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2万円で買える“極小サイズ”のWindowsパソコン「Picoretta」基本編

» 2015年06月05日 00時00分 公開
[ITmedia]

USBメモリ? いいえパソコンです

 マウスコンピューターの「m-Stick」を皮切りに、超小型ボディのWindows PC、いわゆるスティック型PCがメーカー各社から相次いで登場し、注目を集めている。

 ざっと挙げるだけでも、前述のm-Stick初代モデル「MS-NH1」とファン搭載モデル「MS-PS01F」、インテルから「Compute Stick」、ユニットコムの「Picoretta」、サードウェーブデジノスの「Diginnos Stick」、エプソンダイレクトの「Endeavor SY01」と選択肢は幅広い。

パソコン工房から販売されているスティック型PC「Picoretta」。これ自体がWindows 8.1 with Bing搭載PCでありながら、税込み・送料込みで1万9800円という手軽さが特徴

 一方、選択肢は広いものの、基本仕様はほぼ横並びの状態だ。手のひらに収まるコンパクトなボディにHDMI出力を備え、テレビに差せばそのままWindows 8.1搭載パソコンとして利用できるという手軽さはもちろん、Atom Z3735F(1.33GHz/最大1.83GHz)や2Gバイトメモリ、32GバイトeMMCと、カタログスペックを見ただけではほとんど見分けがつかない。また、一部の製品はボディそのものが共通化されている。実売価格も税込みで2万円前後がほとんだ。

 とはいえ、すべてが同じかと言われると、それぞれ異なる部分は当然ある。大きな違いで言えば、まずは冷却ファンの有無。また、USBポートが1つ多いなどインタフェース回りで優位性をうたう製品も存在する。

PicorettaでCPU-ZとGPU-Zを実行した画面。4コア/4スレッドで動作するBay Trail-T世代のAtom Z3735F(1.33GHz/1.83GHz)を搭載する。多くのスティック型PCの共通スペックといえる。グラフィックス機能はCPUに統合されているHD Graphicsを利用する

 PC USERの読者であれば「スティック型PC」と聞いて「ああ、あれね」と思い浮かべる人は多いかもしれないが、ガジェットにそれほどなじみがなく、家電量販店で最近よく見かけるスティック型PCってなんだろう、と思っている方もいるだろう。

 今回はユニットコムから登場した「Picoretta」を実際に使って、スティック型PCの基本的な特徴や活用方法を複数回に渡って見ていこう。

性能はどれくらい? ファンは搭載していたほうがいい?

 スティック型PCを一言で説明するなら、「HDMI端子を持つディスプレイに挿して利用できるWindowsパソコン」だ。

 リビングにあるテレビでも、会社のディスプレイでも、ネットカフェの設備でも、店頭用サイネージでもなんでも、HDMI入力を持っている画面表示デバイスを手軽にPCにできるという意味では機能的な違いはない。どのモデルも無線LANとBluetoothを内蔵しており、インターネットもそのまま利用できる。

キャップを外すとHDMI出力端子が露出する。左側面に給電用のMicro USBと、フルサイズのUSBポート、電源ボタンが並ぶ。右側面にmicro SDスロットを装備。ストレージ容量の拡張にも利用できる

 数あるスティック型PCで、差別化のポイントになっているのは、前述した冷却ファンの有無だろう。いくらTDPの低いAtomを採用しているとはいえ、小型ボディの課題として発熱は無視できない。実際、ファンレス設計の初代m-Stickでは、長時間使用しているとパフォーマンスが十分に発揮できない現象が見られた。

 それならば、冷却ファンを搭載しているほうがいいのか、と問われれば、これも一長一短だ。排熱設計で余裕ができる一方、本体のサイズや重量は増加する傾向にあるうえ、ファンノイズや耐久性の面でデメリットがある。特にこの手の製品が主にリビングのテレビに接続して利用するもの、と考えればなおさらだ。

 例えば、テレビの裏にスティック型PCを挿して利用する分には、ファンを搭載していようが静音性はそれほど気にする必要はないかもしれない。だが、ホコリの多い環境で使えばファンの寿命はそれだけ短くなるし、そもそも可動部分があるというだけで故障の確率はファンレスモデルよりも高くなるだろう。

 この点、今回の短期連載で取り上げるPicorettaは、ファンレスでありながら、大型の銅製ヒートシンクを使うことにより発熱問題に対処しているのが特徴だ。ボディはマウスコンピューターのファン搭載モデル「MS-PS01F」とほぼ共通でやや大柄、かつヒートシンクの重量で小型スティックPCの中では重い部類に入るものの、連続稼働時の安定したパフォーマンスや耐久性の高さで優位性がある。

製品名 Picoretta m-Stick MS-NH1 m-Stick MS-PS01F Diginnos Stick DG-STK1 Endeavor SY01
冷却ファン なし なし あり なし あり
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) 38×125×14ミリ 38×100×9.8ミリ 37.6×125×14ミリ 37.6×109×14ミリ 38×113×14ミリ
本体重量 約70グラム 約44グラム 約61グラム 約55グラム 約60グラム

 実際にベンチマークテストで性能を確かめたところ、CINEBENCH R11.5のCPUスコアは0.91(pt)と初代m-Stick MS-NH1に比べわずかに上回る結果でDiginnos Stickとほぼ同等、PCMark 7の結果も同様の傾向だった。

 Atom Z3735Fは低価格Windowsタブレットでも採用例が多いCPUだ。このベンチマークの結果を見るとスロットリングなども発生しておらず、同クラスのタブレットがこなせることはPicorettaでもカバーできるとみていい。

 なお、製品コンセプトとは方向性が異なるが、試しにグラフィックス性能を測る3DMarkを実行したところ、Ice Stormでは12659というスコアだったものの、比較的負荷の軽いCloud Gateでさえ、1000を超える程度のスコアにとどまった。スティック型PC全般にいえることだが、ゲームを楽しむには荷が重いだろう。

CINEBENCH R11.5の結果

他のファンレスモデルとの比較

PCMark 7の結果

他のファンレスモデルとの比較

3DMarkの結果

CrystalDiskMark 3.0.3と同4.0.3の結果。最新SSDに比べると速度で劣るとはいえ、2.5インチHDDを搭載するノートPCのユーザーならむしろ快適に感じるはずだ

 以上のように、文字通り“手のひらサイズ”を実現したスティック型PCは、低価格Windowsタブレットとほぼ同等の性能を持ちつつ、液晶ディスプレイとバッテリーをあえて搭載しないことで、どこにでも持ち運べる携帯性や、すでに所有しているテレビなどと連携できる手軽さを備えた製品だ。

 それでは実際にどう使うと便利なのか。次回以降は一般的な用途やちょっと変わった使い方を見ていこう。

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