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» 2012年11月20日 09時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:ちょっと待て! いや待つな! 保護シートの初回ロットがややこしい (1/2)

売り手的にも買い手的にも、同時発売同時購入が常識のiPhoneやiPadの保護シート。しかし、初回ロットの出来が“的外れ”ということが“少なからず”ある……。

[牧ノブユキ,ITmedia]

本体とセット購入が定石の保護シートであるが

 iPhoneやiPadに関わるビジネスを展開している事業者にとって、アップルの製品発売は、まさに戦争の始まりを告げる。アプリであれば、解像度の変更に合わせて画面のレイアウトを修正する必要に迫られ、新製品でアプリが動かなくなったら、その原因を特定するためにソースコードを最初からチェックしなくてはいけない。新製品の発売に合わせてOSがバージョンアップすることも多く、その場合、既存製品のユーザーも影響を受けることになるので、迅速な対応が必要になることは言うまでもない。

 一方、周辺機器やアクセサリの事業者も、「本体の厚みが増したのでケースを作り直さなくてはいけない」「ボタンの位置がずれたので穴の位置を変更しなくてはいけない」「画面サイズが大きくなったので保護フィルムの新しい抜き型を作らなければいけない」など、新製品の発売に合わせて膨大な作業が発生する。Lightningコネクタのように、規格ごと変わってしまい、その仕様が公開されていないとなると、これまた面倒なことになる。

 「OSのバージョンアップで即時対応を強いられるアプリ事業者も大変だが、アクセサリなどは発売日に間に合わなくてもいいのでは?」と考えは甘い。というのも、本体の発売に間に合わなければ、競合メーカーの参入を許し、販売店の定番から追い出されてしまうのが、アクセサリ業界の常だからだ。

 特に、デザインや色で差別化できない保護シートのような製品は、ほかの製品に換えるのが容易なだけに、販売店が売りたいと思ったタイミング、すなわち発売日にモノがあるかどうかで(売り上げも販売店の評価も)すべてが決まる。保護シートのメーカーにとって、新製品に合わせた保護シートを本体の発売日に間に合わせることができるか否かが、販売店で最も好条件の売り場を確保できるか(往々にして、それはメーカーが生き残れるか否かの分かれ目になる)を決定づける。裏を返せば、いまの販売店の店頭シェアは、そうした生き残り合戦が繰り返された結果だということになる。

そういう無理をさせるから、初回ロットの品質が……

 こうした「納期優先」の状況下では、通常とは異なる“製品づくり”が求められる。パッケージのデザインが適当だとか、キャッチコピーの日本語が文法的に間違っているとか、そんなチェックと修正も後回しになる。とにかく指定の納期までに、必要な数量を生産するのが第一優先で、それ以外の問題は二の次になる。

 これはパッケージだけではなく、製品そのものに影響する問題にも及ぶ。カットした保護シートで端の処理が甘いとか、型抜きしたはずが完全に分離していないとか、サイズが本体と微妙に違っているとか、通常であれば検品で弾かれるような低い品質であっても、そのまま通してしまう。というよりも、全数検品をする余裕がない。B級品が大量に出たとして、再生産する時間などないからだ。とにかく販売店が要求する数を生産して出荷し、店頭に並べてもらう。不良品が出たらそのときはそのとき、というのがメーカーにおける暗黙の了解だ。

 このように、特に保護シートに関しては、初回のロットだけは品質が低いということはよくありうる。発売直後に買ったユーザーが「あれはダメだよ」と非難した保護シートが、いざ買ってみたらなんともなかった、となるわけだ。上記のようなメーカーの対応を知っていれば、初回ロットで判断できないことが分かるが、こうした事実はあまり知られていないだけに、そのメーカーの製品や、その型番がすべて同じ傾向だと信じてしまうのは、製品に詳しい業界関係者でも意外と多い。

 発売直後の嵐のような状況が落ち着いて、通常在庫で回していけるようになれば、その時点でようやくB級品は淘汰され、微妙に違っていたサイズは修正されて正常な品質になる。最初のうちに買ったユーザーが同じメーカーの同じ製品を買うことは普通ありえず、初回ロットと次のロットで比較することもないので、こうした事実はまず露見しない。口コミレビューでは評価が二分されていたりしても、それぞれの“個人的な感想”として、無視するのが口コミレビュー利用者だ。

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