第3回 プリンタ6モデルの各種機能を徹底的に見比べるダイレクト/単機能プリンタ06年モデル徹底攻略ガイド(1/3 ページ)

» 2006年12月13日 16時00分 公開
[榊信康,ITmedia]

 本特集では、最新のA4ダイレクト/単機能プリンタを5回に分けて検証する。前回は、今シーズン注目の6モデルを予算3万円以下/ミドルハイクラス、予算2万円以下/ミドルレンジクラスの2つのカテゴリーに分けてインプレッションをお届けした。紹介したモデルは以下の通りだ。

本特集で検証するA4プリンタ
予算3万円以下/ミドルハイクラス
Colorio PM-D870 エプソン ダイレクトプリンタ 2万3000円前後
PIXUS iP6700D キヤノン ダイレクトプリンタ 3万円前後
HP Photosmart D7360 Printer ダイレクトプリンタ 日本HP 2万3000円前後
予算2万円以下/ミドルレンジクラス
Colorio PM-G850 エプソン 単機能プリンタ 1万8000円前後
PIXUS iP4300 キヤノン 単機能プリンタ 1万8000円前後
HP Photosmart D7160 Printer ダイレクトプリンタ 日本HP 1万4910円

 特集の第3回は、これら6モデルの機能と省スペース性を横並びで比較していく。家庭用のフォトプリンタとして考えた場合、基本的には画質が重視されるわけだが、各社ともプリントエンジンが成熟してきて、画質は一定水準をクリアしている。そのため、機能面の差異は製品を選ぶうえで重要だ。ここでは、各種機能をチェックしてみたので、総合的な判断の材料にしてほしい。


インクカートリッジとプリントエンジン

 インクカートリッジは、iP4300のみ染料4色(CMYBk)と顔料1色(Bk)による5色構成を採用。残る5モデルは薄いシアンと薄いマゼンタを含む染料6色構成だ。いずれも各色独立式カートリッジを採用しており、なくなった色のインクだけを買い換えればよい。基本的には染料6色インクのほうが写真の描写は有利だが、iP4300はインク滴を1ピコリットルと5ピコリットルで打ち分けることで、写真の画質にも配慮している。また、印刷コストが低さと、顔料ブラックインクによる文字のシャープさは魅力だ。

 インクを吐出するノズル数が多ければ、印刷速度が高速になるのは確かだが、一概にノズル数の多い製品ほど高速とは言えない。印刷解像度も同様で、最高解像度が高い製品ほど高画質なわけではないので注意が必要だ。これは、メーカーごとに印刷方式が異なるためで、エプソンの製品はノズル数も最高解像度もキヤノンの製品より低いが、印刷速度や画質が劣るわけではない。各モデルの印刷速度は第4回、画質は第5回で検証する予定だ。

 また、品質が保証されるわけではないが、参考までにメーカー純正写真用紙を使用した場合の耐候性も覚えておきたい。この分野に注力しているエプソンは、染料インクながらアルバム保存で200年、耐光性で50年、耐オゾン性で25年をうたう。キヤノンは、アルバム保存で100年、耐光性で30年、耐ガス性(オゾンや窒素酸化物、硫黄酸化物を含む)で10年としている。日本HPは、2つの写真用紙で耐候性が違う。推奨のアドバンスフォト用紙は耐光性約50年、プレミアムプラスフォト用紙は耐光性耐100年以上という。

 なお、メーカーごとのプリンタドライバの比較については、複合機特集の「第3回 複合機8モデルの各種機能を徹底的に比較する」を参照してほしい。

PM-D870:インクは染料6色構成。耐候性を向上した「つよインク200」を採用している。搭載するインクカートリッジは新タイプのIC50系だ。カートリッジの交換時期には自動的にキャリッジが交換位置に移動するが、メニューから呼び出すことも可能だ
iP6700D:インクは染料6色構成だ。装着ミスやインク切れを確認できる赤色LEDを搭載している。トップカバーを開くと、キャリッジが自動的にインク交換位置に移動する。左に見えるレバーはヘッド固定用なので、インク交換時に上げないように注意してほしい
D7360:インクは染料6色構成で、ブラックのインクカートリッジだけ大型だ。インクカートリッジとプリンタの本体には、符号が印字してあり、対応したスロットにインクカートリッジを装填する仕組みだ。さらに切り欠きを設けることで、誤装填を防止している

