「ATIブランドは強化したい」──AMDが買収メリットを説明

» 2006年07月27日 16時07分 公開
[ITmedia]

 米AMDによるカナダATI Technologiesの買収で、来日した両社の幹部が7月27日、都内で買収について説明した。AMD幹部は「ATIブランドは世界的に認知されている。積極的に活用し、むしろ強化していきたい」と語った。

photo 左からAMDのリチャード執行副社長、日本AMDのユーゼ社長、ATIテクノロジーズジャパンの森下正敏社長、ATIのヘグバーグ上級副社長

 買収は7月24日に発表。買収総額は約54億ドルで、今年第4四半期までに完了する見込み。売上高の単純合計で73億ドルに上る半導体大手が誕生する。

 「CPUにGPU、チップセットなど大きな領域を1社でカバーできる初めての企業になる」──AMDのヘンリー・リチャード執行副社長兼ワールドワイドセールス/マーケティング最高責任者)はこう話し、両社の統合は成長とイノベーションを達成するために必要だと説明する。

 事業領域で補完できる部分も多い。AMDはOpteronでサーバ・ワークステーション領域での存在感を高めており、ATIは任天堂の次世代機「Wii」やデジタル家電向けグラフィックスなどを手掛ける。「買収にあたり、ATIのラインアップを精査したが、シナジーをうまない製品はない」(リチャード執行副社長)とみる。

 ワークステーション用グラフィックスチップ「FireGL」も、AMDにとっては「すばらしい追加」(リチャード執行副社長)であり、ATIにとっても「AMDのエンタープライズ向け営業力はFireGLにとってプラス効果になる」(ATIのリック・ヘグバーグ上級副社長)と見込む。

 展開地域も補い合える。主力市場の欧米に加え、AMDは中国やラテンアメリカといったエマージング地域にも販路を持ち、ATIは日本で強い。ヘグバーグ上級副社長は「ATIは日本を重要視している。日本におけるATIブランドの地位もAMDに評価されたと思う」と話す。

photo 両社の強みと補完関係

 「ATI」ブランドについては、リチャード執行副社長はAMDのマーケティング責任者でとして「積極的に使い、むしろ強化していきたい」と存続させる方針を明らかにした。

 両社の成果となる新しいプラットフォーム製品は2007年に登場する予定。ヘグバーグ上級副社長によると「性能はそのままに省電力化するソリューション」として、まずノートPC向けに提供する計画だ。

 ATIが提供しているIntel向けチップセットは従来通り販売していくという。ATIは「チップセットへの投資開発も進めていく。ATIの方針は従来通りであり、一切変わらない」(ヘグバーグ上級副社長)とし、ロードマップにも変更はないという。AMDとしても「Intelプラットフォームはサポートしていく。ユーザーの選択肢を尊重するからだ」(リチャード執行副社長)という立場だ。

 ただ、ATIはIntel製CPUに対応したチップセットを製造するのに必要なバスのライセンス契約を更新しないという報道もある(関連記事参照)。過去争われたAMDとIntelとの訴訟の和解で、AMDが今後Intelプロセッサのバスを使わないことが条件になった経緯もあり、AMD側は現時点では詳細についてはコメントできないとした。

 研究開発は当面、ATI部隊は現在と同じカナダのトロントを拠点に進めていく方針。日本法人の統合などは今後進める。

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