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» 2014年03月19日 16時45分 UPDATE

SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第1回):意外と知らない「UPS」の基礎知識――もしもの停電から大事なデータを守るため (1/2)

本連載では「無停電電源装置(UPS)」の基礎知識から、機器に合った製品をチョイスするための計算方法まで、順序立てて解説していく。第1回はUPSの用途と、つなぐべき機器、つないではいけない機器を紹介しよう。

[山口真弘,ITmedia]

存在感を増しているUPS

tm_1403_ups1_01.jpg 不意の電源障害に対応するため、SOHOや中小企業でもUPSの導入を検討したい。写真はシュナイダーエレクトリックの中小企業向けUPSである「APC RS 550」

 仕事中にまさかの停電……、あなたの職場は大事なデータを守れるだろうか?

 停電をはじめとした電源障害が発生した場合、PCなどに電力を供給することで、業務を継続したり、あるいは安全にシャットダウンするための時間を稼いでくれるのが、「UPS(Uninterruptible Power Supply)」だ。日本語では「無停電電源装置」と呼ぶ。

 これがないと、予期せぬ電源障害時に業務が停止してしまううえ、PCやストレージ、ネットワーク機器の故障、さらには重要なデータの損失など、さまざまなトラブルを招くことになり、ビジネスに深刻な打撃を与えかねない。

 UPSは大事なデータを扱い、業務を止めることが許されない法人において必須の機器であると同時に、最近では価格の低下もあり、大容量HDDに常時録画を行っているユーザーやオンラインゲームのプレイヤー、またオンライントレードを行う個人の導入例も増えるなど、身近な存在になりつつある。東日本大震災の直後に行われた計画停電によって需要が急増し、売り切れが相次いだことも記憶に新しい。

 そんなUPSだが、ほかのIT機器と違って正常に動作しているかどうかが普段の挙動から判断しにくいため、すでに導入済みのユーザーの中にも、正しく使えているか自信がない人も多いはず。また給電方式などの選び方がいまいち分からず、興味はあるが導入に至っていない人も少なくないだろう。

 本連載では、UPSの用途や接続すべき機器といった基本的な知識とともに、機器に合ったUPSをチョイスするための計算方法まで、順序立てて解説していく。今回は第1回ということで、UPSの基礎知識について紹介する。

UPSの用途とは?

tm_1403_ups1_02.jpg APC RS 550の背面。PCや周辺機器を接続するコンセントや回線サージ保護のLANポートなどが並ぶ

 「UPSとは何ぞや?」と問われた際、ノートPCにおけるバッテリーのようなものだと考える人は多いのではないだろうか。つまり、PCや周辺機器を接続しておくことで、停電時でも気にせず、何時間にも渡って業務が平常通り続けられるという位置付けだ。

 これは半分正解で、半分は間違っている。もちろん大容量のUPSをチョイスしたり、拡張バッテリーを追加すればそれは不可能ではなく、実際にそのような用途で導入している企業もあるが、オフィスで使用しているすべての機器に、何時間にも渡って電力を供給するとなると、かかるコストが膨大になる。

 むしろ中小企業/SOHOでの利用においては「停電時に機器を安全にシャットダウンする時間を稼ぐ装置」と考えたほうがよい。UPSによって電力が供給されている間に使用しているファイルを閉じ、機器を安全にシャットダウンすることを目的にしたほうが、現実的というわけだ。これならば、5〜10分程度持たせるだけで済むので、コスト的にも有利というわけだ。

 停電と並んでUPSが生きてくるのが、足を引っ掛けてコンセントが抜けてしまうといった人為的なトラブルだ。OA対応でなく配線が露出しているフロアや、やたらとタップで口を増設していて足元に差込口があるような環境では、こうしたトラブルが発生しやすい。そもそも機器の側からみると、停電もこうした人為的トラブルもそれほど大きな違いはないわけで、ニーズとしては高い。たまたまブレーカーが落ちたといった事故についても同様だ。