PM-G850:PM-D870と同様に染料6色のIC50系インクを使用している。耐候性を向上した「つよインク200」だ。インクタンク/プリントヘッド一体型のキャリッジを採用する。カートリッジの交換には専用のボタンがあり、ボタンを長押しするとヘッドクリーニングを行う
iP4300:染料4色(CMYBk)と顔料1色(Bk)による5色構成を採用する。左から2番目の大きなカートリッジが顔料ブラックだ。インクのLEDは、正しく装着された状態で点灯するほか、残量が少なくなるとゆっくりと点滅し、交換時期には高速で点滅する
D7160:D7360と同様、インクカートリッジとプリントヘッドを分離したオフキャリッジ方式を採用する。染料6色インクは本体の前面から交換できる。インクカートリッジは本体に固定し、インクは搬送チューブを介して内部のプリントヘッドへ送られる仕組みだ

インクカートリッジとプリントエンジン
モデル名 PM-D870 iP6700D D7360
印刷最高解像度 5760×1440dpi 9600×2400dpi 4800×1200dpi
インク構成 染料6色(C LC M LM Y Bk) 染料6色(C PC M PM Y Bk) 染料6色(C LC M LM Y Bk)
総ノズル数 540ノズル 3072ノズル 3900ノズル
最小ドロップサイズ 1.5ピコ 1ピコ 5ピコ
L判1枚最速印刷(公称値) 25秒 39秒 11秒
L判写真1枚コスト 21.6円 23.2円 19.5円
保存性 アルバム保存200年 アルバム保存100年 耐光性50年※
モデル名 PM-G850 iP4300 D7160
印刷最高解像度 5760×1440dpi 9600×2400dpi 4800×1200dpi
インク構成 染料6色(C LC M LM Y Bk) 染料4色(C M Y Bk)+顔料1色(Bk) 染料6色(C LC M LM Y Bk)
総ノズル数 540ノズル 3584ノズル 3900ノズル
最小ドロップサイズ 1.5ピコ 1ピコ 5ピコ
L判1枚最速印刷(公称値) 25秒 32秒 11秒
L判写真1枚コスト 21.6円 17.5円 19.5円
保存性 アルバム保存200年 アルバム保存100年 耐光性50年※
※アドバンスフォト用紙の場合、プレミアムプラスフォト用紙は100年以上の耐光性をうたう

給紙/排紙トレイの構成

 給紙と排紙の機構は、使い勝手を左右するポイントだ。キヤノンのiP6700DとiP4300はリアとフロントに1つずつ給紙トレイがある2Way給紙機構により、A4普通紙とはがき(もしくは写真印刷用のL判用紙など)を別々にセットできる。2系統の給紙トレイにさまざまな用紙をセットできることに加えて、自動両面印刷機構も備えており、使い勝手は非常によい。

 日本HPのD7360とD7160は、2系統の給紙トレイと排紙トレイをすべて前面に設けているため、用紙へのアクセスがスマートに行える。ただし、片方のトレイはL判とはがき専用のフォトトレイとなっており、給紙容量が約20枚と少ない。用紙種別と用紙サイズの自動認識センサを内蔵し、セットした紙に応じて自動的に設定が行える点はアドバンテージだ。なお、オプションで自動両面印刷ユニットが用意されている。

 エプソンのPM-D870とPM-G850は、シンプルな1系統の給紙トレイを採用する。リアから給紙してフロントに排紙する一般的な機構だ。自動両面印刷には対応していない。

