NTTドコモがついにiPhone導入へ――土管屋時代に突入し、LTEエリア品質戦争本格化石川温のスマホ業界新聞

» 2013年09月13日 12時26分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 9月6日、日経、朝日、NHKなどが「NTTドコモ、iPhone導入へ」と報じた。その後、日経新聞は加藤薫社長が来週渡米し、iPhone記者会見に参加、アップルと最終合意をすると見られると報じている。現地10日の記者会見ではNTTドコモ加藤薫社長、KDDI田中孝司社長、ソフトバンクモバイル孫正義社長という「スリートップ」が勢揃いすると思うと面白い。

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 これでようやく、NTTドコモがiPhoneを扱うようになるわけだが、当然、様々な懸念材料もある。NTTドコモがiPhoneを手にしたからと言って、安泰というわけではなさそうだ。

 まず、心配なのがネットワークだ。当然、NTTドコモはこれまでiPhoneを扱ったことがない。おそらく、事前にネットワークの試験はしているだろうが、Androidとはまた違った制御となる。さらに爆発的にiPhoneユーザーが増えれば、ネットワークへの負荷は重大だ。

 昨年、KDDIがiPhone5開始後、LTEのネットワーク障害などを起こしたり、「パケ詰まり」問題を発生させたが、NTTドコモにも似たような状況が起こってもおかしくないだろう。

 また、気がかりなのが、iPhone導入当初、iPhoneでどれだけの機能・サービスが使えるかという点だ。度重なる延期が続く「ドコモメール」もサービス提供開始予定時期は10月下旬となっている。iPhoneが発売されるタイミングで、従来のdocomo.ne.jpメールはきちんとやりとりできるのか。きっちりとプッシュ配信に対応できるのかなど気になるところだ。

 振り返ってみれば、KDDIがiPhoneを導入した当初も、メールシステムに関してはソフトバンクと見劣りする部分が多かった。NTTドコモでも似たような状況になるだろう。

 販売現場においては、やはり発売当初は、ドコモショップでも一部のみの取り扱いになるなど販路が限定される可能性はある。NTTドコモでは11日に代理店の幹部を一斉に集めて準備をするようだが、調達台数の問題やスタッフ教育の面からも限定的に販売されてもおかしくない。

 こう考えてみると、すぐにKDDIやソフトバンクに対抗できるだけの競争力を持ち合わせているとは思えない。しかし、なんだかんだ言って、ユーザーが殺到し、爆発的に売れるのは間違いないだろう。

 さて、ようやくiPhoneを3社が扱うことになって、競争はますます激しくなりそうだ。まず、料金競争だが、パケット通信料金などは、各キャリアはアップルにお伺いを立てて決めている節もあるため、いたずらに1社だけが突出して値下げするということはなさそうだ。キャリアとしても、毎月の通信料金は収益の根本だけにいたずらに下げるということはしないはずだ。

 一方で、MNPによるキャッシュバックや商品券、既存ユーザーに対する機種変更を促すためのクーポン券のばらまき、端末下取り施策などは、強化されるのは間違いない。各社とも「いかに他社から顧客を奪うか」「いかに既存顧客を囲い込むか」に注力するはずだ。

 また、面白くなりそうなのが、ネットワーク競争。9月2日にKDDIが説明会を行い、田中孝司社長が800MHzのLTEネットワークへの自信を語っていたことを考えると、新型iPhoneが同周波数帯のLTEに対応するとみて間違いないだろう。

 KDDIでは2GHz帯で150Mbpsのサービスを限定的に始めている。

 一方、NTTドコモが強みを発揮するのが1.7GHz帯。東名阪で今年度中にも同周波数帯を20MHz幅使い、150Mbpsサービスを開始する。東名阪のどれだけのエリアで実現できるかは見えていないが、首都圏を150Mbpsでカバーできるのは魅力だろう。

 ソフトバンクに関しては、新型iPhoneがTD-LTEに対応するのかが焦点だ。TD-LTEに対応していれば76Mbps、対応状況によっては110Mbpsでのサービスが全国規模で提供できる(※)。

※本メルマガは、iPhone 5s/5cが正式発表される前に書かれたもの。iPhone 5s/5cはTD-LTEをサポートするモデルもあるが、SoftBank 4Gで利用しているAXGPには対応しない。

 ただし、UQコミュニケーションズも10月末にはTD-LTEサービスを開始する。エリア構築には時間がかかるため、この点においてはソフトバンクが有利に働きそうだ。

 NTTドコモもiPhoneを扱うのはいいのだが、同社は当然のことながら、TD-LTEネットワークを持っていない。加藤社長は「うちはFDD-LTEで行く」と以前、語っていたことがある。

 「TD-LTEもFDD-LTEも一緒みたいなもの」と言う見方もできるが、果たして、NTTドコモがFDD-LTEだけでどうやって戦っていくかに注目したい。

 いずれにしても、3社が同じ端末を扱うことで、ネットワーク品質競争に軸足が移ってきた。接続率やつながりやすさなど色々な言い方ができるが、今後しばらくは「どこのキャリアが速くて広くて快適か」という議論で盛り上がってしまいそうだ。

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