いま、中国MP3メーカーが本腰を入れつつあるのがMP4プレーヤーをはじめとした携帯動画プレーヤーだ。MP3プレーヤーほどではないにしても、店には数多くの製品が並び、秋葉原でも中国から輸入されたMP4プレーヤーを見かけるようになった。しかし、中国の街中で携帯動画プレーヤーを使っている人はいまだ見たことがない。さて、将来売れるジャンルとなりうるのだろうか?
普及の原動力となる動画コンテンツだが、(ここでも、ことの善悪は別として)中国では映像コンテンツも音楽コンテンツと同じ状況にある。街中でDVDやVCDが安価に販売されているし、Webでも海賊版コンテンツを扱うサイトが多数ある。P2Pソフトも映像ファイルがダウンロードできる(残念ながらそれらコンテンツには著作権的にNGなものもあるけれど)。
街中のDVD/VCDショップでも映画と並んで“MTV”と称する歌のプロモーションビデオを詰めたVCDやDVDがたくさん販売されている。通勤通学の途中にプレーヤーの画面を短時間楽しむ、そういった使い方が中国人には容易に思いつくだろう。供給されるコンテンツの量を考えると携帯動画レーヤーが中国で普及する条件はそろっているといえる。
ところで中国ではどのコーデック、どの動画フォーマットをサポートする機種が多いだろうか。この答えはさっきから回りくどく「携帯動画プレーヤー」と表現しているあたりに実はヒントが隠されている。もちろんMP4プレーヤーはすでに出荷されていて種類も多い。しかし、それ以上に多いのが謎の動画拡張子「.mtv」「.amv」をサポートする“MP3”プレーヤーなのだ。
取材時点において(編注:この取材は2006年初頭に中国にて行われている)「.mtv」「.amv」の技術仕様はほとんど謎のベールにつつまれていて詳しいことが分からない。確実にいえるのは、「amvはmtvの次世代フォーマットで圧縮率が高い」ことだ。試しに動画ファイルをmtvからamvに変換するソフト「MP3 Player Utilities」を使い調べてみた。解像度が96×64ドット、128×96ドットのmtvファイルを同じ解像度のamvファイルに変換してみると、amvに変換したあとのファイルサイズはmtvの18分の1になる(ただし、画面品質はmtvがいい)。動画をamvフォーマットに変換すると120分の映画が256Mバイトに収まることが新しいコーデックのポイントである。
このコーデックをサポートするチップは珠海矩力集成電路設計有限公司(Actions Semiconductor Co.)の「ATJ208x」「ATJ209x」だけだ。外国のチップはこのフォーマットをサポートしていない。この現状からすれば中国独自の動画フォーマットと考えていいだろう。
中国で出荷されている多くの携帯動画プレーヤーがこれをサポートしているが、ネットをチェックしてみてもmtvやamvフォーマットのプロモーションビデオや映画を無許可でアップデートしているサイトが多数ある。しかし、中国以外ではあまり普及していない。圧縮率が高い新技術の登場は大いに喜ばしいことであるが、一方でこの中国国内でしか知られていないフォーマットが海賊版コンテンツの温床となると、その状況が国外に知られにくくなるという側面があることを留意しておくと話のタネにいいかもしれない。
多くのMP4プレーヤーがサポートするコーデックはDivX、そしてASFとなる。ただしメーカーによって(とくに中小メーカーで)サポートするコーデックに関する説明がなく不明瞭な製品も多い。
ちなみに、中国製ポータブルビデオプレーヤーも多く扱っているあきばお〜ではほとんどがDivX4もしくはDivX5に対応しているということなので、いきなりamvやmtvファイルに直面し困惑することはないようだ。
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