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» 2009年05月21日 21時20分 UPDATE

「このままではPSE法の二の舞」 医薬品ネット販売継続求め国会議員と有識者らアピール

「医薬品ネット販売規制は過剰、国会で議論を」――自民・民主の若手議員や浅野史郎さん、國領二郎さんなど有識者、消費者が集まり、ネット販売継続を強く訴えた。

[岡田有花,ITmedia]
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 「医薬品ネット販売規制は過剰。通販継続に向け、国会で改めて議論を」――6月1日施行予定の改正薬事法に伴う省令で、一般用医薬品(大衆薬)の通信販売が規制される問題で、与野党の若手議員と浅野史郎・元宮城県知事など有識者、消費者が5月21日、衆院議員会館に集まりネット販売継続を強く訴え、国の姿勢を批判した。

 厚生労働省は「対面販売でなければ安全性が確保できない」として、ネットや電話などによる大衆薬の通信販売を省令で規制する。ネット業界や消費者などからの反発を受けて検討会を開いたが、議論はまとまっていない。厚労省は経過措置として、離島の居住者などに限って2年間、通販の利用を認めるよう提案しているが、このままでは大半の人がネットで大衆薬を購入できなくなる。

 「この省令には与党でも疑義を持っている」――呼び掛け人・自民党の世耕弘成・参院議員はこう口火を切った。省令施行まで時間がないが、まずは現行のままネット通販が継続できるよう訴えながら、国会で議論の俎上(そじょう)に載せたい考えだ。


画像 世耕議員

 ただ与野党とも、「党内に業界の権益を守ろうとする人やネットに偏見を持つ人がかなりいる」(民主党の田村謙治・衆院議員)ことや、衆院選挙前というタイミングもあって党として一枚岩にはなれず、超党派で活動することを決めたという。

 呼び掛けに応じて集まった議員は、2人のほか、自民党から山内康一・衆院議員、民主党から鈴木寛・参院議員、市村浩一郎・衆院議員、鷲尾英一郎・衆院議員の計6人。「国会などで、きちんと議論する期間を設けるべき。このまま突然ネットで買えなくなれば、PSE法(電気用品安全法)の二の舞になる」と市村議員は懸念。鈴木議員は「役人の暴走を止めたい」と話す。

「厚労省のロジック、破たんしている」「規制は憲法違反」

 厚労省は、「通信販売は購入者の顔色が見られず、適切な処方ができない」などと対面販売の必要性を訴えている一方で、薬を服用する患者の家族など、代理人が薬局に出向いて購入することは認めているという。

 「代理人でもいいなら厚労省のロジックは破たんしている。これは明らかに既得権益の保護。“対面の原則”は、ただの言い訳に過ぎないのでは」と、慶応義塾大学の國領二郎教授は批判する。

 中央大学法科大学院の安念潤司教授は、「省令は職業選択の自由に違反した行き過ぎた規制だ」と指摘。鈴木議員も「生存権や営業権、基本的人権を侵害している」と批判した。

「国内の通販で買えないなら、海外サイトで個人輸入する」 障害者の声

 ネット通販は外出しなくても薬が購入できるため、四肢や視覚などに障害を持つ人には特に便利だ。新型インフルエンザの流行で外出を控えている消費者も通販なら安心して利用できる。薬品パッケージだけでは分かりにくい副作用もチェック可能だ。

 足に障害があり、歩行ができないという岡野圭さんは「規制は障害者の生活クオリティを下げる」と訴える。

 「わたしが店舗に薬を買いに行こうとすれば、車に乗って駐車場のあるドラッグストアに行き、障害者用駐車場が空くまで待ち、車いすで店に入り、と1日仕事になる。ネットの薬局ならその苦労なく購入でき、効能や副作用も自分で確かめられる」。岡野さんは、国内でネット通販が禁止されれば海外のECサイトで個人輸入すると話した。

 視覚障害者の志摩撤郎さんも、「薬局でものを買うのは困難だし、誰かに購入をサポートしてもらうとプライバシーが失われる。ネットとPCを使えば自力で情報を得られ、失った機能を取り戻せる。ネット通販の禁止は障害者の尊厳を踏みにじっている」と訴える。

新型インフル流行でネット通販が本領発揮

画像 三木谷社長

 厚労省検討会のメンバーで、オブザーバーとして参加した楽天の三木谷浩史社長によると、新型インフルエンザの流行に伴い、楽天市場で神戸地域からの購入が倍増したという。「新型インフルエンザのような問題が起きた時、薬局に買いに来なさいというのは逆効果ではないか」(三木谷社長)

対面でも防げない薬害は防げない

 ネット通販には確かに、薬剤師からの説明を対面で受けられないという欠点や、複数の店舗を回って大量に購入することがリアル店舗よりも容易といったリスクもある。

 リスクを最小限に抑えるため業界は自主ガイドラインを定め、情報提供を徹底したり、購入履歴を管理するなど努力している。そんな状況下で、「利点と欠点の議論を尽くさず、ネット販売を禁止にする議論はおかしい」と、国際医療福祉大学大学院長の開原成允さんは話す。

 「対面であっても、防げない薬害は防げない」(開原さん)のも事実。「薬害は薬そのもののリスクが問題で、売り方や買い方の問題ではない」と浅野さんは指摘する。

消費者も反対した「おかしな」省令がなぜ 「与党に見えないプレッシャー」

画像 浅野さん

 参加した全員が、「ネット通販にも確かにリスクはあるが、そのリスクは対面販売と大きく変わらず、利便性の方が大きい。『通販は危険』という厚労省の説明は納得できない」という意見で一致。反論材料は見当たらず、浅野さんは「どう考えても理屈に合わない」と首をひねる。

 それでも強行されつつあるのはなぜか。明らかにおかしなロジックの省令に対して、与党が一枚岩で反対できないのはなぜか。呼び掛け人の世耕議員が「参加を議員に呼び掛けるのに苦労した。ここに来るには与党的には覚悟がいる」と話したのはなぜか――浅野さんが世耕議員に詰め寄るひと幕もあった。

 世耕議員は「見えないプレッシャーがあった」と話すにとどめ、具体的な説明は避けた。代わって三木谷社長が「ネット通販禁止は、ネットを知らない人たちが4年前から決めちゃった。決めた人たちや、決めた時に後ろにいた人たちが対面販売にこだわっている」ことが背景にあると解説。衆院選が近いという時期の問題もあり、三木谷社長が協力を呼び掛けた議員の中には「選挙が近いから動けない」と断った人もいたという。

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