前回記事の補足&スポーツ系のエンコードを考えるわかりたい人のための動画エンコード講座(1/2 ページ)

» 2004年05月20日 16時21分 公開
[姉歯康,ITmedia]

はじめに……前回の記事に関して

 本題に入る前に、前回のMPEG-2の記事について、いくつか反論をいただいたようなので、それについて弁明したい。

1.MPEG-2とMPEG-4の使われ方についての情報が抜け落ちているのでは?

 おっしゃる通り、私はファイルフォーマット、圧縮フォーマットについてネチネチと述べただけで、現状の実用面のことは無視している。現状だけを考えたら、一般的には、「MPEG-2関連製品」に、圧倒的に優秀なものが多い。エンコーダー/デコーダーも熟成されているためである。が、それは「MPEG-2というファーマットがMPEG-4というフォーマットより優秀である」という意味にはならない。そこを勘違いしないでいただきたい、ということを言いたかっただけなのである。

2.互換性だけでなく、例えばBlue-ray DiscではMPEG-2が採用されるというトピックもある。そこを考えなければダメなのでは?

 それは「使われ方」のお話である。MPEG-2が、どうして各方面で採用されるかといえば、実績があり、すでに良質のエンコーダーが各種あり、価格的にも安く、互換性があるからである。「現状」を基準にしたら、総合的に見てMPEG-2にかなうソリューションはないだろう。ただ、しつこいようだが、それは「MPEG-2が優れているから」ではない。「MPEG-2をより良いものにするために各社が頑張ってきた結果、よい品質のMPEG-2が得られるようになったから」なのである。

3.MPEG-4がMPEG-2よりも優れているというのは理論的には正しいが、実装としてはあり得ないのでは?

「あり得ない」とは思わない。が、確かに現状の実装については、MPEG-2のほうが優秀な場合が多いだろう。これは私の原稿に矛盾していないと思う。私は理論上のお話をしたかっただけである。ただ、私の「トーン」には、少々問題があったかもしれない……。

4.AVC(H.264)は確かに低ビットレートではMPEG-2の2倍の圧縮効率だが、高ビットレートではMPEG-2以下である。

 これは、何かの製品における実装の話のことをおっしゃっているのだと思う。私の理解では、「理論上では、どこまで行ってもAVCのほうが上。逆転は起きない」である。ただ、そんな上のビットレートをAVCでエンコード/デコードできるものがあるのか? と聞かれれば、あるとしても研究レベルのお話であろう。「実装がなければ一般のユーザーにとっては何の役にも立たないじゃないか!」と言われれば、「私もそう思います。ただ、そういう技術が生まれている、ということを伝えたかったのです」と答える。

 と、いろいろとあったので、あらためて自分で読み直してみたところ、やや頭に血が上っていて、「MPEG-2の実装技術がどんどん向上してきた」というあたりの説明が不足しているのに気づいた。さらに、MPEG-2を目の敵にしたように受け取られたのであれば、それは謝る。ごめんなさい。決して、MPEG-2を憎んでいるワケではない。「MPEG-2の実装が優れている」ということは、私の中では大前提なのである。

 いちばん言いたかったのは、「実装が追いついていないために過小評価されるMPEG-4だが、そのポテンシャルは、本当はMPEG-2を凌ぐものなのだ」ということなのである。昔から今のように美しいMPEG-2ばかりが存在したワケではない。いろんな人達が努力して、時間をかけてこうなったのだ。本当はMPEG-4も同じ道をたどることができるハズなのだが、「MPEG-2の普及がMPEG-4の進化を止めてしまっている」という皮肉な現状もある。そういったことを知っていただきたかった。

 といったあたりで、「そういう記事のつもりだった」ということを、ご理解いただけるだろうか? 「な−んだ、役に立たない話だったのね」って? いや、私は「規格というものの考え方」としてはとても重要なことだと思っているんだが……。当然、「俺にとって重要なのは『今』だから(もしくは互換性だから)MPEG-4のことは考えたくない」という人がいてもいいし、むしろ、そういう考え方をする人のほうが普通だと思っている。

スポーツって、何が違うの?

 さて、では本題である。DivXでスポーツを圧縮するには……ということで、いろいろと試してみた。が、いつものことながら、DivXは困る……。わざと汚いエンコードをして、差がわかりやすいものにしようとしても、ヤツは汚くならないようにしてしまう……。結局、一般的なことばかりになってしまった。

 まず、「スポーツ」といった場合、他と何が違うのか?

  • 1.動きが速い
  • 2.スポーツ番組の録画であれば、カメラの切り替えがあり、アップと引きの両方を考えなければならない

 といったところだろうか? まあ、2はそんな特別なことではない。となると、速さについていくこと、つまり、フレームをキープすることが重要であると、無理矢理定義しよう。

 本当はそんな単純な話でないことはわかっているが、そうとしか言いようがない)。以前も書いたが、私は、圧縮に「これがベスト」はない。「何を優先させるか」があるだけである。

 そこでサンプルを使っていろいろ違いをお見せしようと思っていたのだが、そこには2つの問題があった……。

  • 1.DivXは、なんとかクオリティを保とうとするので、差が出にくい。低ビットレートに設定しても、設定値よりはるかに高いところで設定されてしまうこともしばしばである。
  • 2.素材の問題。テレビの野球中継を取り込んで試していたが、それを掲載するワケにはいかない。そこでバッティングセンターに行ったが、撮影を拒否された。公園で子供が走っているのを撮影させてもらおうと思ったが、変態オヤジだと思われて警戒された。

……ということで、とりあえず、今回の画面サンプルとしては、アップルコンピュータのiMovieに付属しているチュートリアルのDVファイルを使わせていただくことにする。私はMac版のDivXでQuickTime経由でテストしていたので、そのあたりはお許しいただきたいものである……。

 まず、基本的な設定項目について軽く触れていきたい。

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