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» 2006年05月26日 11時57分 UPDATE

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:“中国人による中国人のための”ウォークマンを日本人が使ってみた

「中国生産」の「中国限定販売」ウォークマンがなんと“ソニー”からリリースされた。中国で売らんがためにに企画されたといわれるその実力とは。

[山谷剛史,ITmedia]

中華ウォークマンとは

kn_chinawkpop.jpg 中国ではこんな感じでウォークマンを売っている

 ソニーが“ご当地限定”ウォークマン「CE-P」を投入した中国では、(合法性はともかく)あふれかえるmp3ファイルを背景にポータブルオーディオプレーヤーが数え切れぬメーカーから販売されている。リサーチサイトの「中関村オンライン調研中心」の調査によると、ポータブルオーディオプレーヤーにおける“ソニーブランド”の人気は中国3メーカーに次ぐ第4位の支持を得ている(ちなみに中国においてアップルはソニーの下になる)。中関村オンライン調研中心の別の調査によると、ソニーの全現行モデルの平均価格はポータブルオーディオプレーヤー全メーカーで最も高く、中国で最も人気があるメーカー「紐曼」(Newman)の全モデル平均価格の倍以上となっている。

 そのような状況でソニーが投入したのが、ソニーブランドを冠した“中国人による中国人のための”ウォークマン「CE-P」だ。CE-Pは中国市場のニーズを取り込みながら、デザインや機能を日本のソニー本社コネクト事業部門と一緒に協力しながら商品化したものだという。ほかのウォークマンの型番が(中国においても)“NW”で始まっているのにCE-Pというまったく異なる型番を新たにつけているあたりからも、その力の入れ方がうかがえる。

 CE-Pシリーズには「CE-P17」「CE-P15」「CE-P13」の3モデルがある。型番は搭載メモリの容量によって異なり、CE-P17が1Gバイト、CE-P15が512Mバイト、CE-P13が256Mバイトとなっている。色は金色、銀色、黒、赤の4色が用意されており、黒は全モデルで、金色は最上位モデルのCE-P17のみ、銀色と赤はCE-P15、CE-P13でそれぞれ選ぶことができる。それにしても金色や赤というのがいかにも中国らしい。

 気になる価格は、中国ソニースタイルのサイトでCE-P17が1199元(1万7000円強)、CE-P15が999元(1万4000円強)、CE-P13が799元(約11500円)となっている。ほかのウォークマンを見ると、ウォークマンEシリーズの1Gバイトモデル「NW-E407」が1999元(2万8000円超)、「NW-E307」が1499元(約2万1500円)となっている。従来の1GバイトモデルよりCE-P17は安いが、一方で512Mバイトモデルの「NW-E405」は799元(約1万1500円)、NW-E305が899元(約1万3000円)とCE-P15のほうが高い。とはいえ、後で詳しく紹介するが、画像表示や録音もできる充実した機能を考えれば、この程度の価格差ならお買い得だろう。ちなみに一般都市住民の月給ベースで考えると、512Mバイトモデルですら「給料の半分」もする。日本ならノートPCを買うような高い買い物なのだ。

ご当地限定ウォークマンは中国人好みの機能が満載

kn_chinawkzen.jpg 中国限定ウォークマン「CE-P」は名刺より一回り小さいシャープなデザイン。赤いモデルもかわいくて、かつ目立つので日本でも人気が出るかもしれない

 CE-Pシリーズのフットプリントは一様に75.7×45.5ミリで名刺サイズ(90×55ミリ)より気持ち小さめ。値段のわりに多機能だが、明らかに安っぽいと思わせる質感ではない。中国の若者には携帯電話やMP3プレーヤーを首に掛けるファッションが好まれるので、このような底にストラップを通すデザインとなっている。ソニーエリクソンが全世界向けに発売したウォークマンケータイにも似たようなデザインがある。

