インタビュー
» 2006年06月27日 11時35分 UPDATE

“USB自爆ボタン”復活の仕掛け人たち

一時は予約販売まで開始されながら突如生産中止となったあの「音入り自爆ボタンDX」がハブ機能を搭載して登場する。“自爆ボタン”復活までのいきさつをその仕掛け人たちに聞いた。

[後藤治,ITmedia]
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 自爆ボタン――子供のころに特撮や戦隊アニメを見て育った人間にとって、“ジバクボタン”という言葉の響きは、郷愁と既視感をないまぜにしたような不思議な感覚を呼び起こす。誰も“本物”なんて見たことがないはずなのに、自爆ボタンと聞けば誰もがすんなり「アレか……」と頭に思い浮かべる。そんな特定の世代が持つ共有意識をうまく具現化した商品が、太郎商店の「自爆ボタン」シリーズだ。


og_jibaku_005.jpg ザリガニワークス 代表取締役 武笠太郎氏

 武笠太郎氏と坂本嘉種氏による太郎商店ブランドは、1999年のデザインフェスタに出展した初代「自爆ボタン」をきっかけに本格的に活動を開始。以後「自爆ボタンDX」「コレジャナイロボ」「コレジャナイロボ(敵)」など、次々とおバカグッズを開発していく。しかし、今でこそ数カ月待ちが当たり前なほど人気を集める同ブランドの商品だが、当時はそれほど売れていたわけではない。

武笠氏 「デザインフェスタで注目を浴びたことは確かなんですが……こう、人が集まってきて、自爆ボタンを手にとって、ああでもないこうでもないと騒いだり笑ったりしているわけですよ。で、ひとしきり楽しんでから“あー面白かった、じゃ”と帰っていく。なんですかそれ、あなたたち買わないんですかと(笑)」

 しかし、太郎商店の商品がライブドアデパートで販売されるようになると状況が一変した。このWeb販売は多くのblogで話題となり、自爆ボタンやコレジャナイロボはユーザーから大きな反響を呼んだ。

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 例えば「欲しかったのはこれじゃなーい!!」でおなじみのコレジャナイロボは、モノという観点で見れば手作りの木製ロボットにすぎないが、その本質が目指すのは“ああ、あるある”という共有意識が生み出す(他人との)コミュニケーションだ。武笠氏は「コンセプトはみんなが共有できる話題を提供すること。それがインターネットという容れ物にかっちりはまったのかもしれない」(武笠氏)と振り返る。

 これらのヒットを契機に武笠・坂本両氏はザリガニワークスを設立し、玩具の企画・デザインをメイン業務とする会社として独立。そして翌2005年、自爆ボタンシリーズ最新作となる「音入り自爆ボタンDX」をライブドアと共同で開発、予約販売を開始した。

og_jibaku_002.jpgog_jibaku_003.jpgog_jibaku_004.jpg 自爆ボタンシリーズ

突然の開発中止

 この音入り自爆ボタンDXは、2本のトグルとキースイッチを解除することでLEDが点灯し、さらにシールドされた赤いボタンを押すことにより爆発音が鳴るというギミックを備える。ただの卓上アクセサリーだった従来モデルとは異なり、USB端子からの電源供給、LEDの点灯、そして内蔵スピーカーの効果音と、今まで以上に自爆感を演出するガジェットとして話題を集めた。しかし一時は予約販売まで開始されながら突如として開発を中止、それまでの予約をすべて取り消した“いわくつき”の製品である。

 そして今回、既報の通りキューブおよびソリッドアライアンスの協力を得て「音入り自爆ボタンDX・USB2.0ハブ」として再登場することになったわけだ。

――昨年の開発中止でがっかりした人は多かったと思います。中止した理由はなんだったのでしょうか。

武笠氏 「急に(ライブドア側から)開発をストップしたいと一方的なかたちで伝えられました。こちらとしてもどうこうできる立場ではないので、予約したユーザーさんへのフォローをきちんとしてくれるなら、しょうがないと。非常に残念でしたし、期待してくれていた人には申し訳ないですが」