 このほか「瞬停」と呼ばれる、瞬間的な停電への対策にもなる。瞬停は、日常で意識することはほとんどないが、電力会社による送電ルートの切り替えなどによって年に数回といったペースで発生しており、タイミングが悪いとメモリのデータを消失したり、通信が切断されるなどの障害の原因になりうる。これらの予防にもUPSは役に立つ。

 電力の供給がストップした際の備えとして扱われることが多いUPSだが、それとは逆、つまり過電圧への対策としても有効だ。代表的なのは雷によって発生するサージで、バックアップ用の口とは別に、サージ保護専用の口を持っている製品もある。

 また、電力消費が高い機器が付近に存在しているなどの理由で電圧が影響を受けやすい場合、UPSを導入することで電圧を一定の範囲内に保ち、故障を回避できるようになる。本稿で主に取り扱う「常時商用給電方式」よりもワンランク上にあたる「ラインインタラクティブ方式」の製品で対応する。

どんな機器を優先的につなぐべきか

 次に、具体的にどんな機器をつなぐべきかを見ていこう。理想的なのは「コンセントにつながっている身の回りのすべての電子機器」ということになるが、UPSの容量から言ってもそれは現実的でなく、また機器の特性によってはUPSへの接続が推奨されない場合もある。まずはPCまわりの機器に限定し、優先順位をつけよう。

 UPSで保護する優先順位が最も高いのはストレージ系の機器、つまりPCや外付けHDD、およびNASだろう。いきなり電源が断たれることで記憶領域の損傷を受ける可能性が高く、企業にとっては取り返しのつかない事故を招く危険があるからだ。ハードウェアの価格帯を考慮しても、保護する優先順位は高くならざるを得ない。

tm_1403_ups1_03.jpgtm_1403_nas4_01.jpg UPSに接続する優先順位が高い機器の例。デスクトップPCは通常、画面を表示するディスプレイもつないでおく(写真=左/エプソンダイレクト「Endeavor AY330S」)。もちろんクライアントPCだけでなく、データを保存しているNASの優先順位も高い(写真=右/バッファロー「TeraStation TS5400D」シリーズ)

 ただしノートPCについては、UPSに接続する必要性は高くない。デスクトップPCと違ってバッテリーを搭載しており、そちらが充電されていれば停電時も駆動できるからだ。もちろん停電が長時間に渡るなら接続しなくてはいけないケースも出てくるが、ひとまず除外して考える方向でよいだろう。機器を安全にシャットダウンさせることが目的でUPSを導入するなら、ノートPCは完全に対象外となる。

 意外と見落としやすいのがLANのハブ、およびルータだ。仮にNAS上のデータをPCで読み書きしている場合、ハブもUPSにつないでおかなければ、たとえPCとNASが動作していても、ネットワークの経路が遮断されてデータの保存ができなくなってしまう。ハブそのものはストレージ系の製品に比べると突然の停電で壊れる可能性は低いが、ネットワーク越しでデータをやりとりしている場合は、UPSに接続する対象に含めるべきだ。

 またルータについても重要度は高い。停電時には外部ネットワークに接続しなかったとしても、DHCPで社内のIPアドレスを管理しているのであれば、止めてしまうわけにはいかない。ルータの先にNASを接続しているようなケースではなおさらだ。ハブもルータも、消費電力としてはそれほど高くないので、UPSへの接続で大きな問題はないだろう。ただし、コンセントの口を専有することと、PCから離れて置かれることが多いため、配線をどうするか考慮する必要がある。

 ファイルを保存してPCをシャットダウンさせるためには、ディスプレイにも電源を供給する必要がある。停電中も業務を継続させるのならば、なおさらだ。しかし、ソフトウェアで自動シャットダウンの仕組みが構築されている場合は、対象から外しても問題はない。またネットワークが生きていれば、ノートPCなどからリモートでログインして操作するといった代替手段もあるので、優先順位は高いわけではない。

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