前回は、エプソン、キヤノン、日本HPが今秋に投入した複合機の注目モデル8台を、予算5万円/ハイエンドクラス、予算4万円/ミドルハイクラス、予算3万円/ミドルレンジクラスの3つに分けて紹介した。ピックアップしたモデルは、以下の通りだ。
| 本特集で検証する複合機 | ||
|---|---|---|
| 予算5万円/ハイエンドクラス | ||
| Colorio PM-A970 | エプソン | 5万円前後 |
| PIXUS MP960 | キヤノン | 4万5000円前後 |
| 予算4万円/ミドルハイクラス | ||
| Colorio PM-A920 | エプソン | 3万8000円前後 |
| PIXUS MP810 | キヤノン | 3万7000円前後 |
| HP Photosmart C7180 All-in-One | 日本HP | 3万5000円前後 |
| 予算3万円/ミドルレンジクラス | ||
| Colorio PM-A820 | エプソン | 2万8000円前後 |
| PIXUS MP600 | キヤノン | 2万8000円前後 |
| HP Photosmart C5180 All-in-One | 日本HP | 2万5000円前後 |
今回は、これら8モデルの機能や省スペース性を比較していこう。各メーカーともユーザーインタフェースの共通化が進んだことで、操作パネルのボタン類や液晶パネルのメニュー構成は違いが少なくなっている。それ以外も同一メーカーの各モデルで共通点が多いため、細かい差異がある場合は、そこを重点的に紹介したい。また、プリンタドライバとスキャナドライバ、マークシートでダイレクト印刷を行うインデックスシートについてはメーカー別に述べる。これらの要素は、メーカーが同じならモデルによる違いはほとんどないからだ。
インクはいずれも独立式カートリッジを採用しており、なくなった色のインクだけ買い換えればよいため経済的だ。6色染料インクを採用するエプソンと日本HPに対して、キヤノンは文字印刷の黒色の品質にこだわり、顔料ブラックを用意している。その代わり、MP960以外は染料4色構成になっており、シアンとマゼンタの薄いフォトインクは使用しないのだが、インクドロップサイズの打ち分けや最小インクドロップを1ピコリットルと小さくすることで、写真画質も高品位に保つ。インクカートリッジの数が少なければ、買い換えや買い足しが楽という利点もある。エプソンは上位モデルから下位モデルまで同じ6色染料インクを用いて写真画質に注力している格好だ。実際の印刷速度や画質の違いは次回以降で紹介する。
昨今では、各社とも印刷した写真が色あせないように耐候性も重視してきた。特にエプソンは、染料インクながらアルバム保存で200年(耐光性50年、耐オゾン性25年)をうたっている。キヤノンはアルバム保存で100年(耐光性30年、耐ガス性10年)という。日本HPは、2つの写真用紙で耐光性が異なり、推奨のアドバンスフォト用紙では約50年、プレミアムプラスフォト用紙は耐100年以上としている。
PM-A970:耐候性が強化されたPM-Gインク(つよインク200)を使用。染料6色の構成で、ブラック/シアン/ライトシアンは前面左下、マゼンタ/ライトマゼンタ/イエローは前面右下から装着する。前面からインクを装着できるため、換装は容易だ
MP960:装着ミスやインク切れを確認できる赤色LED搭載のインクカートリッジを使用。BCI-7e系の染料6色と、顔料BkのBCI-9BKで構成される。インク構成、ノズル数などは、昨年のMP950と同じだ。1ピコ/5ピコリットルのインクドロップで印刷する
PM-A920:PM-A970と同様、染料6色のPM-Gインクを使用。耐候性を向上した、つよインク200だ。カートリッジの装着と交換は前面から行えるPM-A970と異なり、本体の上部を持ち上げて内部にアクセスする一般的なスタイルを採用する
MP810:インク構成は、BCI-7e系の染料4色と顔料BkのBCI-9BKを用いる。今年の新モデルで唯一、シアンとマゼンタを1ピコ/2ピコ/5ピコリットルのインクドロップで印刷。2ピコリットルの追加により、シアンとマゼンタのノズル数が増えた
C7180:独立カートリッジの染料6色で、ブラックのみ大容量となっている。交換も簡単で、ヘッドメンテナンスで消費したインクの循環リサイクルや、ヘッド側のタンクに用紙1枚分のインクと常に蓄えているのがポイントだ
PM-A820:独立カートリッジの染料6色、PM-Gインク(つよインク200)を採用。プリントエンジン全体を見ても、上位モデルのPM-A920と同等で、写真画質にこだわりが感じられる。最小1.5ピコリットルのAdvanced-MSDTで印刷