PM-D870:リアにA4普通紙を約120枚セットできる給紙トレイを設けている。給紙トレイのカバーは用紙サポート兼用で、引き伸ばして使用する仕組みだ。L判ならば給紙したままでカバーを閉められる
iP6700D:リアとフロントの2Way給紙に対応。いずれもA4普通紙を約150枚セットできるため、大量に印刷するさいも用紙交換の手間が省ける。自動両面印刷機構を標準で装備しているのもポイントだ
D7360:給紙トレイ、排紙トレイとも前方に配置している。給紙トレイは下段のA4対応トレイのほか、上段にフォトトレイを装備。両方に別の用紙を給紙しておくことで、目的に応じた使い分けが可能だ

PM-G850:送紙はリアからフロントに抜けるJ字パスのみ。給紙トレイ、排紙トレイともカバーを装備し、防塵に努めている。ちなみに排紙カバーは自動開口はしないので、印刷前に開く必要がある
iP4300:iP6700Dと同じ機構で、2系統の給紙と自動両面印刷が可能だ。排紙トレイを閉じたままだと、エラーが表示されて印刷が一時停止されるため、誤って印刷して用紙を損失にすることはない
D7160:D7360と同様、HPプリンタの特徴である前面給排紙機構を採用する。給紙は2系統のトレイを用意している。上段のフォトトレイは電動式で、印刷時は自動的に奥へと引き込まれる仕組みだ

給紙/排紙トレイの構成
モデル名 PM-D870 iP6700D D7360
給紙トレイ 前面×1 前面×1、背面×1 前面×2
給紙容量 前面:約120枚 前面:約150枚、背面:約150枚 前面1:約100枚、前面2:約20枚※
排紙トレイ 前面 前面 前面
自動両面印刷 × 別売
モデル名 PM-G850 iP4300 D7160
給紙トレイ 前面×1 前面×1、背面×1 前面×2
給紙容量 前面:約120枚 前面:約150枚、背面:約150枚 前面1:約100枚、前面2:約20枚※
排紙トレイ 前面 前面 前面
自動両面印刷 × 別売
※前面トレイ2はL判とはがきのみ給紙可能

CD/DVDレーベル印刷

 CD/DVDレーベル印刷は、日本HPのD7360、D7160を除く4モデルが搭載している(日本HPは下位モデルのD5160のみCD/DVDレーベル印刷に対応)。PM-D870とiP6700DはPCレスでのレーベル印刷も可能だ。なお、エプソンやキヤノンの複合機では、レーベル面のコピーや、メモリカード内の画像に手書き文字を加えてレーベル印刷が行える機能を持つものもあり、機能が充実している。レーベル印刷の機能を重視するなら、複合機もチェックするとよいだろう。

PM-D870:スタンドアロンでの運用を想定しているだけに、メニューの設定項目も詳細だ。通常の印刷設定はもちろん、CD/DVDの内径(18〜46ミリ)、外径(114〜120ミリ)の指定も行える
iP6700D:スタンドアロンでも印刷可能だが、凝ったレイアウトはなく、1コマのみの印刷となる。CD/DVDの外径は114ミリ、116ミリ、118ミリから、内径は23〜25ミリ、38〜41ミリから選べる

PM-G850:ダイレクト印刷は行えない。PCからの印刷設定はPM-D870と同様だ。レーベル印刷用ソフトは従来と同じ「EPSON Multi-PrintQuicker」を付属しており、凝ったデザインにも対応できる
iP4300:ダイレクト印刷に対応しない以外は、iP6700Dと同様の機能を持つ。付属ソフトの「らくちんCDダイレクトプリント for Canon」を使えば、凝ったデザインのレーベル面を作成できる

CD/DVDレーベル印刷
モデル名 PM-D870 iP6700D D7360
PCから印刷 ×
ダイレクト印刷 ×
モデル名 PM-G850 iP4300 D7160
PCから印刷 ×
ダイレクト印刷 × × ×

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