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» 2006年07月24日 11時39分 UPDATE

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:中国の貧しい村にITはあるか? (1/2)

経済成長著しくITも都市では普及している中国だが、農村部など貧しい村にITはあるのだろうか? 国家級貧困県に登録された場所に行くとともに、都会の中の村も訪ね、そこにITがあるか探してみた。

[山谷剛史,ITmedia]

 経済成長著しい中国だが、統計上だけで13億人いる中国人の半分以上は貧しい農村部に住んでいる。中国における高級な日本製品の購入者は、全人口の半分以下の都市部の、その中でも平均以上のリッチな層の人々だ。一方で貧しい村の人々には日本製品とは縁が滅多にあるものではないが、中国IT事情をさまざまな角度から理解すべく、中国の貧しい地域に着目してITを探してみた。

奥地の貧しい地域にITはあるか?

 まずは都市部と経済的格差が激しい農村でITがあるかどうか確認すべく農村でのIT普及具合をチェックする。ただし広い中国、農村はいくらでもあるので行き先は絞らないといけない。低所得地域の目安として中国政府が認定する「国家級貧困県」というものがある(県というのは「省」の下の「市」の下にあたる行政区画。例えばXX省XX市XX県といった階層になる)。国家級貧困県の最新の定義によると、その地域における平均「年収」が400元(約6000円)以下の県のことをいう。そこの住民にとって、PC購入は日本人がマイホームを購入するときの金銭感覚に近いかもしれない。そんなところに果たしてITは存在しうるのだろうか?

 ネット上で公開されている国家級貧困県の一覧を見ると、中国西南の最果てにある雲南省に国家級貧困県が一番多く集中している。その雲南省にある国家級貧困県の村をいろいろ訪れることにした。

 まず足を踏み入れたのが国家級貧困県の県庁所在地。どこの県庁所在地でも舗装道路がひかれ街の中心には立派な建物がいくつもある。その姿はごく普通の地方都市だ。多くの県庁所在地で、聯想(レノボ)のPC販売店やインターネットカフェもある。インターネットカフェでは何十台ものPCが並び、若者がチャットソフト「QQ」を使っていたりゲームをしたりしている。

kn_chikekikencyo.jpg 貧困県といえど県庁所在地は普通の地方都市といった風情

 PCの販売店があるということは、国家級貧困県であっても少なくとも県庁所在地であれば個人で購入できる層が存在することを示している。

 県庁所在地からは県の各地に向かうバス路線が設けられている。そのバスターミナルではPCを使ってチケットの発券が行われている。バスターミナルの周りにはホテルがあり、公衆IP電話屋があり、そしてスーパーがある。貧困県といえども県で1番の高級ホテルはPCで客室を管理しているところが多いし、公衆IP電話屋は当然のことながらPCが使われていることになる。また、スーパーのレジ端末がPCであることも多い。触れたことがない人にとってもPCは「そう遠からぬ存在」であるといえる。

 「国家級貧困県の県庁所在地」におけるPC以外の、例えばデジタル家電の普及状況はどうなっているだろうか。中国で普及著しい携帯電話の販売店や携帯電話の使用料金を支払うためのキャリアの店が必ず存在する。銀行にはATMがあり、ゲームセンターもよく見かける。DVDやVCDは専用プレーヤーもPC用再生ソフトも多数売られている。メディアも、海賊版ではあるものの品揃えは潤沢。DVD、VCDを利用する環境は一般家庭ではごく普通に用意されている。国家級貧困県とはいえ、県庁所在地であるならばIT関連製品は生活で身近な存在となっているのだ。

kn_chikekibus.jpg バスターミナルのカウンターにPCを設置してチケットを発券している
kn_chikekicten.jpg 携帯電話の料金を支払う拠点となるキャリアの事業所もある。ここは中国電信のカウンター

kn_chikekicafe.jpg 中国は雲南省のチベットエリアにある貧困県県庁所在地でみかけたネットカフェ
kn_chikekiakincafen.jpg ネットカフェでは子供たちがゲームやチャットに興じる

 ただし県庁所在地からバスに乗って、国家級貧困県の行政区分の末端である「村」に向かうとその状況は劇的に変わってしまう。建物は小さく、そして老朽化が著しく、とてもPCがあるような風景でなくなる。実際、その路線の終点となるバスターミナルであっても、ほとんどの場合、そこにはPCを使った発券システムがない。

 村に商店はいくつかあるものの、そこで売られているのは「酒」「ソフトドリンク」「カップラーメン」程度だ。VCDはおろか「電池」(!)が売られている商店すらないのが一般的な国家級貧困県にある村の現実だ。裕福な家庭はテレビを所有しているが、一般的な家庭では概して家にテレビを持たない。その土地の住民が「おらが村」でPCに触れることは少ないのだ。ただ、ほとんどのお役所にはPCがあると聞く。当然ながら固定電話が引かれているのでお役所PCではインターネットにアクセスすることが可能である。

 自宅にTVを持たない村民でもバスに乗って県庁所在地に行けばIT関連製品に触れる機会はある。ではすべての「人民」がバスターミナルでPCを使い、PCがなんであるのかを知っているわけでない。というのも、県庁所在地まで行く財力もないし、また買い物は地元の青空市場で済ますため、県庁所在地まで行く必要がない人民が結構いるからだ。そういうわけで、国家級貧困県の県庁所在地から少しでも離れた村にはIT製品に触れたことがない人民がごく普通に存在する。

kn_chikekihekichi.jpg バスに乗って村に向かう。とたんにその風景はこのように変わってしまう
kn_chikekiakipara.jpg 貧困県の村で見かけたTV用のパラボラアンテナ

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