2006年はWoodcrestとAverillで勝負するインテル──4コアはやっぱり来年

» 2006年03月22日 16時23分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 インテルは現在進めている製品開発の状況やロードマップの現状を説明する場を定期的に設けている。今回紹介されたのは、先日発表された低電力版デュアルコアXeon(開発コード名Sossaman)をはじめとするサーバとワークステーション向けCPUの動向だ。そのキーワードはIDF Spring 2006で行われたインテルCEOのパット・ゲルシンガーによる基調講演でもアピールされていた「消費電力の軽減」「ビジネス・クライアント・プラットフォーム“Averill”」であった。

 インテルの阿部剛士マーケティング本部本部長が「過去を振り返って反省の意味もこめて」と述べながら冒頭に映したスライドには1993年にPentiumが登場してから1命令を実行するのに必要となる消費電力が確実に増えていく状況が示されていた。

阿部氏の説明によると、この消費電力の増加に最も早く危機感を示したのが日本のインテルであったという。当時の顧客からは、このまま消費電力が増えつづければ「発電所がもう1つ必要になるのでは?」(阿部氏)といわれるほどだったという。その状況を解決したのがPentium Mで、消費電力は「1993年のPentiumまで戻すことができた」(阿部氏)

 今年になって登場した65ナノメートルプロセスルールも、消費電力を抑えるためにプロセス技術で実現できる対策という位置付けで紹介。すでに登場しているIntel Core Duoもこれから登場する予定の「Woodcrest」「Conroe」(共に開発コード名)もパフォーマンスが向上しながら消費電力が低くなることを阿部氏は強調する。「Pentium 4が登場してから熱が高いと言われてきたが、ここにきて(インテルは)少し反省した」(阿部氏)

次期デスクトップPC向けCPUとして登場する予定のConroeはパフォーマンスが40%向上して消費電力は40%ダウン。Woodcrestにいたってはパフォーマンス向上が80%に対して消費電力は35%カット、とインテルは性能と消費電力の関係を強くアピールする

 平野浩介マーケティング本部デジタル・エンタープライズ統括部長も「日本が誇る地球シミュレータは1000万ワットの電力を使い年間の電気代は10億円もかかるそうだ」と、ここでも現代の拡大するデータセンターにおいて消費電力の低減は必須であることを強調してからXeonのロードマップを説明する。そこで映し出されるスライドでも、最も大きく示されているのはクロックでもコアの数でもなく消費電力を表すワット数である。

 パフォーマンスが求められる最上位のラインアップにおいては2006年第2四半期に登場するDemoseyコアのXeonまでは「性能を追及する」(平野氏)ため、その消費電力は130ワットと現在のPaxvilleデュアルコアのXeonと同程度である。しかし、同じ2006年後半に登場する予定のWoodCrestからは消費電力80ワットを実現するという。

平野氏が示した2007年に向けたXeonのロードマップ。消費電力の削減がインテルのトレンドであるが「あるタイミングで消費電力が上がる」と平野氏がいうように、2007年に登場予定の4コアXeon「Clovertown」(開発コード名)で120ワットと上昇する。メインストリーム向けのClovertownは動作クロックを下げて80ワットを実現する予定。超高密度サーバ向けXeonでは「この(消費電力の)レベルで4コアは2007年では無理」(平野氏)という事情から2006年後半に登場する低電力版Woodcrestが引き続いて投入される

 このほか、岡本隆志マーケティング本部ビジネスクライアントプログラムマネージャーからは、新しいビジネス・クライアント・プラットフォーム「Averill Professional Desktop」(以下 Averill)の概要も紹介された。すでに、2004年12月の金融アナリスト向けプレゼンテーションでその存在が明らかになっていたAverillは、Centrinoと同じくCPUやチップセット、ネットワークコントローラ、ソフトウェアで構成されるプラットフォームを構成するブランドの名称である。岡本氏はAverillの構成要素としてCPUにConroeを、チップセットにはIntel 965とICH8-DOの組み合わせを、ネットワークコントローラには開発コード名“Nineveh”と呼ばれるギガビットイーサネットを挙げている。

 岡本氏は続いてConroeとIntel 865の組み合わせて実現される新しい機能を紹介。Intel Clear Video TechnologyやIntel Advanced Smart Cache、Intel Smart Memory Accessとともに、重要な技術として「Intel Active Management Technology」(以下 Intel AMT)「Intel Virtualization Technology」(以下 Intel VT)を取り上げている。ビジネス向けプラットフォームの技術としてこれまでも繰り返し登場しているIntel AMTとIntel VTであるが、岡本氏はこの2つの技術を組み合わせた応用例として「エンベディット IT」(以下 EIT)を紹介した。

 EITではクライアントPCに立ち上げた2つの仮想マシンのそれぞれが「ユーザー・パーティション」「サービス・パーティション」として機能する。ユーザー・パーティションはユーザーが使うアプリケーションが導入される通常のワークマシンとして機能するが、サービス・パーティションはユーザーから見えない管理用のマシンとして機能する。この領域にセキュリティや管理用のアプリケーションを導入し、例えば情報管理部門からリモートでアクセスしてクライアントマシンの管理操作を行うことが可能になる。

 この例はAverillらしいビジネス用途の利用方法であるが、「BestBuyなどの米国のPC小売り業界においてもサービス業務で利益をあげるようになっている。Intel AMTの応用としてサポートセンターから直接クライアントPCにアクセスする」(阿部氏)と、コンシューマーPCとしての応用例として情報管理部門をPCベンダーのサポートセンターに置き換えた利用方法もインテルは提示している。

Averill Profesional Desltopを構成するハードウェアとソフトウェアの要素。デュアルコアCPU「Conroe」にチップセット「Intel 965 + ICH8-DO」、ギガビットイーサコントローラ「Nineveh」のハードウェアにIntel VTやIntel AMTといった機能が実装される

Intel VTとIntel AMTを組み合わせた応用例「エンベディット IT」(EIT)では、仮想PCにユーザーから見えない「サービス・パーティション」を構築して、そこにセキュリティやリモート管理につかうアプリケーションを導入する。なお、インテルは「EITの箱を提供し」(阿部氏)て、サービス・パーティションで動作するアプリケーションやOSはシステム構築ベンダーが提供する

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