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» 2010年06月09日 19時20分 UPDATE

WWDC 2010現地リポート:「iPhone 4」が再びすべてを変えるのか (1/3)

WWDC 2010の基調講演で発表された「iPhone 4」は、“初代iPhone以来、最大の跳躍”と表現されるメジャーバージョンアップだ。動画と写真でファーストインプレッションをお届けする。

[林信行,ITmedia]

初代iPhone以来、最大の跳躍

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 初代iPhone発表されたのが2007年1月9日。それまでの携帯電話という概念を打ち崩したこの製品は、米国の一部メディアでは「電話というものを永遠に変えた電話」と呼ばれた。

 それから3年半後の2010年6月7日、アップルはWWDC 2010の会場で「iPhone 4」を発表した。新たに「iOS」と改名されたモバイル機器用OSの最新版とともに出荷されるこの新製品を、アップルは「初代iPhone以来、最大の跳躍」と呼んでいる。

 実際、WWDC会場で「iPhone 4」の発表を見ていた筆者は、この製品に、携帯電話業界だけでなく、携帯型ゲーム機やコンパクトデジタルカメラ、コンパクトムービー、電子書籍といったあらゆる市場を飲み込んでしまいそうな迫力を感じ、その一方で新しいライフスタイルが広がる可能性を感じた。今、3年半前から世界を巻き込んでいった熱狂の渦が、いま再びゼロから始まろうとしているのかもしれない。

細部までこだわった魅力と質感

og_iphone4_002.jpg WWDC 2010の基調講演でiPhone 4を紹介するスティーブ・ジョブズCEO

 今回の「iPhone 4」は、アップルにとっても、最も挑戦的な発表となったはずだ。というのも、開発中の製品が流出し、その写真が世界中のブログやIT系媒体にすでに掲載されていたからだ。しかし、今になってみると、あれはあれでよかったのかもしれない、と思っている。あの“事前情報”が出ていたおかげで、スティーブ・ジョブズCEOは、iPhone 4におけるデザイン以外の注目要素にたっぷりと時間をかけて紹介できたし、デザインについての話題も「色・形」といった表面的な話題ではなく、モノとしての質感や細部へのこだわりについて語っていた。

 例えば、流出写真で話題になった、本体に3カ所ある切れ目の部分。これは3つからなるステンレススチールの側面パーツのつなぎ目であるが、アップルはそのつなぎ目にわざとすき間をつくり、Bluetooth、Wi-Fi、GPSとUMTS(3G携帯電話網)とGSM用のアンテナ部分とした。剛性と耐久性、そして塗装しなくても高い質感を出せる金属パーツは、電波を通さない欠点がある。アップルは、電波の感度でも製品の見た目の美しさでも妥協しないために、これまで黒いプラスチックパーツを用意したり、背面のアップルロゴマーク部分をプラスチックにしたりとさまざまな工夫を凝らしてきた(こうした作業こそがデザインの真の姿だろう)。

og_iphone4_003.jpgog_iphone4_004.jpgog_iphone4_005.jpg 話題となった側面パーツのつなぎ目(写真=左/中央)。従来に比べさらに薄く、シャープなフォルムになった(写真=右)

 これまでのiPhoneも質感は高かったが、iPhone 4は、これまでのiPhoneをオモチャのように見せてしまう、さらに高い質感をまとっている。そのうちの手触り感の変化は、液晶面だけでなく、本体背面も覆うようになったガラスによる部分が大きい。ガラスと聞くと、「割れやすい」と思う人がいるが、実はiPhone 4で使われているのは「アルミノケイ酸ガラス」と呼ばれるヘリコプターや鉄道のフロントガラスにも使われている頑丈なもので、基調講演の最中もこのガラス素材を曲げたり、叩いたりしている様子がビデオで紹介された。

 もちろん、iPhone 4にはジョブズ氏ですら語りきれていない細部へのこだわりがまだたくさんある。例えば、白モデルと黒モデルでは、ドック端子やヘッドフォン端子の中にあるプラスチックパーツまで外装色に合わせている。そんなところを誰が見るのか、誰が気にするのか、という人もいるかもしれない。しかし、こうした細部まで手を抜かないこだわりこそが一流ブランド製品の“おもてなし”であり、本来は日本企業が最も得意としていたところのはずだ。

og_iphone4_006.jpgog_iphone4_007.jpgog_iphone4_008.jpg 白と黒のボディカラーにあわせて端子の中まで色を統一している(写真=左/中央)。本体背面を覆うガラス素材が高い質感を作り出している(写真=右)

コンテクストが形を生み出す

 さて、そんな細かいところまでこだわったiPhone 4ではあるが、今回は初のフルモデルチェンジである。すでに完璧主義を貫いて作り込まれたiPhoneが、いったいどうしたらこれ以上よくなるのだろうか。

 アップルは、その答えを自ら体現してみせた。

 その前に「アップルのデザインがなぜ完璧に見えるのか」を議論すべきかもしれない。同社の工業デザイン部門の副社長、ジョナサン・アイブ氏は、ドキュメンタリー映画「Objectified」の中で、「デザインとは、モノがどうしてそうなっているのか、あるいはどうして自分が思うようになっていないのかに対する答えであり、そういう意味では消費者も常にデザインのプロセスを行っている」と指摘している。そして、アップルのデザイナーが行っているのは、余計な「デザイン」を省き、まるでそうであることが最も自然に見えるシンプルな形を導き出すことだ、と語る。こうして一度は製品の本来あるべき姿に到達したこれまでのiPhoneが、いったいどうやったら新しく生まれ変わることができるのか――それにはやはり製品をゼロから考え直すしかない。

og_iphone4_009.jpg 新旧比較。中身の変化にあわせて外観も大きく変わった

 アップルは、iPhone 4でまさにそのプロセスをやってのけたのだと思う。初代iPhoneが登場したころと今では、携帯電話業界を取り囲むコンテクストも大きく変わって来た。かつてはPC並みの優れた性能と使い勝手でWebブラウジングやアプリケーションの利用ができるのはiPhoneくらいでほかの競合はいなかったが、最近では世界中が一気にスマートフォンの時代に突入し、iPhoneによく似た他社製品も増えてきた。

 その中で製品を際立たせるためには徹底して品質を追求していくしかない。そこで今回アップルは、画面の解像度やカメラの解像度、スピードといった品質を追求し、製品のモノとしての質感にも徹底的にこだわった。こうして出て来たのがA4プロセッサの採用であり、ステンレスメタルとガラスコーティングによる表面仕上げという答えだった。素材が変わり、製品の特徴が変われば、それに伴って製品の形状もおのずと変わってくる。

 カメラとしての性能を大幅に向上したiPhone 4は、(機能としてうたっているものではないが)4つのどの側面でも自立できるフラットな形状で作り直され、よりシャープなシルエットになった。

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