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» 2006年12月22日 08時00分 UPDATE

元麻布春男のWatchTower:Vista販売開始について思うアレコレ (1/2)

個人向けには2007年1月30日にリリース予定のWindows Vistaだが、すでにMSDNやボリュームライセンスでの提供は始まっている。Vistaについてアレコレ思うことをつづってみた。

[元麻布春男,ITmedia]

ついにリリースされたWindows Vista

ht_0612vi01.jpg MSDNのホームページ

 昨年からβテストを繰り返してきたWindows Vistaがついに完成し、MSDNやTechNetでのダウンロードが開始された。有償の製品としての提供も、11月30日からボリュームライセンサー向けに始まっている

 一般ユーザーへの提供は1月30日を予定しているが、これはOEMなどにプリインストールPCを準備する時間を与えると同時に、ISV(Independent Software Vendor)やIHV(Independent Hardware Vendor)がアプリケーションソフトならびにデバイスドライバなどのVista対応を、製品版のOSで最終チェックする時間を与えたもの、とも考えることができる。言い換えると、このようなソフトウェアのVista対応は、少なからず必要になる。

 Windows 2000からWindows XPへの移行のさいは、わずか1年8カ月という間隔で行われたこともあって、アプリケーション、ドライバとも、ほとんど対応する必要がなかった。しかし、逆に言えばこれはWindows 2000とWindows XPの間に差が少なかった証であり、Windows XPはWindows 2000 OSR2などともからかわれた。その意味からすると、ソフトウェアの対応を必要とするWindows Vistaは、正真正銘の新バージョンと言ってよいのかもしれない。

 実際、Windows VistaはWindows XPと大きく異なる。それを象徴するのが、インストールサイズだ。クリーンインストールしたWindows XPのインストールサイズが約5Gバイトだったのに対し、Windows Vistaのそれはおおよそ2倍の10Gバイトにも達する。バイナリサイズが大きくなったということは、OSが重くなったと考えて間違いない。

Vistaが「重い」最大の理由

ht_0612vi02.jpg 開発当初はハイエンドのグラフィックスカードが必須だったWindows Aeroも、今では最新のチップセット内蔵グラフィックスならば動作するようになった

 「Vistaが重い」というと、そのGUIであるWindows Aeroの負荷が高いことが話題に上ることが多い。確かに、Aeroを利用するにはDirectX 9をサポートしたグラフィックスカードが必要であり、チップセット内蔵グラフィックスでは若干荷が重いようにも感じる。ところが、Aeroの仕様が発表されてから日時も経過したことでもあり、スタンドアロンのグラフィックスチップ(GPU)はもちろん、チップセット内蔵グラフィックスであっても最新の製品であれば、Aeroを十分動かすことができる。

 むしろVistaが重い理由は、バイナリサイズが大きくなったことでも明らかな、ロードモジュールの肥大だろう。ロードモジュールが大きくなったということは、それだけHDDとメモリの帯域を必要とするということにほかならない。これがVistaが重い最大の理由であり、古いマシンやモバイルノートでの利用を厳しくしている原因だと思う。

 だが、Vistaが重くなったのは、マイクロソフトだけの責任ではない。新しいWindowsをリリースするにあたり、PC業界、半導体業界は、新たな需要を創出するようなものを求めた。要するに、新しいPCが欲しくなるようなWindowsにしてくれ、という期待がマイクロソフトには寄せられていたはずだ。マイクロソフトはその期待に、重たいOSをリリースすることで応える必要があった。

マイクロソフトは業界の期待に応えたのか

 Windows XPがリリースされてからすでに5年。この間、確かにPCの性能は向上している。Windows XPがリリースされた当時、Pentium 4がリリースされたばかりで、主流は動作クロック1GHz前後のPentium IIIだった。それが今やPentium 4と同じマイクロアーキテクチャのCeleronのクロックが3GHzを超え、メインストリームはその次の世代のCoreマイクロアーキテクチャのデュアルコアCPUになろうとしている。デュアルコア化により、クロックは若干低下したが、それでも優に2GHzを超えるし、ハイエンド向けには4つのコアを内蔵したクアッドコアCPUまで出現した

 メモリの帯域は、CPUほど順調に伸びてはいないかもしれない。とはいえ、それでも不評のRambus DRAMに代えてPC133 SDRAMを使わざるを得なかったPentium IIIやPentium 4に比べれば、DDR2-800メモリが提供する帯域ははるかに広い。3.5インチHDDの記録容量も飛躍的に伸び、それに伴って性能も向上した。11月30日に開催されたビジネス向けのWindows Vista/the Office System 2007の発表会において、マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は、5年間のハードウェア性能の伸びを10倍と表したが、それは誇張ではない。

 このようなハードウェア性能の向上のおかげもあって、最新でなくても、最近のデスクトップPCで利用する限り、Windows Vistaの重さもそれほど気になることはない。10倍向上したハードウェア性能に見合ったOSに仕上がっている、といってよいのだろう。マイクロソフトは立派に業界の期待に応えた、ということになる。

XPが快適に動作するモバイルPCを買うラストチャンスか!?

ht_0612vi03.jpg 現時点で最速の超低電圧版CPUであるCore Duo U2500(1.2GHz)を搭載したHP Compaq nc2400

 だが、すべてのセグメントのPCが、順調に性能を10倍に伸ばせたわけではない。たとえば、1キロ級のモバイルノートPCの性能は、5年前と現在で、それほど大きく変わってはいない。このクラスのノートPCに使われることの多い超低電圧版CPUの動作クロックは、相変わらず1GHz前後にとどまったままだ。マイクロアーキテクチャの改善による性能の上積みはあるにしても、その性能向上率は、同様なマイクロアーキテクチャの改善があったうえで、クロックが3倍近くに伸びたデスクトップPCの比ではない。ここにきて、ようやく超低電圧版CPUにもデュアルコアCPUが登場してきたが、シングルコアに対してTDPも9ワットに上がってしまったため、まだ採用機種が限られる。

 HDDも3.5インチドライブが劇的な大容量化を遂げたのに対し、モバイルノートで使われる1.8インチドライブは、今も最大容量は80Gバイトどまりだ。1.8インチドライブの最大の需要はiPodに代表されるデジタルオーディオプレイヤーであり、性能は二の次で耐衝撃性とバッテリ駆動のための省エネルギー性が重視される。本来、プラッタが小さいことで、スピンドル回転数を上げやすいなど、性能面で有利な側面もあるのだが、製品としてのチューニングがそこに向かっていないのが実情だ。

 基本的にWindows Vistaは、この5年間のハードウェアの進化を踏まえて、それを生かす方向で作られている。しかし、モバイルノートの性能向上率は、おそらくVistaが想定したであろうデスクトップPCの性能向上率よりもはるかに低い。したがって、デスクトップPCで快適だとしても、モバイルノートにインストールすると、Windows Vistaは相当に辛くなる。そう考えると、今度のクリスマス商戦は、非力なモバイルノートでも快適に使えるWindows XP搭載モデルを購入する最後のチャンスかもしれない。

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