通信が止まる」という現象が起きる。実際、外出するとちょくちょくWi-Fiをつかんでイライラする、というユーザーは読者の中にも多いのではないだろうか。また、Wi-Fiをオンにしていることで、バッテリーを余分に消費してしまうと考えているユーザーも少なくない。そして、ユーザーは「Wi-Fiは使いたくない」と、Wi-Fiをオフにしてスマートフォンを使うようになる。

 ユーザーのこうした不満は、もちろん通信事業者も認識している。KDDIは、2011年6月から「au Wi-Fi SPOT」を提供しているが、ユーザーからの声を聞きながら、端末とアクセスポイントの両方の環境を改善してきた。

 「『普段Wi-Fiの電源をオフにしている』というユーザーさんはけっこう多いのではないかと思います。そうしたお客様に、実際にWi-Fiを利用しない理由を伺ったところ、バッテリーの消耗が気になるので使わない、Wi-Fiと3Gの切り替えが頻繁に発生していやなので使わない、Wi-Fiにつながっても通信できる状態になるまで待たされるので使わない、という方が多くいらっしゃいました。ではどうしたらもっとWi-Fiを快適に使っていただけるか。それを考えて、さまざまな品質改善を行っています」とKDDI コンシューマ事業企画本部 TFオフロード推進室長の大内良久氏は話す。

 では具体的にどんな対策をしているのか。大内氏、コンシューマ事業企画本部 コンシューマ事業企画部 主任の青山佳代氏、技術企画本部モバイル技術企画部Wi-Fi企画グループ 課長補佐の上田隆正氏に、同社の取り組みを聞いた。

Photo KDDI 技術企画本部モバイル技術企画部Wi-Fi企画グループ 課長補佐の上田隆正氏、コンシューマ事業企画本部 TFオフロード推進室長の大内良久氏、コンシューマ事業企画本部 コンシューマ事業企画部 主任の青山佳代氏

Wi-Fiで通信した方がバッテリーは持つ

 “Wi-Fiオフ派”のユーザーの中には、Wi-Fiをオンにしているとバッテリーが速く減ると考えている人もいる。しかし、必ずしもそうとは限らないと大内氏は言う。KDDIでは2012年夏モデルから、待受時のWi-Fi信号受信間隔を最適化しており、Wi-Fiをオンにした状態で待受しても、従来比で約2倍のバッテリーの持ちを実現した。

 さらに大内氏は「3Gで通信する方がバッテリーは速く減ります」という。3GやLTEでの通信は、スマートフォンが遠くの基地局と通信するので大きな電力を必要とする。一方Wi-Fiはアクセスポイントの距離が近いので、必要な電力は少なくてすむのだ。同じサイズのデータをダウンロードする場合、通信する時間はWi-Fiの方が3Gよりも短いことがほとんどなので、Wi-Fiで通信した方が、3Gと比べて消費する電力は少ないという。

 「実際にテストしてみたところ、Wi-Fiを使っていただいた方が約1.5倍ほどバッテリーの持ちがいいことが分かりました。3Gが混雑している場合には、パケットの再送などが多くなりますのでスループットも遅くなり、通信時間が長くなって、結果的にWi-Fiの方が約6.9倍もバッテリーの持ちがいいといった結果も出ました」(大内氏)

 これまでのKDDIの取り組みにより、Wi-Fiはオンにした状態で待受してもバッテリーはかなり持つうえ、実際にデータ通信をするシーンでは、Wi-Fiを使った方がより少ない電力と短い時間ですむというわけだ。もし外出時にバッテリーを節約するという目的でWi-Fiをオフにしているなら、考えを改めた方がいいかもしれない。

“つながらないWi-Fi”をなくす

 もちろん、こうした結果が出るのはWi-Fiの電波をしっかりつかんでいることが前提となる。Wi-Fiの電波が不安定で、3Gと行ったり来たりするような状況では、無駄に電力を消費してしまうのは間違いない。だからこそ、KDDIでは外出先でのWi-Fiの品質改善も進めている。

 2011年6月に提供を開始したAndroidスマートフォン向けのau Wi-Fi接続ツールでは、通信状態を認識して3GとWi-Fiを適宜切り替える技術を導入していた。これにより、Wi-Fiエリアの周辺部などでうまく通信できないWi-Fiアクセスポイントに接続してしまう現象を回避している。

 しかし、ツールを提供開始した当時は静止した状態での利用を想定していた。そのため、歩行中に店舗のWi-Fiアクセスポイントなどから漏れてくる電波を補足すると、不必要にWi-Fiに接続しようとして通信できず、しばらくして3Gに戻るという“バタつき”が発生するケースがあった。

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 「お恥ずかしい話ですが、これまで静止状態に合わせてチューニングしていたので、どうしても店舗の漏れ電波などをつかんでしまうことがありました。そこで2012年の春から、歩行状態でのチューニングに変更しています。歩いている間に検出するアクセスポイントは、静止状態とは回数などが違うため、そこをうまく調整しました。その結果、通信できない時間を約70%抑制できました。まだ野良アクセスポイントや干渉の影響など、KDDIだけではコントロールできない部分もあるのですが、かなり改善しているはずです」(大内氏)

 またこれまでは、スマートフォンとWi-Fiのアクセスポイントとの間で、上りの電波と下りの電波のバランスが悪いため、「電波は強いのにWi-Fiで通信できない」場所が50メートルくらいの範囲で発生していた場所も一部にあったという。そこでKDDIでは、アクセスポイントの出力を調整し、バランスの悪さを解消して問題を解消。電波をつかめばしっかり通信できる環境を整えた。

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