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» 2004年09月21日 16時42分 UPDATE

勝手に連載!「IT at SEA」(海で使うIT)「最後まで動いていたのはTOUGHBOOKだった」──松下電器産業 TOUGHBOOKマリン仕様 CF-29を外洋で試す (1/2)

Panasonicが開発を表明していた「マリン仕様」のTOUGHBOOKがようやくお目見え。「夏が終わったのに“マリン”もないでしょ」というなかれ。マリンスポーツはこれからが快適なオンシーズン。ということで、外洋を帆走るヨットで使ってみた。

[長浜和也,ITmedia]

 かれこれ半年以上前に行われた松下電器産業のLet'snote新製品発表会の席上で、いきなり発表されたTOUGHBOOKの新製品開発表明。

 TOUGHBOOK、ときたところで集まっているコンシューマーのPC担当としては「ええっ、なにをいまさら」と思ってしまうところだが、さらに、「塩害に強いマリン仕様です」となったところで、多くの記者は「そ、それはわざわざご丁寧にどうもどうも」と引きに入ってしまった。「変なもの大好きー」の私をのぞいて。

 それから待つこと半年間。IT業界とは何ら関係のないボートショーで開発者にインタビューしたりして製品を待っていたが、夏も終わったところでようやくサンプルが登場。

 なんともタイミングよく、「いやー、一昼夜かけて八丈島に行くんだけどさー、いっしょにどう」という知人のヨット船長に、いや、私はいいからこいつを連れて行って、と「マリン仕様」TOUGHBOOKを手渡し、その塩っ気ぶりを試してもらうことにした。

kn_tbcfset.jpg 評価に協力してくれた「阿武隈」(ソレイユルボン、26フィート艇)のコックピット後部に設置したTOUGHBOOK「CF-29」 コックピットに設置する場合、まず場所が問題になる。ハッチ周りは出入りやフォアデッキに飛び出すためにクリアにしておきたいし、サイドはジブシートの取り回しとウインチ操作のためにこちらもクリアにしておきたい。となると空いているのがオーナーチェア付近。「阿武隈」ではオートパイロットを設置してデットスペースになっている一角に、百円ショップで購入した木枠を台座にして、それぞれをロープで縛って固定した

 船で使うPC、というと真っ先に思いつく利用法が「GPSプロッター」となる。この記事を読んでいるプレジャーボートスキッパーなら言うまでもないほど、いまではポピュラーなほど。自分のノートPCを船に持ち込んでGPSユニットと組み合わせて運用しているユーザーも多い。

 でも、ノートPCは塩水にとてもデリケート。とくに最近の高性能なノートPCは冷却のために多くのスリットを筐体に設けているため、なおさら潮風を吸い込みやすい。

 当然、そういう「海にひ弱な」ノートPCはキャビンの奥に設置して、船位を確認するたびにコックピットから下りていくことになる。中で操船するパワーボートや複数で操船するヨットならそれでもいいが(ただ、「酔っちゃうから」といってキャビンでチャートワークを嫌う船乗りも多い)、シングルハンドのヨットはなかなかそうも行かない。

「青年士官は青天井」とは旧海軍の言葉であるが、何が起こってもすぐに対処できるように、シングルハンドのヨットは、できることならコックピットで作業を続けていたい。

 しかし、そこは露天の甲板。チョット海が荒れたり外洋にでたりすると、四六時中、甲板にあるものは波をザンブザンブと浴び続けることになる。とてもノートPCなんぞ置ける状況ではない。

 これまでも、アメリカズカップなどで、レース艇が使ってきた実績もあるが、その日のレースが終われば、清水で塩気を洗い流して電蝕が起こらないようにしている。

 長期にわたるクルージングでは「PCを洗うなら自分の顔を洗いたい」というぐらい貴重な清水。そういう事情から、「マリン仕様」のTOUGHBOOKの存在はブルーウォーター志向のヨット乗りにはとても貴重な存在だ。

 さて、PCをGPSプロッターとして使う場合、必要になるのが電子海図とチャートワークソフトの組み合わせ。このあたり、「ITmediaなのに、わざわざこの記事をクリックした」ベテランスキッパーにはよく知られているところではあるが、おさらいのために簡単に説明しておこう。

 電子海図として「業界的に」もっとも一般的なのは海上保安庁が販売しているENC。情報量は紙海図とほぼ同等で、初級士官泣かせの「海図改正データ」も簡単にアップデートできる。ただし、本船向けとして販売されているため価格3万〜7万円台と、とてつもなく高い。

 このENCをつかってGPSプロッターとするには、ENC対応のチャートワークソフトが必要になる。こちらも市販のソフトがいろいろとあるが、ENCの豊富なデータを十分使い切るためや、オートパイロットと組み合わせた自動操船など高度な機能を盛り込んでおり、なかなか高額。

 このあたりはPCでいうと「地デジ対応して水冷で複数同時録画にも対応した大型液晶セットのハイエンドデスクトップPC」という位置付けみたいなもので、ENCとチャートワークソフトの価格もそのクラスのPCにほぼ等しい。

 PC用GPSプロッターのエントリークラスに相当するのが「PEC」(Personal Electronic reference Chart)と呼ばれる日本水路協会が発行しているもの。紙の海図がENCに相当するものとすれば、PECの精度はヨットモータボート用参考図に相当するものと見ていい。

kn_tbpec.jpg 航海中、やっとの思いで撮影したPEC動作画面。激しく揺れる船上でノンフラッシュ撮影のため、画面は乱れているが、利島沖あたりから黒潮に東に遠く流されて、まったく進まなくなったさまが分かる貴重なカットだ

 ただし、航路目標や浅い水深線など必要は情報は網羅されているし、もちろんGPSプロッター機能も有している。海図改正には対応していないが、ユーザーが自分で画像つきのデータを登録できる機能を持っているので、航海に影響する改正や航路情報などを登録しておけばかえって柔軟に対応できる。

 PECは、いわば海図データとチャートワークソフトがいっしょになったもので、PECだけを購入すればそのままPCをGPSプロッターとして利用できる。PCでいえば「Celeronと統合型チップセットを採用したバリュークラスPC」という位置付けになるが、これで価格は1万2600円とENCを利用する場合と比べるとはるかに安い。

 価格は安く機能十分のPECの問題はカバーされているエリアが限定されていること。利用者の多い関東や北部伊豆諸島、瀬戸内海、九州北部などはあるが、長期巡航者に人気の高い日本海側や北海道などはない。また、今回の巡航先である八丈島も含まれていないのだ。

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