ついにボタン型コンピュータ「Curie」が登場――2015年のIntelは何を目指すのか「ムーアの法則」50周年でここまで来た(1/3 ページ)

» 2015年01月08日 18時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 ウェアラブルや3DインタフェースにかけるIntelの情熱は本物かもしれない――というのが2015年を迎えての最初の感想だ。

 米Intelのブライアン・クルザニッチCEOは1月6日(米国時間)、米ネバダ州ラスベガスで開催されている2015 International CESの基調講演に登壇し、同社の最新技術を発表した。昨年2014年のIDFでもフィーチャーされていたIoT(Internet of Things :モノのインターネット)や3Dインタフェース、無線技術が引き続き主要なトピックとなり、現在同社が特に力を入れている部分が改めてクローズアップされた。

ボタン大の小型コンピュータ「Curie」が登場

 昨年2014年のCESで、やはりクルザニッチ氏により大々的に発表されたSDメモリーカード大の組み込み向けコンピュータプラットフォーム「Edison(エジソン)」。若干のリファインの後に市場へと正式投入され、「Make it Wearable」という同社主催の製品開発コンテストが実施されたことでも話題となった。

SDメモリーカードサイズの組み込み開発プラットフォーム「Edison」を手に持つ米Intelのブライアン・クルザニッチCEO。ここまでは発表済みの内容だが……

 今回は、それをさらに小型化した洋服のボタン大となる新しいプラットフォーム「Curie(キュリー)」が発表され、ウェアラブルデバイスをはじめ、小型組み込み機器にIntelの技術を浸透させることを目指す同社の姿が印象に残った。

 Curieは32ビットプロセッサ「Quark SE SoC」をベースにしたx86によるプログラミングに対応し、本体には384Kバイトのフラッシュメモリ、80KバイトのSRAM、Bluetooth LEの通信機能、6軸センサー、バッテリー充電回路などを備える。名前の由来はもちろん放射線研究で知られる「キュリー夫人」であり、Galileo(ガリレオ)、Edisonに続く組み込みプラットフォームにおける偉人シリーズの第3弾だ。

 世代を経るごとにプラットフォームの小型化と簡素化が進んでおり、それだけIntelが幅広いデバイスでの活用を望んでいることが分かる。なお、Curieの市場投入は今年後半を見込んでいる。

今回発表したのは、Edisonよりさらに小型化されたボタンサイズ大の開発プラットフォーム「Curie」だ。ついにコンピュータの小型化はここまで来た
Curieはコートのボタンほどのサイズに、32ビットプロセッサのQuark SE SoC、384Kバイトのフラッシュメモリ、80KバイトのSRAM、Bluetooth LEの通信機能、6軸センサー、バッテリー充電回路などを搭載している
実際に自らCurieを身に付けていたクルザニッチ氏が、同デバイスで取得した歩数をスマートフォン上のアプリで確認したところ

 昨年のIDFでは「MICA」というスマートブレスレットのウェアラブル機器が紹介されたが、今回も製品開発やブランディングでは複数のファッションブランドとの提携を重視しており、Barneys New York、SMS Audio、CFDA、Opening Ceremony、Fossil、Luxotticaといった名前が挙げられたほか、Luxottica Groupの1つであるOakleyからはコリン・バーデンCEOが登場し、グラスウェア分野での技術開発を共同で行っていくことを表明した。

 Intelに限らず、これらファッションブランドはIT系企業との提携でスマートデバイス市場への積極的な進出を図っており、今後もこの動きは加速するだろう。

昨年から引き続き、Barneys New York、SMS Audio、CFDA、Opening Ceremony、Fossil、Luxotticaといったファッションブランドとの提携により、ウェアラブル製品の開発や製品展開で引き続きコラボレーションを進めていく
CESのステージにはグラスウェア製品で知られるOakleyのコリン・バーデンCEOが登場し、今後の製品開発とプロモーションにおける戦略提携を発表。両社の技術とブランドを組み合わせたグラスウェア製品を今年後半にも投入するという

「RealSense」が人間の視覚をフォロー、ウェアラブルなドローンも

 壇上ではこのほか、「RealSense」とウェアラブル技術を組み合わせた医療用途向けのセンサーデバイスに関する取り組みのほか、前述した「Make it Wearable」のコンテストで優秀者となった「Nixie」のフライングカメラ(ウェアラブルドローン)製品などが紹介された。

 ある意味で、このウェアラブル技術の世界は可能性を無限に秘めており、さまざまな提携や市場振興策を通じて技術拡大を図っているのが現在のIntelの姿なのかもしれない。

ウェアラブル技術はファッションやフィットネスだけでなく、医療分野での活用も期待できるというデモ。「RealSense」技術を用いて周囲の状況を認識し、それを視覚以外の物理的なフィードバックで装着者に教えるスーツ型の装置となる
実際に視覚に制限を抱える米Intelの技術製品マネージャのダリル・アダムス氏が登場し、そのメリットを説明する
米IntelがEdisionを発表した際に実施した「Make it Wearable」コンテストで優秀者となった「Nixie」のウェアラブル製品を紹介する同社のクリストフ・コースタール氏とジェレナ・ジョバノビッチ氏
Nixieとはウェアラブルのカメラ付きドローン(無人飛行機)だ。普段は腕時計やブレスレットのように腕に装着しておき、これを外して前方に投げると内蔵のプロペラで飛行し、写真撮影を行って手元に自動でブーメランのように戻ってくる
壇上には、実際にNixieで撮影したクリザニッチ氏を含む3人の最新ショットが映し出された
クリザニッチ氏の講演がスタートする前、ステージ上ではImagine Dragonsの「Radioactive(放射線)」の歌をバックにRealSenseと映像を組み合わせたパフォーマンスが実施されていた。深い意味はないのかもしれないが、ここで発表された(放射線の研究で知られる)「Curie」と何らかの関係があるのかもしれない(なお、Imagine DragonsはCESが開催されている米ラスベガス出身のロックバンド)
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