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» 2015年03月20日 11時30分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「再発防止に努めます」が製品をダメにする? (1/2)

発売した製品について、何らかのクレームに直面すると、担当者は「再発防止に努めます」と言わざるを得ない。しかしクレームの程度を考慮せずに再発防止に務めることで、業務フローにかかる負担は増え、そしていずれ製品開発へ影響を及ぼす事態へとつながっていく。

[牧ノブユキ,ITmedia]

事故やクレームの対応は大事だが……

 業務上の何らかの事故やクレームが発生し、社内でなんとか火消しが終わった後で担当者が必ず報告書に記すのが「再発防止に努めます」というフレーズだ。現場の担当者としては、事故ないしはクレームの責任を取るために、こう言わざるを得ないのは当然だ。

 また、担当者からの報告を受ける側にとっても、監督責任を問われる以上、再発しうる状態で放置するわけにはいかないので、こうしたフレーズとともに、具体的な対策を引き出さなくてはいけない。報告書のテンプレートの中に、こうした対策を記すための欄があらかじめ用意されている場合も少なくないだろう。

 もちろん、人命に関わるような事故やクレームにおいては、これはまったく正しい対応である。しかし事故やクレームの規模があまりにも小さい場合、わざわざ全社的な再発防止策を講じるよりも、対処療法で応じたほうが、トータルでのコストがかからない可能性もある。たった1人のユーザーからのほんのちょっとしたクレームを再度起こさないために、全社を巻き込むような大規模な業務フローの変更を行っていては、どれだけリソースがあっても足りなくなってしまう。

 しかし現実的には、こうした全体のコストやリソースが考慮されることはあまりない。とにかく再発防止のフローを整えることが、より「会社的」であり、業務改善の一環として評価されやすいからだ。何より立案している側は大真面目であり、また効果もあるわけで、その改善案がきちんと手順を経て上がってきたものであれば、よりよい対案でも出さない限り、拒否しにくいという事情もある。

 だが、現場の業務フローの改善でとどまるならまだしも、こうした「再発防止策」が、製品やサービスの開発工程にまで及ぶと、話は少々厄介になってくる。今回はこの問題について見て行きたい。

「再発防止」の名のもとにコストを無視

 会社にお勤めの方であれば、現在の業務フローの中で、すでに習慣化しているのであまり気にとどめないが、何の役に立っているのか実はよく分かっていないルールの1つや2つは、身近にあるのではないだろうか。

 特にアナログな業務フローが残っている会社であれば、例えば「稟議書を提出する前には必ずコピーをとること」「ファイリングの前には必ず連番を付与すること」など、代々受け継がれているアナログ作業は少なからずあるはずだ。余談だが、こうした「○○する前には必ず○○すること」というフレーズに当てはまる作業は、要注意と言える。

 こうした業務フローは、万一の際に書類の追跡をしやすくするために導入されたのであろうことは、容易に想像がつく。おそらくこうしたコピーや連番管理によって、トラブルが早期に解決できたこともあっただろう。

 しかしそのトラブルがめったに起こらない類のものであれば、書類を提出する度にいちいちアナログな処理を強いるよりも、トラブルが起こったときだけ時間をかけて処理したほうが、トータルでの業務コストは削減できる可能性はある。

 最近は業務フローのデジタル化により、こうした手間は幸いにして減少の方向に向かいつつあるわけだが、少し厄介なのは、これが社内の業務フローの枠を超えて、製品やサービスにまで反映された場合だ。

 例えば、製品が販売店に納入された際にパッケージがつぶれているというクレームが寄せられたとして、その頻度が他の製品に比べて極端に高かったり、あるいは購入者のケガなどにつながりかねない場合は別として、例えば配送業者の扱いの悪さが原因で、発生頻度もごくまれという場合は、その度に単品の交換で対応したほうが、コストはかからずに済む。

 ところが、こうしたコストを考慮せず、材質変更によって全製品のパッケージの強度を上げるという対策を講じると、確かに再発は防止できるかもしれないが、そのコストは製品の原価に跳ね返ってくる。そしてこうした対策をとった時点で、将来的に渡って引っ込めるのは困難になってしまう。なぜなら「クレームがあって再発防止のためにこのような仕様になった」という事実が存在していると、元に戻すにはそれを上回る理由が必要になるからだ。

 結果として、コストを下げたくても下げられない、原価表の中に不可侵領域ができあがるというわけである。

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