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» 2014年01月20日 15時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「残念仕様」はこうして隠される――PC周辺機器コストカットの手口 (1/2)

露骨にスペックダウンした製品をわざわざ選ぶ人はいない。それゆえPC周辺機器メーカーは、気づかれずにコストを下げるよう苦心する。そうした手口の数々を紹介しよう。

[牧ノブユキ,ITmedia]

 長引く不況、激化する競争などもあり、コストダウンを要求されているのはどの業界も変わらない。メーカーであれば、製品の原価を下げることは、売れ行きを増やすことと同じくらい重要な命題とみなされているフシがある。売れ行きが伸びる兆候がなければ、そちらに矛先が向くのは、ごく自然なことと言ってよいだろう。

 もっともPC周辺機器に限って言えば、食品や化粧品、生活用品などと違って1年、2年といったスパンで使われるうえ、単価も高いことから、消費者も仕様を見ただけであからさまに低スペックと分かる製品は試そうともしない。それゆえメーカーは、見た目にはスペックが変わらないよう見せつつ、コストを下げるよう苦心することになる。こうした工夫が1番たけている業界といっても過言ではないだろう。

 したがって、製品を購入する消費者の側も、より一層の慎重さ、製品を見抜く目が要求される。今回は、こうした見る目を養うべく、PC周辺機器メーカー側の手口の数々を見ていくことにしよう。

その1:設計段階で原価を下げる場合

 原価を下げるといっても、これから新規に設計する段階であれば、コストダウンは比較的容易だ。もちろん、それらをすでに織り込んで原価を算出しているのであれば、新たな策を探して右往左往することになるわけだが、すでに設計が完了している場合と比べれば取れる手段は数多い。

 まずは基本中の基本、「部品点数を減らす」「金型を単純にする」などの方法。前者は要するに構造を簡略化したり、複数のパーツを1つにまとめることを指す。例えばこれまでネジで4カ所を固定していたのを差し込むだけに改める(それでも外れないような構造にする)ことで、部品点数は単純計算で4つ減る。こうした積み重ねで部品点数を減らし、部品のコストを浮かせるわけである。

 金型の見直しも、コストダウンの有効な施策だ。金型は1つの部品を作るだけで数十万円はくだらないので、生産数が少ない製品であれば露骨にコストに響く。過去の製品で寿命の切れていない金型があり、それを流用すれば原価はぐんと下がる。ファブレスメーカーであれば、金型を安く作れる業者を探すというのも、コストダウンの施策である。

 外部から部品を購入するにあたっては、「安価な部品を採用する」というのが大原則だ。一昔前の撮像素子であればCCDよりもCMOS、フラッシュメモリであればSLCよりMLCやTLCといった具合である(最近は高性能なCMOSやMLCもあるが、ここでは話を単純化するために触れない)。前者は機器全体の設計に関わるので思いつきで変更できるものではないが、後者であれば単にストレージということもあり、設計が進んだ段階で差し替えることも容易だ。

 もっとも、これら撮像素子やメモリなどは製品仕様の一部として公表されることも多いうえ、たとえ公表されなくとも購入後にテストをすれば明らかになるので、過去製品と比較するとスペックダウンであることがすぐにバレてしまう。それゆえ、どちらかというと仕様表には現れない部分でコストダウンを図ることが多い。

 例えばスイッチに関してはマイクロスイッチ(マウスなどで“カチッ”と音がするタイプ)より安価なタクトスイッチ(“カコッ”と音がするタイプ)を使ったり、付属のケーブルで外皮が分厚く取り回しが悪いぶん安価な製品を添付するといった、機能的にはまったく見劣りしないが、感触や反応レベルでの質を下げるという方法がよく用いられる。

 これに近い考え方として、「出来合いの部材を使うことを前提に設計する」という方法もある。つまり極端に安価に仕入れられる部材が先に存在し、そこから逆算して製品を設計するという方法だ。かつての7型ワイド液晶ディスプレイ搭載Netbookが、カーナビ向けの安価な液晶パネルを流用して作られていたのが代表的な例である。

 ただしこの場合、部材ありきで設計されるため、仮にその部材が性能面で足を引っ張ることになっても、容易に変更できないのがネックだ。これが液晶パネルではなくACアダプタなどであれば、本体に内蔵されているわけではなく、部品として独立しているため、別の部材に切り替えるのも容易となる。

 ボディに目を向けると、金属やガラス素材ではなく樹脂系の素材を使うことでコストを下げるというのも有効な方法だが、これらは仕様には書かれていなくとも過去製品と比較すれば違いが一目瞭然なので、同じデザインのまま素材を変えると露骨にコストダウンだと分かってしまう。それゆえ、デザインの変更と同時に行うのが恒例のパターンだ。

 このほかファブレスメーカーであれば、「筐体やパッケージをOEM元のままとする」「自社で設計せずに金型ごと買う」などもコストダウンの施策としてはよくある。また「デバイスドライバは添付ではなくダウンロード方式」「説明書は紙ではなくPDFのみ」というのも、最近は当たり前になってはいるが、ここ10年ほどはコストダウンの施策としてあちこちでもてはやされた。

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