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「また見つかった」「何が?」──そんな2006年だったかな(1/3 ページ)

» 2006年12月27日 15時51分 公開
[ITmedia]

 「そして時は動き始めた」ように思った前年。2006年は正月気分をさますニュース速報の一閃で幕が開いた。夢半ばで挫折した人がいる一方、ネットで懐かしい人や歌や番組に再会できたのは「あなた」のおかげ。私たちはどこかを目指して歩き始めた。インターネットとWebの可能性を再び見つけたような気がする2006年を振り返った。

1月16日夜、六本木

 「ライブドアに東京地検が家宅捜索へ、容疑は証券取引法違反」──思い返すと1月16日午後4時過ぎ、テレビが速報したテロップで今年1年が始まったような気がする。この日夜、東京地検特捜部は“ヒルズ族”の象徴・六本木ヒルズの同社本社などの捜索に踏み切った

photo 1月16日午後6時半ごろ、六本木ヒルズのライブドア本社に東京地検特捜部が家宅捜索に入る

 そして1週間後、プロ野球参入やニッポン放送をめぐる攻防戦で時代の寵児とはやされた堀江貴文社長(当時)らが同容疑で逮捕。「日本のIT業界がほぼ初めて直面する極めて異例の事態」だった。

 後任の平松庚三社長は「株価至上主義に走りすぎた」と謝罪。4月14日には東証マザーズの上場が廃止され、かつて「世界一の企業」を目指し、同市場のシンボル的存在だった時価総額は10分の1以下になっていた。

 「ITは虚業」「事業の実態は何もない」──世間からこんな集中砲火を浴びながらも、ライブドアの中では安定したサービスを提供しつづける技術者らの姿があった。ライブドアはポータル事業への集中を再建の柱に打ち出したが、かつてのような「ヤフーに追いつけ」は卒業。金融事業やメディアエクスチェンジ、中古車販売子会社などを売却し、CGM(Consumer Generated Media)にかける。

 容疑をほぼ認めた、ライブドア元取締役・宮内亮治被告らの判決は来年3月に言い渡される。堀江被告には検察側が「被告とライブドアの利益を目的に、多数の投資者を欺いた悪質な犯行」などとして懲役4年を求刑したが、堀江被告は無罪を主張し、真っ向から対決している。

暴落するネット銘柄

 ライブドアの証券取引法違反事件は、証券取引市場の大混乱──いわゆるライブドアショック──の引き金になった。同社への家宅捜索を受け、関連銘柄だけでなく幅広く売り注文が殺到。増大する約定件数にシステムが耐えきれず、東京証券取引所は全銘柄の売買停止という前代未聞の措置に追い込まれた。

 新興企業による市場操作、脆弱な市場インフラ──世界に恥をさらした日本の証券市場への不信感も高まり、前年後半から急ピッチで上昇を続けていた株価には大ブレーキがかかった。

 しかし多くの上場IT企業にとって、ライブドアショックは単なる始まりに過ぎなかった。「Web2.0」というバズワードのもと、ネットバブル以来のノリでインターネットがもてはやされた反面、上場ネット企業は株価の暴落という事態にさらされた。

 時価総額がそう大きくなく、新興市場が多いネット銘柄の取引は個人株主が中心だが、ライブドアショックでその多くが傷ついた。さらに4月以降、USENやインデックス(当時)などのネット企業が相次いで業績の下方修正を発表すると、個人投資家は保有銘柄を投げ売りせざるを得なかった。

 ネット企業が多く上場するJASDAQを見ると、上場企業の時価総額合計は、1月に19兆4571億円だったが、11月には3割減の13兆1217億円にまで落ち込んだ。ネット銘柄は数分の1は当たり前、中には10分の1以下に暴落する銘柄もあるなど、ほとんどが激烈な下落に直面した。

 傷ついた個人投資家が退場を迫られ、JASDAQの売買高・売買代金は年初から3分の1以下に減った。JASDAQインデックスのチャートは地をはい、1年かけてライブドアショック以前の水準に戻した日経平均株価とは対照的だ。

 ネット銘柄の多くは、空売りができないという単純な理由もあって割高な価格が形成されてきた。高い成長性に期待が集まっていた面もあるが、当初予想とあまりにもかい離した業績下方修正や赤字転落という結果で投資家を裏切り、「日本のITは、数百人程度の“IT長者”にオイシイ生活をプレゼントするためのものだった」という悲観論も聞こえた。突如現れて急成長を遂げ、16億5000万ドルの買収額を付けたYouTubeのように、革新的な発明と変化を伴って新興ネット企業が登場してくる米国との違いを考えると、ちょっとため息も出てくる。

ついに発売された次世代DVD

 出るまでの盛り上がりは相当なものだが、出てしまうと意外にあっけない。期待の新製品の発売までを編集部で何度も眺め、こんな感想を持っている。Windows Vistaの一般発売は来年にずれ込んだが、今年は次世代DVDと次世代据え置き型ゲーム機という重要な新製品が登場した。

photo 東芝が3月31日に発売した初のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」

 年度末の3月31日、記者発表と同時にいきなり店頭販売が始まった東芝のHD DVDプレーヤー。Blu-ray Disc(BD)に負けたら「土下座する」と豪語した同社は、7月にはハイエンドレコーダーを発売し、12月下旬にはプレーヤーの新製品を投入。「HD DVDはもう第2世代だ」と胸を張った。HD DVD陣営のマイクロソフトも、Xbox 360専用の安価なプレーヤーを発売して援護射撃した。

photo 松下が発売したBDレコーダー「DMR-BW200」

 対するBD陣営は映画ソフトなどを11月から順次発売。8月末に開かれた決起集会では、報道関係者らが大勢集まる大会場の大画面に某アニメがでかでかと映し出され(歌付き)、記者は1人ニヤニヤしたのだった(版権の都合で上映中は撮影禁止だったので、お伝えできませんでした)。

 BD陣営で最も力が入っている感のある松下電器産業は11月にレコーダー2機種を発売。「BDは極めて有利」と自信をみせた。ソニーもレコーダー2機種を12月に投入したが、なんと2層ディスクに非対応という萌えない仕様に失望が広がった。BDドライブを搭載した「プレイステーション 3」(PS3)は品不足もあり、スタートダッシュにつまずいている。

 ともあれ次世代DVDの競争は始まったばかり。米国のネット上の評判はHD DVDに軍配が上がる結果になったが、まだまだ先行きは分からない。

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