コラム
» 2004年05月31日 19時35分 UPDATE

VAIOに何が起こったか――type U篇 (1/3)

PCユーザーが今回のVAIO製品群の中で一番気になっているものはtype Uだろう。それだけにさまざまな論評やレビュー記事を見かけるが、それらを読んでいて思うのは、type Uを無理やり普通のパソコンらしく扱おうとして、ある種の矛盾にぶちあたっているのではないか、ということだ。

[小寺信良,ITmedia]

 VAIO第2章製品群の中で、PCユーザーがモノとして一番気になっているもの、それがtype Uだ。ネーミングから察するに、超小型PCとして2002年4月にデビューした「バイオU」シリーズの流れを汲むものと考えていいだろう。

 初代バイオUは、低消費電力設計を主眼としてCPUにTransmeta Crusoeを搭載したため、PCとしてのパフォーマンスはさほどでもなかった。だが特殊配列のキーボードを搭載し、小さいながらもそこそこ使えるPCとして、筆者は高く評価している。ただ第3世代になってから、キートップをさらに小型化して標準配列にしてしまったため、とたんにつまらないマシンになってしまったという印象を持ったものだ。

 バイオUは、WindowsPCとしてはかなり変わったマシンであった。形だけ見れば普通のノートPCをギュギューッと小さくしただけのように見えるが、ケータイのように親指一本で文章が書けるIM「ThumbPhrase(サムフレーズ)」を搭載したり、文庫本のように画面を縦にできるなど、小さい筐体ならではの部分に、ちゃんと「思考」が感じられた。

「type U」に含まれる成分

 新しいtype Uに関しては、ハードウェアとして関心が高いこともあって、既にさまざまなメディアでいろんなことが言われている。だがどうもその捉えられ方は、このマシンをパソコンとして一生懸命使おうとして矛盾にぶちあたり、「うーむ」となっているような論調になっているように思える。

jn_vgnu50kb.jpg パソコンとしての体裁は一通り備えている

 とは言っても、type Uに積極的な関心を示すのは、やっぱりPC大好きっ子たちだ。それはやはり製品全体から発せられるオーラに、メカ好き野郎どもを呼び寄せる成分が含まれているからである。

 type Uをデザインしたのは、モバイルネットワークカンパニー デザインセンターの森澤有人氏。スイッチ部につなぎ目がない光学式マウス「PCGA-UMS5」、フタを閉じれば化粧品ケースを思わせる「CLIE PEG SJ33」、そして昨年末センセーショナルなデビューを果たし、「欲しいVAIO」復活のマイルストーンとなった「バイオ505エクストリーム」のデザイナーである。

 筆者は最初にtype Uを見たとき、そこに505エクスストリームと同じ匂いを感じた。いろんなものがロジカルにきちんきちんと整理され、ガシガシと合体して一つの世界を成す。すなわちそれが「メカ好き野郎どもを呼び寄せる成分」であり、それを次々に繰り出せる森澤氏の天分に舌を巻く。

 初めてバイオ505エクストリームが登場したとき、多くのメカ好き野郎どもは、「うおぉぉぉほっすいぃぃぃ。これでキーボードがこんなじゃなければ……」と思ったことだろう。そうなのだ、PCデザイナーとしての氏の弱点は、キーボードに対する「愛のなさ」なのかな、と思う。

 筆者の経験からすれば、基本的にエカキ(グラフィックス系の人間)は普通の人より、キーボードを使って文章を書かない。字ィ打つぐらいなら絵ェ書いた方が全然速いからだ。筆者もエカキからモノカキに転向するまでは、キーボードはショートカットの集合スイッチぐらいにしか感じなかったものである。

 type Uの折りたたみ式キーボードは、構造的な面で非常に興味深い。すでに同社ではクリエ用に折りたたみキーボードを作った実績があり、参考にもなっただろう。さらに今回はポインティングデバイスも含まれる割には、付属品としてコスト削減を迫られるなど、厳しい条件の中でかなり善戦している。

 だがそういうことをもろもろ飲み込んだ上であえて言うならば、このキーボードは実用に照らし合わせたとき、非常に使いづらい。その原因は、中央下部にある左右クリックボタンが高過ぎることにある。

 多くのPCユーザーは、漢字の変換にスペースバーを使う。だがこのスペースバーにピッタリ寸法を合わせた左右クリックボタンが高すぎて、スペースバーを押す際にクリックボタンに親指が当たる。うっかりすると、変換の際に一緒にクリックしてしまう。この不具合は、「あんまり期待しないけど普通に使えるキーボード」の限度を下回っている。

 PCデバイスにおいて、キーボードほど歴史が長いものは他にない。その起源は、PC本体よりも遙かに長いのである。そしてその歴史の長さによる多様化と洗練の繰り返しが、ユーザーの激しい視線にさらされる要因となっている。

 前途有望、新進気鋭のデザイナーに、こんなレガシーなデバイスのことでケチを付けるのは心が痛むが、たまには出先でまとまったレポートの一つも書こうかという、それほど大それた野望とも言えない程度の用途をこのキーボードの存在が厳しいものにしているのは事実だ。

キーボードいらないんじゃない?

 だが、もうこのキーボードは使わないという前提に立ってみると、意外なことにtype Uのコンセプトがはっきりと見えてくる。

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