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» 2015年08月03日 06時00分 UPDATE

本田雅一のクロスオーバーデジタル:「Windows 10」はAppleと真逆のアプローチで勝負を挑む (1/3)

「Windows 10」はXP以降で最も納得感あるメジャーアップデートになった。PC向けOSとしてのWindows 10はうまくいくだろう。しかし、パーソナルコンピューティングの中心は、もはやPCにはない。

[本田雅一,ITmedia]

動作の軽さが体感できる「Windows 10」

 2015年7月29日に「Windows 10」がリリースされ、一斉に注目が集まっている。長期間のプレビュー版(Windows 10 Insider Preview)での検証を経ているだけに、機能や改善点などの情報は既に行き渡っているものの、リリース直近になって変更されたポイントも少なくない。

Windows 10 いよいよ一般公開となった「Windows 10」

 インストール時の注意点や機能詳細、Windows 7/8/8.1からの改善点などについては他の記事を参照していただきたいが、リリース版を使いはじめての「最初の印象」は、動作の軽さではないだろうか。

 もともと、Windowsはミッションクリティカルな利用シーンでの信頼性やセキュリティから、一般消費者が求めるエンターテインメント性まで、あるいは別の評価軸では大規模なデータセンターから小型軽量のタブレットまで(Windows 10ではスマートフォンまで)、幅広い場面で使われており、幾つかの製品に分けられているとはいえ、かなり複雑で適応性の広い設計になっている。

 これはWindowsの長所でもあるが、一方で短所あるいは弱点ともいえる部分だった。しかし、Windows 7から取り組みはじめ、Windowsに必要とされるバックグラウンド動作のサービスやOSの核となる部分などの改善が進められ、リリースを重ねるごとにチューニングが進んできた印象がある。

 ハードウェア側の性能向上も理由の1つではあるが、Atom x7を搭載する「Surface 3」でのWindows 10の動作などを見る限り、Windows 7/8/8.1と徐々に軽くなってきた動作が、さらによくなっているように感じられる。

 もちろん、Windowsの改善でコンピュータハードウェアの性能そのものが大きく向上するわけではないが、応答性がよく体感的に高速なiPadをはじめとするタブレット端末のような感触になってきたのが大きい。かつて「処理容量は大きいが、体感速度で劣る」Windowsだったものが、この数年の改良とスマートフォン用OSの統合を受けて、Windows 10でいよいよ体験レベルを上げてきたといえばいいだろうか。

 ユーザーインタフェースが劇的によくなったことも大きなトピックだが、やはり動作の「軽さ」は、新しいWindowsを使ってみようと消費者に思わせるモチベーションとなる。そして、この部分こそがMicrosoftにとって、戦略的にも重要なのだ。

Windows 10 Atom x7搭載タブレット「Surface 3」でのWindows 10の動作は軽い

“OSを支配すること”で広がる可能性

 OS……すなわち、コンピュータが動作する基本ソフトの稼働シェアを大きく高めると、その上で何か新しい機能、アプリケーションを展開する際に大きな優位性を持てる。大昔ならば、単純に「OSが普及していれば、その上で動作するソフトも市場が大きいため、たくさん開発してもらえる」という優位性でしかなかった。

 確かにそれだけでも大きな利点だが、ネットワークでコンピュータがつながる時代になると、より緊密にネットワークで連携が取れるようになる。もちろん、ネットワーク技術は標準化されているから、どんなOSを搭載していてもインターネット関連技術のもとに相互に通信はできる。

 しかし、そこから一歩踏み込んで「ユーザー体験を演出していこう」となると、業界標準の手順に対してプラスαの整合性が求められる。Microsoftは、あまり強引にその支配力をユーザー体験方向で発揮させてこなかった。ただ、インターネットのトレンドをPCが作り出している時代において、PC用OSで支配的な立場にいたMicrosoftは、PC業界のトレンドを(リードしているとは言い難かったものの)コントロールすることができた。これは今でも変わらない。

 ところが、「パーソナルコンピューティング」の定義が、スマートフォンによって変化してしまった。これまで使われてきたPC(パーソナルコンピュータ)が担っていた役割は、スマートフォン(あるいはタブレット)が務めるようになっている。

 総務省の通信利用動向調査によると、2011年末から2013年末にかけて主にスマートフォンでインターネットを利用する人が急伸。50歳未満の5割以上が、スマートフォンを使ってインターネットサービスを利用している。とりわけ10代は18%から64%、20代は45%から83%までスマートフォンの利用率が上昇した。

 一方で「主要なインターネット端末(複数回答)」として自宅PCを選んでいる人は、63%から60%への微減で、スマートフォンを主要端末としている人(42%)に比べて優位にも見えるが、しかし1年半前のデータであることを考えれば、ほぼ拮抗(きっこう)していると言っていいだろう。

 さらに30歳未満のスマートフォン普及率の高さや、毎日、肌身離さず持ち歩く道具となっていることを考え合わせると、若年層が考える「インターネットサービスを利用する端末」からPC(≒Windows)が視野の隅に追いやられていると考えられる。PCというカテゴリに対するマインドシェアは、世代によって大きく違う。

 しかし、「だからPCは衰退するのだ。商品カテゴリとして忘れ去られるのだ」という論旨を展開するつもりはない。グローバルの数字を見ている限り、スマートフォンの普及を受けての市場縮小は、主にデジタル家電分野で発生しており、PCへの影響は小さくないものの、グローバルではやや落ち着きを見せているからだ。

 とはいえ、視点を変えて「同じ基本ソフト(OS)のコンピュータがネットワークで結び付く」ことの利点を考えたとき、Microsoftの優位性は失われつつある。Windows 10はWindows XP以降のアップデートで、最も納得感のあるメジャーアップデートになった。PC向けOSとしてのWindows 10はうまくいくだろう。

 しかし、パーソナルコンピューティングの中心は、もはやPCにはない。

Windows 10 7月29日にリリースされたのは、PC向けの「Windows 10 Home」と「Windows 10 Pro」だ。PC向けOSとしてのWindows 10はうまくいくだろうが、問題はPC以外の市場にある
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