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» 2014年05月27日 11時00分 UPDATE

鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8.1 Update」:Internet Explorer 11の新機能にみる「Windows 2020年問題」とは? (1/3)

MicrosoftはWindows 8.1 Updateで、IE11にIE8互換の動作モード「エンタープライズモード」を追加した。そこにはブラウザの互換性問題への対応と、最新OSへの移行促進という意図が込められている。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 Windows 8.1 Updateで追加された新機能の1つに、「Internet Explorer(IE) 11における“エンタープライズモード”の追加」がある。これはIE11に「IE8互換の動作モード」を追加することで、古いバージョンのIEのみに対応した企業のWebアプリケーション等を円滑に動作させ、最新システムへの将来的な移行を手助けすることが狙いだ。

 (集計方法にもよるが)IE8は2014年5月現在においてもデスクトップ向けWebブラウザで20%超と最大シェアを誇っており、いまだ利用者が多いことが分かる。今回は、この辺りの背景を整理することで、Microsoftの資産であると同時に、過去に蓄積された不良債権ともいえる「互換性問題」について、同社が2020年に向けてどのようなロードマップを描いているのかをまとめてみた。

Windowsの2020年問題とは?

 「2020年問題」をキーワードにWeb検索を行うと、同年開催予定の東京オリンピックにまつわるインフラ問題や雇用問題、さらには住宅問題と、およそさまざまな問題が同年に結びつけられて提起されている。だが「Windowsの2020年問題」とは、よりシンプルな話で、「Windows 7の延長サポートが切れる年」のことを意味する。なぜ「Windows 7のサポート切れ」がそこまで深刻なのかといえば、その原因の1つは「IEの対応バージョン」にあると考えられる。

 下記はWindows OSとそれがサポートするIE各バージョンの対応をまとめた図だ。Windows XPのデフォルトブラウザはIE6だが、バージョンアップにより最高でIE8まで引き上げられる。Windows VistaではIE9が最高となる。Windows 7ではIE8がデフォルトだが、現在リリースされているIE11まではバージョンアップが可能だ。Windows 8のデフォルトはIE10だが、Windows 8.1へのバージョンアップとともにIEのバージョンも11へと引き上げられる。

tm_1405win81up3_01.jpg Windows OSと各OSが対応するIEバージョンの関係

 ここから分かるのは、IE8がWindows XPからWindows 7への橋渡し的な位置付けにある一方で、デフォルトブラウザがIE10またはIE11となっているWindows 8/8.1ではIE8が利用できないため、実質的に「IE8」または「IE10/11」の主に2つの勢力に分かれてIEユーザーが存在していることだ。

データで見る「IE8」

 IE8について、もう少しだけ深く掘り下げていく。IE8がデビューしたのは2009年3月で、この年の夏にはWindows 7が発売されており、IE8はそのデフォルトブラウザとなった。

 IE8の特徴の1つは、これまでIEが批判の対象となってきたW3C等のWeb標準との非互換問題について、より互換性を高めることを開発目標の1つに掲げた点にある。従来のIEではバージョンに強く依存した仕様が含まれており、Webサイト開発者はIE上できちんと意図通りのレンダリングが再現されるよう独自実装や検証が要求されていた。

 この問題で特にやり玉に挙がっていたのが「IE6」で、開発者らがIE6を糾弾するサイトを開設していたほか、Microsoft自らがIE6を撲滅すべくキャンペーンサイトを立ち上げて啓蒙活動を行っていたほどだ。なお、このサイトは「Internet Explorer - IE 6 Countdown」の名称で、現在も生き残っている。そもそもIE6のデビューがWindows XPの発売された2001年であり、実に13年前の技術というわけなのだが……。

 IE8は「業界標準への対応」「過去の資産の継承」という2つの課題に同時に対応するため、「IE8標準モード」「互換モード」という2つの動作モードを用意するという苦肉の策を採用している。これにより、IEとしては初の「Acid2」に完全パスしたブラウザとなった。Acid2はW3C勧告にHTMLやCSSのレンダリングが沿っているかを計測するブラウザ向けのテストで、IE8が登場した2008〜2009年当時には「ブラウザのWeb標準対応度」を図るものとしてよく用いられていた。

 一方で互換モードの利用により、過去のIE6やIE7といったブラウザ向けに記述されたWebサイトの利用も可能だった。IE8ユーザーは好きな閲覧モードを選択可能なほか、サイト管理者がWebページにメタタグを埋め込むことで明示的にブラウザの閲覧モードを指定することも可能だ。Windows XPがサポートする最後のIEバージョンということもあり、ちょうど分岐点的な役割にIE8は存在するといえる。

 Net Applicationsの「Net Market Share」の最新データによれば、現在のデスクトップブラウザにおけるIE8のシェアは20.85%でトップ。それにIE11やFirefox 28が続く。Net Market Shareは比較的IEのシェアが高く出る傾向があり、Chromeが圧倒的なシェアを持つStatCounterのデータとよく比較されることが多いが、前者が全ユーザーの平均的な数字、後者がWebトラフィックに比重がかかった数字(つまりヘビーユーザー比率が高いほどシェアが高くなる)だとされる(ZDNet 参考記事)。

 つまり世界的に見て、いまだ利用比率が高いIE8だが、その原因はやはり「Windows XPのIE最終バージョン」「過去資産の互換性対応」という点にあると考えられる。XPユーザーであればIE8を利用している確率が高く、Vistaや7ユーザーであれば互換性のためにIE8を維持するといった具合だ。

 逆にIE9やIE10のシェアがIE11よりも低いのは、Windows 8/8.1以降のユーザーであればIE11を利用しており、Windows 7ユーザーであっても互換性を意識しなければIE11までバージョンアップしてしまう可能性が高いからだろう。Vistaは相対的にユーザー数が少なく、ゆえにIE9でとどまっているユーザーはVistaならびに7ユーザーの一部なのだと考えられる。

tm_1405win81up3_02.jpg 2014年5月におけるデスクトップブラウザのバージョン別シェア(出典:Net Applications)
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