MP600:インク構成はMP810とまったく同一。染料4色で赤色LED付きのBCI-7e系と、顔料BkのBCI-9BKという全5色だ。インクドロップは1ピコリットル/5ピコリットルの2サイズ。シアンとマゼンタのノズル数がMP810より少ない
C5180:SPTプリントエンジンは染料6色の独立カートリッジで、交換も簡単。インク容量が少なそうに見えるが、実際はかなり長持ちする印象。インク経路の気泡除去とインクリサイクルが必要に応じて自動実行される| インクカートリッジとプリントエンジン | ||||
|---|---|---|---|---|
| モデル名 | PM-A970 | MP960 | PM-A920 | MP810 |
| 印刷最高解像度 | 5760×1440dpi | 9600×2400dpi | 5760×1440dpi | 9600×2400dpi |
| インク構成 | 染料6色(C LC M LM Y Bk) | 染料6色(C PC M PM Y Bk)+顔料1色(Bk) | 染料6色(C LC M LM Y Bk) | 染料4色(C M Y Bk)+顔料1色(Bk) |
| 総ノズル数 | 1080ノズル | 3584ノズル | 540ノズル | 4608ノズル |
| 最小ドロップサイズ | 1.5ピコ | 1ピコ | 1.5ピコ | 1ピコ |
| L判1枚最速印刷(公称値) | 19秒 | 29秒 | 23秒 | 18秒 |
| L判写真1枚コスト | 19,6円 | 23.2円 | 21.2円 | 16.3円 |
| 保存性 | アルバム保存200年 | アルバム保存100年 | アルバム保存200年 | アルバム保存100年 |
| モデル名 | C7180 | PM-A820 | MP600 | C5180 |
| 印刷最高解像度 | 4800×1200dpi | 5760×1440dpi | 9600×2400dpi | 4800×1200dpi |
| インク構成 | 染料6色(C LC M LM Y Bk) | 染料6色(C LC M LM Y Bk) | 染料4色(C M Y Bk)+顔料1色(Bk) | 染料6色(C LC M LM Y Bk) |
| ノズル数 | 3900ノズル | 540ノズル | 3584ノズル | 3900ノズル |
| 最小ドロップサイズ | 5ピコ | 1.5ピコ | 1ピコ | 5ピコ |
| L判1枚最速印刷(公称値) | 11秒 | 25秒 | 24秒 | 11秒 |
| L判写真1枚コスト | 19.5円 | 21.4円 | 17.5円 | 19.5円 |
| 保存性 | 耐光性50年※ | アルバム保存200年 | アルバム保存100年 | 耐光性50年※ |
使用してみて意外に重要だと感じるのが、給紙/排紙トレイの仕様だ。給紙部が2系統あれば、コピー用のA4普通紙と写真印刷用のL判用紙などを別々にセットできるため、使い勝手がよい。ただし、機種によっては各給紙トレイにセットできる用紙種別やサイズが限られるため注意が必要だ。たとえば、キヤノンの3モデルは2系統の給紙トレイにさまざまな用紙をセットできるが、エプソンのPM-A970や日本HPのモデルでは制限される。また、低価格帯のPM-A820は前面の給紙トレイを採用せず、1系統のみの給紙としている。用紙を効率的に使える自動両面印刷ユニットは、キヤノンの3モデルとC7180が標準で装備するほか、PM-A920はオプションで対応する。
給紙容量も重要だ。給紙容量が多ければ、大量の書類や写真、年賀状印刷時に用紙を補給する回数が減る。給紙容量は、日本HPの2製品がやや少なめだが、2系統の給紙トレイをいずれも前面に配置しているため、用紙交換のハンドリングは良好だ。また、日本HPの2モデルは用紙種別と用紙サイズの自動検知センサを搭載しており、セットした用紙に応じて自動的に印刷設定をしてくれる点は他社にないメリットと言える。
| 給紙/排紙トレイの構成 | ||||
|---|---|---|---|---|
| モデル名 | PM-A970 | MP960 | PM-A920 | MP810 |
| 給紙トレイ | 前面×1、背面×1 | 前面×1、背面×1 | 前面×1、背面×1 | 前面×1、背面×1 |
| 給紙容量 | 前面:約150枚、背面:約120枚 | 前面:約150枚、背面:約150枚 | 前面:150枚、背面:150枚 | 前面:約150枚、背面:約150枚 |
| 排紙トレイ | 前面 | 前面 | 前面 | 前面 |
