Firefoxは使い勝手の良さのおかげで、多くのユーザーをライバルから奪った。このブラウザの従来バージョンでは、メニューにアクセスしたりブックマークを見つけたりするのが容易で、効率的に操作できるのが魅力だった。それどころか、使い勝手の良さではChromeをしのいでいるともいえた。だが状況は一変した。Firefox 4ではメニューが大幅に変更され、非常に分かりにくくなった。Chromeユーザーであれば違和感はないだろうが、最上段のメニューに容易にアクセスできるのに慣れていたユーザーにとってはFirefox 4を一目見たときにショックを覚えるだろう。Firefox 4は従来版よりも使い勝手が悪くなった。これは残念なことだ。
これはささいな問題かもしれないが、Firefox 4では最終版をリリースするまでに、タブの移動方法を改善する必要がある。Chromeではタブをドラッグするだけで別の場所に移動できる。1つのタブを移動するとほかのタブの位置がシフトするため、移動対象のタブがどこに入るのかすぐ分かる。だがFirefox 4の場合はそうではない。同ブラウザではタブをバーに沿ってドラッグしてもタブが動かず、青色の矢印で移動位置が示されるだけなのだ。Windows 7ではこの矢印は非常に見づらい。タブが動くようになれば分かりやすいが、その動きがスムーズでなければ、ユーザーはいらいらするだろう。
Firefox 4の主要な問題の1つに、その新デザインはユーザーが期待する直感性が欠如していることがある。目立つアドレスバーがあり、その横には検索ボックスがあるのは従来と同じだが、ページの左上と検索ボックスの右側にさまざまな機能が隠されており、ユーザーが求める機能を見つけるには、あちこち探し回ってクリックしなければならない。ユーザーがブラウザで何をしたいのかを理解し、それを効率的に実行できるようにするデザインを開発するのではなく、あらゆる機能を2つのメニューの中に押し込めることが重要だとMozillaは判断したのだ。これは残念なことだ。直感的なデザインはブラウザの成否を決定付ける要素だ。Firefox 4はその要素を備えていない。
Firefox 4におけるHTML5のサポートは、同ブラウザで最も歓迎すべき新機能だ。これにより、Web上のすべてのページを新しい標準で表示させることが可能になる。しかしHTML5のサポートの宣伝は少し大げさに過ぎるように思える。確かにAppleがサポートする標準に対応するのは喜ばしいことだが、Webプラットフォームの変化に付いていこうとする企業にとって、同標準に対応するのは当然だといえる。競合ブラウザの多くが何らかの形で既にHTML5に対応しているため、Firefox 4も同標準のサポートを余儀なくされたのだ。HTML5への対応は歓迎だが、大はしゃぎするほどのことではない。
Firefox 4のβ版を試用しているときに何度も感じたことがある。それは、このブラウザが幾つかの部分で従来版よりもはるかに簡素化されているものの、ある部分ではずっと複雑になっているということだ。言い換えれば、Firefox 4への移行は大きなトレードオフを伴うということだ。とはいえ、目立つアドレスバーと便利な検索バーのおかげで、Chromeに代わり得るシンプルで有力な製品になっている。しかしページのソースを見たり、保存したブックマークを表示させたりしようとすると、必要以上に複雑な操作を強いられる。これはデザイン上の重要な欠陥であり、最終版ではこの問題を修正する必要がある。
異なるブラウザを比較する際には、将来的な可能性も考慮に含めなければならない。MozillaのFirefox 4は多くの長所を備え、将来的にさらに優れたバージョンが登場するための出発点だといえそうだが、ブラウザ市場で最も有望な将来性を持っているのはChromeだ。このソフトウェアはChrome OSで主要な役割を果たすだけでなく、高速でありデザインも優れている。そしてGoogleが同ブラウザに幾つかの改善を加えれば、あらゆる競合プログラムよりもはるかに優れた製品になるだろう。将来的可能性がブラウザの優劣の判断材料の1つであるとすれば、勝者はChromeだ。
企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR