PDAはまだまだ死なない──日本HP「iPAQ rxシリーズ」元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2006年12月13日 09時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

 事業撤退や市場縮小など、景気の悪い話題の多いPDA市場だが、昨年あたりから携帯電話機能と一体化したスマートフォンの登場で、再び活性化しつつある。携帯電話機能を持たないピュアPDAについては、しばらく新製品が途絶えていたが、11月30日に日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)が新製品3機種を発表した。これら3機種は、従来のiPAQとはかなり異なった印象を与える製品に仕上がっている。

マルチメディア機能にフォーカスした3モデルが登場

 iPAQは、ヒューレット・パッカードがコンパックコンピュータから継承したWindows CE/Windows Mobile系OSを採用したPDAのブランドだ。スマートフォンを除く純然たるPDAの多くが姿を消す中、継続的に製品を供給してきた実績を持つ。現在のiPAQは、セキュリティを強化した企業向けのhxシリーズと、マルチメディア機能にフォーカスしたコンシューマー向けのrxシリーズで構成されるが、今回発表された新製品は、いずれもrxシリーズに分類される。とはいえ、今回のモデルはMessaging and Security Feature Packを搭載したことで、Exchange Serverと直接同期をとることができるなど、ビジネスにも十分利用可能なポテンシャルを持つ。

 3機種中のハイエンドである「HP iPAQ rx5965 Travel Companion」は、iPAQとして初めてGPS機能を内蔵した3.5インチQVGA(320×240ドット)液晶採用モデルだ。アンテナなどの出っ張りもなく、携帯性に優れる。残る2機種、「HP iPAQ rx4540 Mobile Media Companion」と「HP iPAQ rx4240 Mobile Media Companion」は、従来のiPAQより一回り小さな2.8インチ液晶(同じくQVGA)を採用した製品で、後者は同社の直販チャンネル「HP Directplus」でのみ販売されるモデルだ。rx5965が幅120.5×奥行き76ミリと大型だが16.5ミリと薄いのに対し、rx4540とrx4240は幅102×奥行き63.5ミリと小さいが、17.5ミリとちょっと厚みのあるボディだ。いずれも丸みのあるボディで、ポケットなどに入れやすいが、ストラップホールがないため、うっかり落としてしまわないか、心配になる。

左が上位モデルのHP iPAQ rx5965 Travel Companion、右が下位モデルのHP iPAQ rx4240 Mobile Media Companionだ

型番rx5965rx4540rx4240
CPUSamsung SC32242(400MHz)
フラッシュROM2GB+128MB1GB+128MB128MB
SDRAM64MB
液晶サイズ3.5インチ2.8インチ
画面解像度320×240(65536色)
メモリカードスロットSDメモリーカード/MMC×1
GPSSiRFStarIII GSC3F
無線LANIEEE802.11g/b(WEP/WPA/802.1x対応)
BluetoothBluetooth 2.0+EDR(Class 2)
ナビゲーションボタン
スクロールホイール
バッテリー容量3.7ボルト 1700mAh3.7ボルト 1200mAh
駆動時間12時間/5.5時間(非通信時/GPS使用時)11時間(非通信時)
本体サイズW120.5×D76×H16.5ミリW102×D63.5×H17.5ミリ
重量(バッテリー込み)約170グラム約127グラム
OSWindows Mobile 5.0 software for Pocket PC 日本語版 with Messaging and Security Feature Pack
HP Directplus価格5万9850円4万20000円3万2550円

iPAQで初めて横画面をデフォルトに採用

新iPAQでは標準で横画面を採用する。ワンタッチで立て画面表示に切り替え可能だ。写真はrx4240にクリップ・カバーを装着したところ

 これら3機種に共通した最大の特徴は、iPAQとして初めて横向き画面をデフォルトにしたことだろう。一般に、動画のフォーマットが横長であることを考えれば、コンシューマー向けのPDAが横向きであることは不自然ではないのだが、ちょっとUMPCを連想させるようでもあり、新鮮な印象だ(ハードウェアボタンにより、ワンタッチで画面を縦向きに回転させることが可能だ)。

 機能面での共通した特徴は、全モデルが無線LAN(IEEE802.11g/b)とBluetooth 2.0+EDRを内蔵しており、両方のインタフェースを同時に利用できることだ。バッテリー駆動のハンドヘルド機器である以上、802.11gに対応したからといって10Mbpsを超えるようなデータレートを利用できるわけではないだろうが、アクセスポイントなどとの互換性向上は期待できるかもしれない。

 Bluetooth 2.0+EDRも同様で、iPAQでサポート可能な最大データレートは3Mbpsまでだが、1Mbpsを超えるデータレートの3G携帯電話などがすでに運用されていることを思えば、データレートの引き上げはあっていい(携帯電話でEDRに対応した製品がまだないのだが)。サポートするプロファイルも広範だが、A2DP対応が見送られているのは残念だ。

新iPAQのBluetoothがサポートするプロファイル

General Access Profile/Service Discovery Application Profile/Serial Port Profile/Generic Object Exchange Profile/File Transfer Profile/Dial-Up Networking Server Profile/LAN Access Profile/Object Push Profile/Personal Area Networking Profile/Basic Printing Profile/Headset Profile/Handsfree Profile/Human Interface Devic


メモリ容量を除いて内部の仕様は共通化

 また今回発表された3機種は、CPUやメモリでも共通点が多い。いずれもCPUにはSamsungのSC32442(400MHz)を採用し、64MバイトのSDRAMと128MバイトのフラッシュROMを搭載する(これに加えrx5965には2GバイトのフラッシュROMを、rx4540には1GバイトのフラッシュROMを内蔵)。これまでiPAQにおいてSC32442は、比較的低価格のモデルを中心に採用されてきた。しかし、従来ハイエンドモデルに搭載されてきたPXA270プロセッサがアグレッシブな省電力動作で、動作クロックほどの機敏な動作が期待できなかったのに比べ、キビキビとした動作が期待できる。

 システムの拡張に利用できるのはSDメモリーカードスロットが1基のみ。SDIO対応だが、SDHC対応ではない。無線LANとBluetoothを標準搭載したことで、SDIOの用途はほぼPHSカード(SIIのAH-S101S)の利用に限られてくるが、公式発表はないものの、どうやら利用できるようだ。基本的にrx4540はrx4240に1GバイトのフラッシュROMスペースを追加したモデルで、約1万円の価格差がある。SDメモリーカードの低価格化を考えると微妙な価格差だが、PHSカードで通信しながら大容量ストレージを利用したければrx4540、PHSカードを利用しない、あるいはPHSカードと大容量ストレージが排他利用となって構わなければrx4240という切り分けになりそうだ。

 本体接続インタフェースも、この3機種からUSBの標準ミニB端子に統一された。ホストPCとの同期だけでなく、充電もUSB経由で行う(充電時間は約3時間)。パッケージに付属するACアダプタも、出力端子がUSBコネクタになっているタイプだ。汎用品のケーブルが使えるため、出先でケーブルを忘れた場合も、簡単に調達できるし、一般的なポータブルHDDなどと同じケーブルですむから荷物を減らすことができる。

 次のページから、それぞれのモデルを細かく見ていこう。

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