| 自動両面印刷 | × | ○ | 別売 | ○ |
| モデル名 | C7180 | PM-A820 | MP600 | C5180 |
| 給紙トレイ | 前面×2 | 前面×1 | 前面×1、背面×1 | 前面×2 |
| 給紙容量 | 前面1:約100枚、前面2:約20枚 | 前面:約120枚 | 前面:約150枚、背面:約150枚 | 前面1:約100枚、前面2:約20枚 |
| 排紙トレイ | 前面 | 前面 | 前面 | 前面 |
| 自動両面印刷 | ○ | × | ○ | × |
CD/DVDレーベル印刷機能は、日本HPの2モデル以外が採用している。エプソンやキヤノンのモデルは、PCからの印刷に加えて、メモリカードなどからのダイレクト印刷やレーベル面コピーにも対応しているため、使い勝手はよい。キヤノンのモデルは、メモリカード内の画像に手書き文字やイラストを加えてレーベル印刷が可能だ。エプソンのPM-A970に関しては、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブを搭載しており、メモリカードの画像をCD-R/RWメディアに保存したうえで、CDレーベル印刷が行えるというソリューションを提供している。PCを使わずに、写真データをバックアップできる点に魅力を感じるなら要注目だ。
PM-A970:排紙トレイ上部のCD/DVDガイドを押し込むと、前方にスライドしてくる。再び押し込むと格納される仕組みだ。付属するCD/DVDトレイの挿入は手軽で、印刷メディアの内径と外径を微調整できる
PM-A920:前面のCD/DVDガイドは電動式で、操作パネルのボタンで開閉する。レーベルコピーや印刷メディアの内径と外径の微調整に対応する。付属ソフトは従来同様「EPSON Multi-PrintQuicker」
MP810:メディアのセット機構はMP960と同じで、メモリカード画像と手書き文字、イラストでレーベル印刷する機能も持つ。付属ソフトは従来と同じ「らくちんCDダイレクトプリント for Canon」だ| CD/DVDレーベル印刷 | ||||
|---|---|---|---|---|
| モデル名 | PM-A970 | MP960 | PM-A920 | MP810 |
| PCから印刷 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ダイレクト印刷 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| レーベルコピー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| モデル名 | C7180 | PM-A820 | MP600 | C5180 |
| PCから印刷 | × | ○ | ○ | × |
| ダイレクト印刷 | × | ○ | ○ | × |
| レーベルコピー | × | ○ | ○ | × |
PCで利用するプリンタドライバは3社3様だ。タブを切り替えながら行う基本的な印刷設定の仕方は変わらないが、設定内容の一覧性はエプソンのドライバがよい。もっとも、キヤノンと日本HPのドライバも基本的には分かりやすく、大きな不満は感じないだろう。キヤノンのモデルは、用紙種類や印刷品質に応じた高精度なICCプロファイルが付属するのが特徴だ。日本HPは、用紙センサの搭載により用紙種別や用紙サイズの設定をプリンタ任せにできるほか、手動での選択にも対応する。ちなみに、最高解像度での印刷設定は、メニューの詳細設定でしか選べないことがある点を覚えておきたい。
エプソン:従来機から改良され、画面レイアウトと詳細設定関連の項目が整理された。設定一覧を別ウィンドウに分離したことで、メイン画面でどのタブを開いていても、現在の設定内容を確認できるので使いやすい。色補正などの詳細設定も別ウィンドウで開く
キヤノン:従来のデザインと機能を踏襲している。各モデルごとに、用紙種類や印刷品質に応じた高精度なICCプロファイルが付属する。基本設定タブの情報量が少ないため、今後は基本設定タブで現在の設定内容を一通り確認できるようになってほしいところだ
日本HP:昨年のドライバ画面から、タブ画面が7枚から4枚に減って見やすくなった。通常の印刷設定は「印刷機能のショートカット」タブで完結する。8通りのタスクから印刷目的を選ぶが、ユーザー設定の登録と選択が可能になったのも強化点として挙げられるCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.