インタビュー
» 2010年09月30日 08時00分 UPDATE

「3倍スゴい」データ整理術:「ガンダム事典」はこうして作られた (1/3)

ガンダム生誕30周年を記念して刊行された「総解説ガンダム事典 Ver.1.5」の背景には、約10年の歳月とともに育まれた巨大なデータベースがあった。編者である皆河有伽さんに話を聞く。

[広田稔,ITmedia]
og_filemaker_001.jpg 『総解説ガンダム事典 Ver.1.5』、サンライズ(監修)/皆河 有伽(著)。1600円

 2009年、ガンダム生誕30周年を記念して、「総解説ガンダム事典 Ver.1.5」という書籍が講談社から刊行された。機動戦士ガンダムからVガンダムまでの作品をカバーし、サンライズ監修のもとで宇宙世紀の歴史、技術、MS・MA(モビルスーツ・モビルアーマー)について392ページというボリュームでまとめ尽くした1冊だ。

 特に注目すべきは後半のMS・MA図鑑で、例えば、リック・ドムの発展系である「ドワス」といったマニアックな機体まで紹介している(知ってました?)。ガンダムファンにとっては欠かせない資料だろう。

 ただ、ひと口に事典を作るといっても、ガンダムシリーズの作品には、そこから派生した小説や関連アイテムが数多く存在している。その膨大な資料を集めて、1つの本にまとめていくという作業には、恐ろしいほどの労力と時間がかかるはずだ。同じ出版業に身を置く人間として、どんな手法で資料を管理するのか興味津々だったが、たまたま人づてに聞いた話から、あるデータベースソフトを活用していることを知った。

 よい仕事の裏側には、必ず面白い何かが転がっているもの。一体、何のソフトを使って、どんなポリシーでデータを整理していったのか。「総解説ガンダム事典 Ver.1.5」の編者である皆河有伽さんの仕事場を直撃して、そのデータ整理術を直伝してもらった。

ガンダムづくしの10年で育ててきたデータベース

og_filemaker_002.jpg 皆河有伽さんの仕事場。所狭しと本棚が並べられ、ガンダム関連だけでなく、小説や評論を書くための資料が山のように収まっている

 「個人でいえば、おそらくガンダムの画像を最も多く持っている人間だと思います」(笑)

 そう自負する皆河有伽(旧ペンネームは「皆川ゆか」)さんは、もともと1987年に講談社ティーンズハート文庫でデビューした小説家だ。『ティー・パーティー』や『運命のタロット』といったシリーズもののライトノベルを執筆してきたが、ここ10年ほどはガンダム関連の著作に力を入れている。

 そもそもの話は90年代後半にさかのぼる。『機動戦士ガンダム外伝THE BLUE DESTINY』など、ガンダム関連のノベライズを担当した皆河さんは、1999年のガンダム生誕20周年にあわせて、機動戦士ガンダム公式百科事典『GUNDAM OFFICIALS』の編著を行うことになった。TVシリーズや劇場作品、オリジナルビデオシリーズだけではなく、関連書籍、ゲームや模型化の際の設定情報なども取り上げたため、この本はU.C.0079年の一年戦争からU.C.0083年までの事項を取り上げながらも、全896ページ、重さにして3.5キロというスケールとなってしまい、ガンダム誕生から22年後の2001年に完成することとなった。2007年によりハンディな宇宙世紀の入門書として『総解説ガンダム事典』を出版、これに200ページにわたるMS・MAの資料を足したものが冒頭で紹介した『同Ver.1.5』だ。

og_filemaker_003.jpg 約3年の年月を費やして世に送り出されたサンライズ公式の『GUNDAM OFFICIALS』、サンライズ(監修)/皆川 ゆか(著)。1万5000円

 事典以外では、2004年から発売された『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション』というフィルムコミックのシステム構築も引き受けている。2006年には、シャアの生き様と人生観をまとめた『評伝シャア・アズナブル』も出版した(当時の取材記事)。

 まさにガンダム本のエキスパートといえる皆河さんだが、これらの刊行物の資料をまとめるためにデータベースソフトを活用してきたという。

 「初めて自分用にガンダムのデータベースを構築したのは、「GUNDAM OFFICIALS」のときです。2001年ごろは、まだDTP入稿はフルデジタルになっていなくて、写真や画像類は別に印刷所に持っていっていたんです。QuarkXPressのファイルには“アタリ”(仮の画像)を配置していました。そのアタリを一括管理するために、QuarkXPressと連携できる『Base QX』を導入したんです」

og_filemaker_004.jpg 現在、使ってるドキュメントスキャナはゼロックスの「DocuCentre-II C2200」。通常は企業でリース導入するくらいの機器だが、「評伝シャア・アズナブルの印税で買っちゃいました」とのこと

 当時、オートシートフィーダ付きのスキャナを使い、サンライズの資料室から借りた画像をひたすらデジタル化して、Base QXに登録しまくったという。その数、なんと数千枚というから気が遠くなる話だ。ここでデータベース構築に目覚めた皆河さんは、次なる野望を抱く。

「ガンダムのすべてがまとまったデータベースが欲しいなと思ったんです。とにかく『アムロ』って打つとアムロの画像が全部出てきたり、登場するスペースコロニーをまとめて見たりできるような」

 そこで汎用データベースソフトである「FileMaker Pro」でデータベースを作り始めた。その際、膨大な画像をまとめるためにID番号を付けるという工夫を試した。

 「まず作品ごとにID番号を決めておくんです。『ポケ戦』(ガンダム0080 ポケットの中の戦争)だったら400番台といった具合に決めて、401がキャラクター、402が艦船、403がモビルスーツといったように分類していく。その数字のあとにさらに3ケタの連番を振って、同じカテゴリの画像をまとめています」

 スキャン前の紙にも同じ番号をスタンプしておくことで、あとでデータベースを検索した際、オリジナルをすぐに探せるのが便利なのだという。そうして取り込んだ画像を基に1件ずつ解説を入力していったというから、その根性には脱帽だ。このデータベースはガンダムWや∀ガンダムの作品まで更新を続けており、項目数も約8700にまで充実させた。

og_filemaker_005.jpgog_filemaker_006.jpg 現在も残っているFileMakerで作られたガンダムのデータベース。画面の「関連画像一覧」ボタンを押すと、Mac OS X付属の画像ビューワー「プレビュー」が起動して別画面で画像をチェックできる (C)創通・サンライズ

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