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» 2014年12月18日 17時54分 UPDATE

DirectX 12は脅威なのか:大解説! Mantleは死なず、ただ進化するのみ (1/2)

「Mantle」はAMDが独自に整備したグラフィックスAPIで2014年において最も訴求していた技術の1つだ。DirextX 12の登場でその存在意義はどう変わるのか?

[本間文,ITmedia]

AMDはあきらめていない

 AMDの独自グラフィックスAPIとして登場した「Mantle」では、そのパフォーマンスの高さに注目するゲームユーザーも多い。しかし、MicrosoftがMantleと同様のローレベルAPI化を果たす「DirectX 12」を発表してからは、ゲーム開発者などで「Mantleの役割は終わった」という意見も多くなっている。しかし、AMDは、Mantleをさらに進化させていく計画を持っている。

 Mantleの最初の目標は、グラフィックス処理のボトルネックとなっていた、DirectXやOpenGLなどのAPIに対するドローコール(描画呼び出し命令処理)のオーバーヘッドを取り除くことにあった。

 このため、AMDはMantleにおいて、APIドライバのソフトウェア階層を薄くし、よりハードウェアに近いレベルでグラフィックス処理を実行できるようにした。これにより、Mantle対応アプリケーションでは、大幅なパフォーマンス向上を果たすとともに、より複雑な描画処理を実装しやすくなる。

kn_dkstmantle_01.jpg Mantleの概要。Mantle対応アプリケーションは、よりGPUに近い階層で実行できるようになる

 ただし、このドローコールのオーバーヘッド解消は、CPU側のボトルネックを解消する。Mantleの効果が、ハイエンドCPUよりも、メインストリームCPUとの組み合わせで、より大きなパフォーマンス向上を実現するのも、グラフィックス処理におけるCPU側の負荷を軽減し、GPUの性能をそのまま引き出しやすくなるからだ。

 Mantleと同じローレベルAPIへのアプローチは、MicrosoftのDirectX 12、AppleのMetal、そして、次期OpenGLでも採用する。AMDは、Mantleの技術をMicrosoftやOpenGLに提供していることを示唆しており、これらの技術を独占する意向はない。

kn_dkstmantle_02.jpg ローレベルのグラフィックスAPIの流れはMantleが作ったとAMDはアピールする。また、MicrosoftのDirectX 12への技術供与も行なっている

 このMantle計画の中心的存在でもあり、このAPIの発表にあわせてAMDに復帰したCorporate Vice President, Visual and Perceptual Computingのラジャ・クドリ氏は、2013年9月のMantle計画表明でも「オープンスタンダードを掲げるAMDにあって、Mantleも例外ではない」と、語っている。DirectX 12への技術提供なども、その言葉通りになったとみていい。

Mantleの活路はどこにある?

 AMDのMantle計画は、このまま終息を迎えるのであろうか? その答はNoだ。AMDがMantleで目指してるのは、次の2点だ。

1. 最新グラフィックス技術におけるソフトウェア実装の加速

2. 複数のプラットフォームにまたがったソフトウェア開発の実現



 まず、最新グラフィックス技術におけるソフトウェア実装の加速だが、これは、DirectXやOpenGLの進化を待たずとも、新しいグラフィックス技術を容易に実装できるようにするものだ。むろん、ゲームエンジンが独自に最新技術をサポートする場合もあるが、MantleというAPIレベルで常に最新のグラフィックス機能をサポートしていけば、より多くのソフトウェアで最新技術を実装しやすくなる。

 クドリ氏は「DirectXは、まだ、比較的進化のサイクルが短いので問題とならないが、OpenGLは業界全体のコンセンサスをまとめるのに時間がかかり、最新技術の実装が遅い。こうした部分に、Mantleを活用できれば、グラフィックスソフトウェアの進化を促すことができるのではないか」と、ゲームタイトル以外にもMantleを活用する意向を示している。

 AMDでチーフ・ゲーム・サイエンティストとして、ゲーム・デベロッパとの協業やMantleの普及を進めるリチャード・ハディー氏も、Mantleの次のステップとして「詳細は明かせないが、ワークステーションOSのサポートのための準備を進めている」としている。非ゲームジャンルにおいても、Mantle対応が実現する日も遠くなさそうだ。

 一方、複数のプラットフォームにまたがったソフトウェア開発の実現とは、まさに、AMDが得意とするXbox OneやPlayStation 4といったゲーム専用機とPCゲームの開発環境の共用化を推し進めんとするものだ。

 国産Mantle対応ゲームエンジンの開発を表明したカプコンも、マルチプラットフォームゲーム開発のベースとして期待を寄せている。AMDは、すでにMantleベースのゲーム開発を支援するMantle SDK(ソフトウェア開発キット)の提供を開始しており、ハディ氏によれば「その供給先は2014年に100社を超えるだろう」と、さらに拡大傾向を見せている。

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