 CE-Pシリーズと日本でも販売されている全世界モデルと何が異なるのか? 異なる機能をリストアップし、CE-Pで採用された独自機能が中国で受け入れられるのか検証してみたい。ワールドワイドモデルとCE-Pを比較して異なっていたのは以下の機能だ。

(1)SonicStageやCONNECT Playerを介さないファイル転送

(2)ATRAC3を未サポート

(3)歌詞表示機能

(4)FMラジオの録音再生機能

(5)マイク端子と内蔵マイクによる録音機能

(6)カレンダー表示機能

(7)画像ファイル(JPG、BMP)表示機能

 (1)と(2)の機能が中華ウォークマンの最も大きな違いだろう。SonicStageやCONNECT Playerのソフトウェアは梱包物にも入っていない。SonicStageが使える使えないというレベルではなく、SonicStageとは完全に切り離していると考えてもいい。これは中国市場で主流の「ドラッグ&ドロップ」操作による使い勝手を提供するためだ。SonicStageが用意されていないのでCE-Pはプレイリストや「アーティストリンク」などのインテリジェントな機能に対応しない。型番「NW」が“Network Walkman”の略と考えると、CP-EはSonicStageなどが一切使えない「ネットワーク未対応」であるために「NW」の型番をつけていないとも考えられる。

 従来のモデルでは、SonicStageを使うことでエンコードされたATRAC3ファイルの著作権を保護し、かつCDの音質からあまり劣化させずに済んでいた。CE-Pシリーズは、中国で広く普及しているMP3やWMAだけをサポートすることで多機能ながら手軽な価格を実現し、その代償として高音質を切ったのである。「聞ければいい。音質は気にしない」という考えで、かつファッションアイテムでもあるポータブルオーディオプレーヤーを買うなら「ソニー」というブランドものがいい、という考えのユーザーにヒットするわけだ。

kn_chinawkkashi.jpg 中華ウォークマンになくてはならない「歌詞表示機能」

 (3)の歌詞表示機能も中国モデルだからこその機能といえる。中国の音楽コンテンツは(合法かはともかく)ネット上に散在するMP3などの音声フォーマットのほかに、WMVなどの動画ファイルやFlash(SWFファイル)でも配信されている。動画ファイルを使った音楽データが普及している背景として、歌詞つきのプロモーションビデオ(中国ではそれを“MTV”と呼ぶ)が日本以上に、それこそ音楽好きでない普通の人々にまで浸透していることが挙げられる。歌と一緒に歌詞が表示されるのは、中国の人々にとって日本人が想像する以上に評価される付加価値なのだ(ちなみに歌詞表示についてはLRCファイルを用いる)。

 (4)から(7)に関する機能は簡単にいえば「多機能化」というキーワードで中国人にヒットする。ファミコン「100in1」ソフトを産み出した中国では、とにかく多機能な製品が好まれる傾向にある。例えば簡易ビデオが撮れるデジカメの広告では「写真撮影機能!ビデオ撮影機能!USBメモリ機能!画像表示機能!しめて4in1!」といった具合にむりやりその多機能性をアピールしている。CE-Pシリーズに組み込んだ「録音」「画像表示」「カレンダー」機能はどれも実用的なものだ。FMチューナーで受信するだけでなく録音機能があるのも多機能好きには見逃せない。もし中国人向けに多機能さをアピールするという思惑があるのであれば、画像表示機能のついでにテキストファイル表示機能があっても中国の消費者は大いに喜ぶだろう。

 “中国人による中国人のためのウォークマン”CE-Pシリーズは中国人が考える「ポータブルオーディオプレーヤーに必要な機能」を十分に備えた中国人の心をくすぐる製品であった。ネットワークウォークマンNWシリーズとは異なる路線の「安価で機能豊富」なCEシリーズに今後どのような製品がリリースされるのか、筆者ならずとも多くの中国人にとって実に気になるシリーズが登場したといえるだろう。

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