――今回はキューブとソリッドアライアンスをパートナーに加えての“復活”となりました。その経緯を教えてください。

武笠氏 「私はザリガニワークスとして独立する前はキューブで働いていまして、(キューブの)酒井社長は自分の育ての親のようなものでもありますし、今でも何かあるたびに相談しに行くわけです。もともと自爆ボタンをキューブさんから出す話はあったのですが“(キューブとして)商品化するにはまだまだだね”と何度かやりとりをしていました。そんな時にちょうどライブドアさんのほうから話があったので、それなら先にやってみようと。結局出ませんでしたけどね。そこでまた相談に行って……」

og_jibaku_007.jpg キューブ 代表取締役 酒井利夫氏

酒井氏 「実はザリガニワークスが企画したものをキューブとして出すのは今回が初めてではありません(編集部注:コレジャナイロボキーホルダーなど)。また、キューブはザリガニワークスに一部出資しているグループ会社でもあります。ただ、最初に自爆ボタンの話を聞いたときは、やはり“インディーズ”感が強すぎて再考の余地があると思いました。製品自体の面白さやセンスといった“純度”は非常に高いと感じましたが、それをメーカーとして商品化するのは別の話ですから」

 しかし酒井氏はやがて「自爆ボタン」が一定の知名度を獲得しつつあること、同社が掲げる“Toy to Gadget”のスローガンに合致するアイテムであること、そして音入り自爆ボタンの復活にかける武笠氏の熱意から、自爆シリーズの製品化を模索し始める。大手のメーカーがまねできない新しいおもちゃを作ること、それが頭にあった。今回搭載されたUSBハブ機能も酒井氏が提案したアイデアだ。

酒井氏 「ただの卓上アクセサリーではなく、机の上に置くのならその理由付けが欲しかった。今はPCのない環境が想像できないほど一般化しているし、デジタルガジェットとしてUSBハブ機能があればいいんじゃないかと武笠くんと話し合った」

武笠氏 「ほかには自爆ボタンに接続している機器の電源を落としたり、それこそデータを全消去するという案もありました。このUSBハブ機能はオフィスで使う場合には便利ですね。はたから見ると変なボタンを押して遊んでいるように見えても“コレUSBハブですから”と言い訳すれば怒られなくてすむ。それに色々な機器のつながっている先が自爆ボタンっていう図もちょっとドキドキします(笑)」

og_jibaku_008.jpg ソリッドアライアンス代表取締役 社長兼CEO 河原邦博氏

 これらの話し合いの中でUSBハブ機能を搭載した自爆ボタンのイメージが固まっていった。しかしその一方でまだ解決できていない課題もあった。ザリガニワークスとキューブは「音入り自爆ボタンDX・USB2.0ハブ」をおもちゃメーカーとして企画・製品化することはできてもPC周辺機器のノウハウを持たない。つまり製品サポートや流通面で不安があった。そこに登場したのがPC関連機器のおバカグッズで知られるソリッドアライアンスだ。

河原氏 「キューブさんとは以前から交流があったのですが、きちんとした提携関係を結ぶのは今回が初めてです。USBハブ機能を搭載した自爆ボタンの話はまさに渡りに船という感じでした。弊社は“PC to Toy”というスローガンで、無味乾燥なPC周辺機器をおもちゃ売り場のようにしてやろうという野望を持っていますから」

 こうしてザリガニワークス、キューブ、ソリッドアライアンスの協力体制のもと「音入り自爆ボタンDX・USB2.0ハブ」の発売が決まった。もちろん3社の関係はこれで終わるものではない。すでに速報として紹介したが、今年の夏には「コレジャナイロボ」USBメモリが第2弾として予定されている。またここでは明らかにできないが、製品化予定の複数のモックアップも見かけた。

 取材の最後に出てきたそのとんでもない動きをするモックを眺めて、声をあげたりゲラゲラと笑う人たちに囲まれながら、記者の頭の中には「大のオトナがなにを……」という言葉が駆けめぐっていたのだが、オトナが真剣にバカなことを考えるからこそ、本当に面白いものができるのだろう。たぶん。

 実際の製品レビューは追って掲載する。

og_jibaku_009.jpg おもちゃ箱のような会議室で愉快な悪だくみをするオトナたち

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