「ムーアの法則」50年の進化を車のエンジンに例えると?過去を振り返らないインテルだけど、これだけは別(1/2 ページ)

» 2015年04月21日 18時23分 公開
[長浜和也ITmedia]

最高時速130キロのエンジンが5分で地球1周

 インテルは、ムーアの法則提唱50周年を記念した説明会を4月21日に行った。「インテルは過去を振り返らない会社」(インテル 阿部氏 談)らしいが、ムーアの法則だけは特別で、インテル取締役 兼 副社長執行役員技術開発・製造技術本部本部長 博士の阿部剛士氏が、ムーアの法則がインテルのみならず、現在の技術革新にどのような影響を与えたのかを紹介した。

 阿部氏は、インテルが“社是”として重視するミッションステートメントの冒頭に、2014年秋から「ムーアの法則がもたらすパワーを活用し」と加えるほどに、ムーアの法則を根本的な指針と考えていることを紹介した上で、この法則は技術的なロードマップというだけでなく、経済的な指標と社会的な影響といった3つの領域において重要な役割を果たしていると述べた。

インテルの“社是”は、冒頭にムーアの法則を掲げている

ムーアは集積回路を構成する半導体数の増加ペースに関する考察を1965年に記している。この論文が出た当時、研究者はムーアの提唱した考えを“ムーアの所見”と呼んでいた。これが後に“ムーアの法則”になる

 経済領域においては、コストの削減として影響している。ムーアが1965年に記した論文では、有名な「集積回路を構成する半導体の数が1年で約2倍の比率で増大」に加えて、コスト削減についても言及しているが、阿部氏は、1971年にインテルが初めて開発したCPU「4004」と2015年に登場した第5世代Coreプロセッサー・ファミリー(Core i5ファミリー)を比較し、処理能力は3500倍に、電力効率は9万倍に、単価は6万分の1になったことを挙げた上で、CPUの相対的な進化を同年代に登場した自動車のエンジンに置き換え、最高速度が1971年当時のエンジンでは時速130キロだったのが、2015年には時速48万2700キロに、燃費が11キロ/リットルが85万369キロ/リットルに、そして、エンジン価格は2500ドルが0.04ドルと示した。

「2015年エンジンは5分で地球を一周し、ガソリンを1リットル入れたら買い替えまで給油しなくて済み、エンジンの価格は5円になった」(阿部氏)

1971年に登場した4004と2015年に登場した第5世代Coreプロセッサー・ファミリーを比較する(写真=左)。さらに、その違いを車のエンジンに置き換えてみた(写真=右)

 ムーアが1965年に発表した論文では、集積度の向上やコスト削減のほかに、PCの社会的な役割についても将来を予見していたという。それによると、すでに、家庭用PCの登場だけなく、自動車の自動制御、個人用携帯通信機器、そして、ディスプレイだけの電子腕時計の存在まで示唆していたことを阿部氏は紹介している。

ムーアは1965年の文章で、家庭用PCの普及だけでなく、ハンディモバイルデバイスやスマートウォッチの登場も予見していた

 書いた本人が「少なくともあと10年間は」といっていたムーアの法則は、10年間どころか50年間過ぎても生き続けている。その間、プロセスルールは14ナノメートルまで微細化し、トランジスタ単価も消費電力も削減を続けているだけでなく、14ナノメートルプロセスルールでは、それまでのペースを超える削減を果たした。プロセスルールの微細化とコストの削減を自動車や有人月探査プロジェクト(アポロ計画)に置き換えると、車のサイズはアリと同じくなり、一回当たりの有人月探査は小型のプロペラ自家用機に等しくなる。

ムーアの法則が示すペースに沿って、プロセスルールの微細化に伴いコストも消費電力も減少している

 阿部氏は今後の展開について、500億台のデバイスがインターネットに接続する時代になると“新しいことができるようになる”期待を示し、その1つの例として、人のDNAを分析して、その人に最適化した薬を用意できる“カスタム処方”を紹介した。「人を構成する細胞や30丁とも60兆ともいう。人が1つのビッグデータだ」(阿部氏)

 “ムーアの法則”の継続では、困難な局面においても「ひずみシリコン」「Hi-K メタルゲート」「3Dトランジスタ」など新しい技術が登場したことを挙げ、今後も10ナノメートルを下回る“Beyond 10 nano”プロセスルールの開発を進めていくとした。

新技術の登場によってプロセスルールの微細化とムーアの法則の“順守”し続けることができた。14ナノメートルまで進んだ微細化は、今後も“Beyond 10 nano”を目指して開発を進めていく

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