コラム
» 2011年01月21日 15時26分 UPDATE

林信行はどう見る?:過去最高益とジョブズ氏の不在――Appleのこれから (1/3)

米Appleのスティーブ・ジョブズCEOが病気療養に入る。このニュースにより2011年第1四半期(10〜12月期)で過去最高益を達成した同社の株価は一時下落した。ジョブズ氏不在の影響は?

[林信行,ITmedia]

過去最高益の中でジョブズCEOの休養を発表

og_apple_001.jpg 2010年6月のWWDC 2010で「iPhone 4」を披露するジョブズ氏

 米Appleが2011年第1四半期(10〜12月期)の決算を発表した。四半期ベースで過去最高の売上高、純利益となっている(関連記事:Apple、MacやiPhone、iPadが好調で過去最高の四半期業績)。

 Appleは、Mac、iPhone、iPadの販売台数がそれぞれ四半期として過去最高記録を達成したが、このことはすでにクリスマス商戦の好調な売れ行きから見えていたため、同社の株価は、時価総額で世界最大の石油会社であるエクソン・モービルにかなり迫るものと期待されていた。

 しかし、そこに突然、スティーブ・ジョブズCEOが病気療養に入るというニュースが飛び出し、実際の株価は6%ほど下落することとなった。ただし、決算発表のプレスリリースでは、ジョブズ氏自身が「Appleはエンジン全開で前に進んでいて、すでにいくつかのエキサイティングな製品を輸送管にのせている状態だ」と語っており、CEO不在でもAppleがこれまで通りの勢いを保てると強調している。

 ジョブズ氏の不在期間、その代理を務めるティム・クックCOOは「Appleにはすばらしい才能を持った多数の社員、スティーブ(ジョブズCEO)が先導する改革の文化がある。私はAppleの未来に大きな自信を持っている」と語っているが、そのクック自身も2004年と2009年の2度にわたって“ジョブズ不在”のAppleをうまく先導した。2009年には、そのことへの評価もあってか、ジョブズ氏が現場に復帰する2カ月前には、休養に入る前の株価を取り戻している。

 今回の休養についても、短期的な落ち込みはあったが、今後Appleがこれまでの勢いを落とすことなく魅力的な製品や戦略を発表できれば、ある程度株価も戻すのではないかと楽観視する向きが強い。実際、Ticonderogaの上級リサーチアナリスト、ブライアン・ホワイト氏も、ジョブズ休養の発表後も「買い」を勧めており、株式の目標価格を450ドルに設定している。同様にカウフマン・ブラザーズのショー・ウー氏も「買い」を勧めている。

 米Forbes誌のブログにも「Apple Is More Than Just Steve Jobs」(Appleにいるのはスティーブ・ジョブズだけではない)という記事を載せている。実際、時価総額で世界2位となっている現在のAppleは、今後ジョブズ氏の休養が長引き、その間に社員たちが間違いをし続けたとしても、そう簡単に失速できない勢いを築いてしまっている。

 以下では、その“止めることのできない勢い”を分析してみよう。

iPodは音楽デバイスからアプリデバイスへ

og_apple_002.jpg 新しいiPodファミリーのラインアップ

 今回の決算発表では、Appleが1四半期わずか3カ月の間で、iPadを733万台、iPhoneを1624万台、iPodを1945万台、そしてMacを413万台出荷したことを発表した。

 この中で、一番調子が悪いとみられているのは、おそらく唯一売り上げ記録を更新できなかったiPodだろう。実際、iPodの出荷台数は昨年比でも7%減となっている。

 ただし、この数字を注意深く見てみると、その奥にある“地殻変動”が見えてくる。

 実はすでに2年前から、iPodの主役は音楽再生機のiPod nanoではなく、AppStoreのアプリケーションが楽しめるiPod touchに移行しつつある。2009年から始まっていたその傾向が2010年ではさらに加速し、1年前との比較でもiPod touchの出荷台数の比率は27%伸び、ついにiPod全体の50%にまで達した。主役が高額商品にシフトしたことで、実はiPodによる売り上げは1昨年と比べるとわずかだが増えてさえいる(昨年は33億9100万ドル、今年は34億2500万ドル)。

 iPodが2001年に登場した時に、名前がなぜ「iMusic」や「iJukeBox」ではなく「iPod」(豆などのさや)なのかが議論になった。短くて言いやすい名前だから、というのはもちろんだが、それだけでなく、iPodが今後、音楽だけでなくいろいろなニーズに拡大していくだろうからと多くの人が予想した。

 結果は予想の通りだ。2001年に音楽再生以外の機能を一切持たずに登場したiPodが、その後はゲームや住所録、カレンダー、写真、動画再生など、次々と機能を追加し、使われ方も変化、成長していった。Appleにとっても消費者にとっても、音楽プレーヤーという商品は、もはや“盛りの過ぎた商品”の市場であって、スマートフォンを含めた携帯電話でもPDAでも音楽を聴けるのが当たり前という考えに変わっているのだろう。

 現在、Appleはどうしても音楽重視の製品が欲しい人には、余計な機能を省いて徹底的にコストを削減した新iPod nanoや新iPod shuffleを提供し、その一方で、それ以外の大半の消費者向けには、30万本のAppStoreのアプリケーションを、契約無しに手軽に楽しめるiPod touchに注力するように事業転換をしているのだ。

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