このMaxwellアーキテクチャ初のGPUとなる「GeForce GTX 750 Ti」で採用した“GM107”は、Maxwell SM(同社はSMMと呼ぶ)5基でGPC(Graphics Processing Cluster)を構成し、640基のCUDAコアを統合。Keplerアーキテクチャを採用したGeForce GTX 650で採用した“GK107”の384基よりも66%多いCUDAコアを統合し、2次キャッシュメモリも2048Kバイト(GK107は256Kバイト)に増やしながらも、ダイサイズは148平方ミリと、GK107の118平方ミリから25%増という、コンパクトなサイズを実現した。
ウォーカー氏は、このGM107で採用した製造プロセス技術は、GK107とまったく同じTSMCの28ナノメートルプロセスであるとしており、トランジスタ数はGK107の13億に対し、GM107では18億7000万個と40%強増えていることから、半導体物理設計の最適化により、ダイサイズを小さく収めていることが見て取れる。
GM107では、128ビットメモリインタフェースを採用し、2次キャッシュとROP(Raster Operation Processor:ラスタプロセシングユニット)に接続される構成は、これまでのGeForceアーキテクチャから変更されていない。
ただし、ウォーカー氏は「メモリコントローラには手が加えられ、従来よりも優れたパフォーマンスを発揮できるようになったほか、2Mバイト(2048Kバイト)の2次キャッシュを搭載したことで、グラフィックスメモリへのアクセスを最小限にすることが可能になり、高性能化と省電力性を両立させるのに役立っている」と説明する。これにより、「GeForce GTX 750 Tiでは、1080pのゲームプレイであれば4年前のフラッグシップGPUであるGeForce GTX 480に近いパフォーマンスを実現しつつ、その消費電力は60ワットに抑えるできた」(ウォーカー氏)とアピールする。
GPUコア比較 | ||
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型番 | GeForce GTX 750Ti | GeForce GTX 650 |
GPUコア | GM107 | GK107 |
プロセス技術 | TSMC 28nm | TSMC 28nm |
トランジスタ数 | 18億7000万 | 13億 |
ダイサイズ | 148平方mm | 118平方mm |
CUDAコア | 640 | 384 |
GPC | 1 | 1 |
SMM/SMX | 5 | 2 |
テクスチャユニット | 40 | 32 |
L2キャッシュ | 2048KB | 256KB |
ROP | 16 | 16 |
メモリインタフェース | 128bit(64bit×2) | 128bit(64bit×2) |
GPU Boost | ○ | × |
このほか、GM107ではハードウェアビデオ機能のNVENCにデコーダキャッシュを統合するなどの改良が施され、Kepler世代と比べて、4倍のエンコード性能、8〜10倍のデコード性能を発揮できるようになったという。さらに、Maxwellでは新たに“GC5”と呼ぶスリープモードが追加され、NVENCのみを使ってビデオ再生を行ない、GPU部はより低い電力でスリープ状態におくことができるようになる。
同社は、このGeForce GTX 750Tiを、miniITXゲーミングPCや、既存の廉価版PCのアップグレードに最適なソリューションと位置づける。
ウォーカー氏は「miniITXケースで広く用いられるSFX電源ユニットは300ワット以下の製品が大半であり、消費電力の大きなグラフィックスカードは利用できない」とし、TDP 60ワットを実現したGeForce GTX 750 Tiの優位性をアピール。廉価版PCのアップグレードにも最適なソリューションだと位置づける。また、同社はこのGeForce GTX 750 Tiに加え、その下位モデルとして、SMM 4基構成で512 CUDAコアを搭載するGeForce GTX 750をラインアップしており、競合となるAMDのRadeon R7 260シリーズと比べても、パフォーマンス、省電力性両面で優位に立っていると主張する。
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